記憶のかけら
初めて投稿した作品です。温かい目で見てやってください。
小学校低学年のころ、夕食におにぎりとお味噌汁というシンプルな献立が続いた。最初のころはおにぎりの具も鮭やたらこや昆布。お味噌汁もお豆腐やジャガイモやたまねぎやちゃんとした中身があった。
けれど何日か続いていく中、おにぎりが梅干だけに、お味噌汁がねぎだけになった。梅干は好きだったのでよかったがお味噌汁がねぎのみはいやだと文句を言うと母はだしをとるためにいれてあるいりこを立派な尾頭付きだと言い放った。
梅干おにぎりを晴れの日にだけ使う大皿に盛り、ねぎだけのお汁を塗り椀によそう。そして庭に縁台を置いてそこで家族で並んでいただく。
今から思うと染物職人だった父の収入は不安定だったのだろう。お米と味噌は母の故郷から送ってもらっていたようだった。梅干も自家製だった。母は自分も働きながら家計を遣り繰りしていた。(私は幼稚園から鍵っ子だ。)それでも行き詰ったときの「おにぎり」と「お味噌汁」だけの夕食。
質素だったけれどどんなごちそうよりも鮮明に憶えている味。
母となった今 自分の子どもたちにこんな風に記憶に残る食事を提供できているのだろうかと思うと少し不安になる。日々精進しよう。
山内詠さまのおうちでごはん企画に参加させていただきました。