酔いどれたちの肴②
太陽が地平線へと消え夕の3時を過ぎた頃、男たちの腹はうめき声をあげていた。
彼らは農夫である。いつもなら自分たちの妻や母親が作った貧しくも温かい飯を食らっている時間帯。
年に一度納税のために王都に来て観光も楽しむ彼らにとって、宿での一泊は一大イベントだ。
去年運よくこの権利をもらった男たちは、娼婦館にたどり着いて相当良い思いをしたらしい。
後は地獄だったようだが(主に財布と人間関係的に)。
「飯はまだかのー?」
そう一人がもらせば、他の二人もそうだそうだと賛同する。
「あのねーちゃん呼んでみるべ?」
「あの犬族のおっぱいねーちゃんか……おっぱい」
「お主、そればかりじゃの……」
「仕方なーな。ダミアンも年頃……過ぎとったの」
先ほどからプチの胸ばかり気にしている男は、他の二人と違って独り者である。
村長の甥であるにもかかわらず、30過ぎても彼女一人できない。
「ルイーシャにしとけばよかったのに」
「……あんな年増はいらん」
ルイーシャは22を少し過ぎた女だったが、村の中では器量がよかった。
小さな宿屋で働いていたおかげで炊事洗濯はできるし、字も読めた。
1年ほど前に村にきた道具屋の若旦那に見初められ、今では王都の第三地区で女将をやっている。
彼女の母親の手紙を届けるために立ち寄れば、嫁いだ先は道具屋どころか老舗の大棚。所謂玉の輿状態だった。
日に焼けていた肌に白粉をはたき、頬と唇にうっすらと紅をさしたルイーシャは村にいたときよりずっときれいになっていた。
それを年増という男は、腹はでっぷり、顔も悪い。性格もダメ。
自分をじっくり見直してもらいたいものである。
カッカッカッカッ
「ご飯でーすよー」
ノッカーの音とプチの声が響いた。




