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5ー1.

(困ったな。そろそろカロリーを意識した方が良いかな)

 大きめのパーカーにショートパンツというラフな服装で、フィリアはキッチンの冷蔵庫と睨めっこしていた。

 急な仕事が入った父はいないし、夕飯も作っていない。一体何を恐れているのか、「1人の時は料理をしようとするな」とも言われている。

 はあ、と大きなため息が出てしまった。

 今日は散々だ。スタートから眠いし、喧嘩は始まるし、戦闘服(スーツ)は小さくなるし、胸囲に合ったサイズが無いからと言われ、急遽オーダーの手続きが必要になったし…。そしてお腹は空いているのに、すぐに食べられるものが無い。

「外食行こうかな」

 夕食なら国が負担してくれる。必ず自炊する必要はこの国には無い。衣食住は国が保障してくれる。

(間食も保障してくれたらなあ)

 外出の準備をしていると、個人端末に連絡が入った。

「イングリズ?」





「ごめん、こんな時間に呼び出しちゃって」

 いつもの制服ではない私服のイングリズが、先に食堂に来ていたフィリアの座るテーブルにやって来た。後ろからモイラもやって来る。モイラは少し緊張した顔をしていた。

「良いよ。ご飯食べに行こうと思ってたから。ごめん、食べてて良い?」

 トレーに乗った温かいスープパスタの香りにそそられ、フィリアの空腹はもう限界だった。了解をもらい、フォークで麺を掬う。魚介の旨みが絡んで、空腹とささくれたフィリアの気持ちを満たした。

「美味しい…で、どうしたの?」

 フーフーと息で冷ましながら理由を聞く。

「あのね…あ、来た」

 イングリズが入り口を見ると、来るタイミングが同じだったのか、まだお互いに気まずそうなシオラとニーヴが入って来た。

「え、何?何かあったの?」

 何の会?と、何も知らないフィリアはフォークを持ちながら焦る。

「明日からも訓練あるのに、雰囲気悪いとこれからのために良くないから、ちゃんと謝っとこうって」

 イングリズに促され、ニーヴはバツが悪そうにフィリアに「ごめん」と伝えた。

「大丈夫だよ。ニーヴ、ありがとう」

「ごめんね、フィリ…そんなつもりじゃなかったの、本当に…」

 肩を震わせながら泣くニーヴの頭をモイラが撫でて慰めた。シオラもニーヴに怒鳴ったことを謝罪する。

 絶対、今麺をすすってはいけない状況だ。

「さて、解決したところで」

 良い笑顔のイングリズが両手をパチンと叩いて空気を変える。

「私じゃなくて、モイラからのお願いなんだけど…」

 話を振られ、最初は逡巡するように目を伏せたモイラは意を決するようにフィリア見た。

「フィリ、あのね…!」





 モイラは最近焦っていた。座学は今のところ学年でトップを維持しているが、実技の、特に狙撃が大の苦手だった。いつもは必死に合格点ギリギリを出しているが、今日の実技の授業で100体中98体撃破という好成績を出してしまった。狙撃手が実技トップのフィリアで、管制システムでサポートしていた自分たち、操縦の2人、みんなの頑張りの結果だったが、明日の狙撃担当はモイラだった。もしボロボロの点数を採ってしまったら…考えただけで息ができなくなりそうだった。

「で、ダミーの数を弄れ…と」

「そう」

 それが解決になるかなあ?とフィリアは声をかけようとしたが、モイラの目は本気だった。

「出て来るダミーの数を多くして、合格点とかの設定はそのまま?さすがにバレないかな?」

「大丈夫。大体3割くらいしか当たらない自信があるから」

 どんな自信かな?フィリアはそれ以上考えるのをやめた。

「うーん…システム弄るのはできないわけじゃ無いと思う…見てみないと」

「じゃあ行きましょう、今すぐ!!」

 先程から、いつも優等生のモイラの様子がおかしい。

「モイラ、何か変なもの食べた?」





 夜時間。コロニー内の人口光が暗くなり、街灯が辺りを照らしている。モイラは少し興奮気味で、他3人は楽しそうだった。理由は「肝試しみたいで、ちょっと楽しいね」だそう。この時間に学校に忍び込むなど、完全に規則違反だ。けど、学校のシステムを覗き、出し抜けたとしたら?フィリアも少し好奇心に火が付いている。

 門を飛び越え、通りからは影になっている場所を探す。すごいスリルだ。少女達は注意を払いつつも、クスクス笑いを抑えることができない。

 遊びの延長だった。

 フィリアはイングリズの持って来ていたタブレットで学校のセキュリティに侵入した。4〜5分ほどかかったが、ここまではかなりザルなセキュリティだ。

「フィリ、プログラミング得意だよね」

「そうなのかな?“そういうの得意な人”が近くにいるから、教えてくれるんだ」

(上級生になったら設定権限できるから、あえてこのレベルなのかな、ここまでは)

 もっと深く、深く、戦闘訓練用のプログラミングにまで潜る。目を大きくギラギラさせ、食い入るように画面を覗き、このコードを書き換えて…

「どう?」

 ドキドキを孕んだニーヴの声が意識の遠くで聞こえる。

「うける。チョロいね…」

 でき…た、


「お前達、そこで何をしている!!」





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