表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/22

9.

 

 水が船内に満ちた頃、フィリアは実習用戦闘機を出て海中を漂っている人間の位置まで泳いだ。実習機から離れてはいたが、泳げない連邦人などいない。そこまで泳ぐのに、さほど時間は掛からなかった。白く長い布を着た人間は、見た所少し痩せていて布から見える指も細いが、同じ年頃の少年のように見えた。目は閉じていて、体に力も入っていない。このままだと暗い海の底へ沈んでしまいそうだ。

 フィリアは少年を抱えて練習機まで戻った。


(身体、海の水と同じくらい冷たい…)


 どんな状態なのかわからないが、生体反応があったということは、まだ生きている。フィリアはそれを信じて急いだ。


 船内に回収後、ハッチを閉め海水を抜く。

 息ができるようになったが、船内は沈黙したままだった。

 今は少女達がどんな目をしているのか、怖くて見られない。

「……発進します」

 方向を変え、前進する。直前でまたアラートが鳴った。今度は緊急性の高い音だ。

「え、今度は何!?」

「操縦席急いで!この海域から離れて!!」

 管制席に座っているニーヴが叫ぶ。

「“アエリュシオンの(いかずち)”が来る!!」

「何それ!?」

 フィリアは知らない言葉に素っ頓狂な声を上げた。

「空のアエリュシオンの兵器!フィリ、これは流石に座学の勉強もしようね!」

 名前から何となくどこの国のものかはわかる。それ以外の情報が欲しい。けれどアラートが鳴っている以上、今はこの海域をすぐに離れなければいけない。

「急発進します!」

 推進装置が聞いた事のない音を出し、回収されただけで固定も何もされずにその辺に転がされた漂流者の少年は、機体の後方に体をぶつけていた。何も反応がないところを見ると、まだ意識は戻っていないようだ。少女達もベルトで体を固定しいるが、後方に持って行かれそうになっているのを耐えている。

「ねえ、ところでこれ、逃げてるのはわかるけど、どこ向かってるの!?」

 耐えながらイングリズはフィリアに問う。一生懸命入力しながら、フィリアは気まずそうに答えた。

「出力高すぎて制御できてない。とりあえず離れてはいるけど、海面向かってるみたい…」

「そんな!海上は許可申請制…!!」


 ザバッ!!!

 波のような大きな音を立て、少女達の体が宙に浮き、勢いよく叩きつけたれた。


 どうやら海上に出てしまったらしい。


 カタカタと船内にモイラの入力音が鳴る。

「だめ…うんともすんとも言わない。実習機、壊れちゃった…」

「ハッチは?開く?」

 イングリズが確認しに行くと、手動操作はできるようだった。

「こういう時、どうするんだっけ?」

「確かマニュアルでは、救難信号発して、船外待機だよ海上なら酸素あるから、装置いらないね」

 管制オペレーターのニーヴとモイラが話し合っている。

 フィリアの隣では、シオラが日光で目を痛めないよう、ゴーグルを調節していた。


「ごめん、みんな。私のせいで…!!」

 居た堪れなかった。できればこの場から消えたかった。無理をしなければ、こんな事にはならなかった。

「いや、もう良いよー。せっかくだから外出よう?(いかずち)の圏外でしょ?」

 ニーヴが少し面倒くさそうに言って、船外に出る。シオラとイングリズも出て行く。モイラとフィリアは、回収した少年の様子を見に行った。

「……溺れてるって解釈で良いのかな?どうすれば良いの?」

「心肺蘇生かな…無理に水吐かせちゃいけなかったと思う」

 回収してからも少し時間が経っている。2人は急いで少年に心肺蘇生を行った。

「かはっ」

 何度か繰り返すと、少年の口から水が出た。急いで体を横向きにし、水で詰まらないようにすると、少年は苦しそうに呼吸をし始めた。

「あ!ねえ大丈夫!?聞こえる?」

 声をかけるフィリアは、うっすら開いた瞳を見て驚いた。

 連邦では見た事のない、濃い、黒に近い瞳…再び少年の身体を確認する。白い手首まで隠れる大きな服から出る手や足の肌の色は、連邦のそれより少し濃い。髪は濃いブロンド。ここまで濃い色は初めて見た。間違いない、この少年は


 帝国人だ。


「何で、オルカニア()に、帝国人が…」

「ねえ、あれ見て!」

 船外からニーヴの声がする。

 フィリアとモイラは、ハッチから身を乗り出して外を見た。

 空が一瞬、チカチカと光る。その光が、一瞬で海上の雲に穴を開け、ドッという大きな音と共に光の柱が空から降って来た。何が起きたかわからないが、次の瞬間、海に大きな穴が開いた。

 まずい。


「総員、何かに捕まれ!!」


 フィリアはモイラと共に少年を抱き、船内の小さな椅子にしがみつき、船外にいた3人も船体にしがみつき、衝撃と爆風に耐えた。


「なんなのよ、これ…」

 見ると、巨大な水柱が上がっている。

「ねえ、あそこ…」

 シオラが恐る恐る口を開いた。

「フィリがさっき、回収に向かった辺りだよ…」


 何で、そんな所にこの人いたの…?


 呼吸はしているが、まだ意識が戻らない少年を見て、フィリアは思った。




自動車学校時代「ぶつけるなら、教習生の間にね。切符切られちゃうからね」って言われた事があります。

本当なのかな?



20263.19 誤字を修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ