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①
ガンっ!
カラカラカラ…。
金属製の器が派手な音をたてて落ちる。
中身の卵液が土間を汚し、その上に青年が倒れこんだ。
青年の頬はぬれていた。
殴られた痛みにか、誇りを傷つけられた怒りにか――否、信じていた友に裏切られたから。
「なんで――なんでお前が」
「ばーか。騙されるお前が悪いっての」
そう悪吐いた男は、いつもは青年に悪戯っぽく笑いかけていた顔を醜悪な嗤いにかえていた。
その後ろではかつての同僚たちが、あるものは指さし、あるものは腹を抱えて、青年を嘲笑する。
「――サン、これでおれらも――」
「その話はあとでな」
そして、青年に終わりを告げる。
「ユージ、お前はクビだ」