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7.

 学校から言い渡された罰は「大量の反省文」と「一ヶ月の学校時間以外の外出禁止」だった。「これが軍人なら、“始末書”と“入牢”だぞ!」と脅し付きで。

 放課後は居残りで反省文を作成し、帰宅後は全ての権限を制限された家の中で虚無の時間を過ごす。最初の1週間は自由の無い生活にぐったりしていた少女達だったが、人間、慣れてくるものなのか、一ヶ月が過ぎる頃には「そんな事もあったねぇ」など言い合えるようになっていた。

 外出禁止が解けてすぐの休日、フィリアは再びイングリズに呼ばれていた。まだ人工光が明るい昼間の時間、2人は改良植物でいっぱいの公園のベンチに座った。


「オフで外出れるの、久々ね」

 解放されたように思い切り伸びをするイングリズ。

「フィリ大丈夫だった?一ヶ月も部屋から出られないって、結構辛かったよね」


「……ん?」


 聞き間違いだろうか?

「そ、そんな監禁生活みたいなの、大袈裟でしょ。食事もシャワーも、部屋出ないとできないでしょ」

 フィリアは戸惑いながら軽く笑うが、イングリズも戸惑っている。

「食事は部屋に運ばれて来たし、シャワーも15分以内だよ。外禁って大体どこの家も一緒でしょ?」


「………え?」


 囚人かな?一体どこの世界線の話?ならトイレは?とフィリアは尋ねようとしたが、怖くて聞けなかった。

 外禁中の一ヶ月は父親の前で毎日軍規の朗読をさせられるという、ちょっと行き過ぎた思想教育か何かかな?といった事以外は部屋でのんびり宿題をし、食事も普通に父親と食べていた。何なら、暇を持て余して、筋トレや武術の訓練まで付き合ってもらっていて、外に出られない閉塞感以外、割といつも通りの生活を送っていた。

「やっぱり学校外で話して正解だったかも。フィリ、今のあんまり人に話さない方が良いかもね。フィリの周りの大人達って、かなり優しいよ」

(あれが?あの鬼が?)

 思わず口から出そうになる言葉を両手で塞ぐ。

「この国だと、そういう親なかなかいないもん」

「そうなの…?」

 むしろこの一ヶ月間、4人はそんな生活してたの。口には出さないが、大分心配になってしまう。

「軍人だったら、折檻だって」

「せ…!?」

 何事!?

「モイラ、あの時変だったでしょ?」

 思い出してみると、いつも優等生で大人しいモイラは、あの冷静に考えるとかなり無理のあった計画に随分と前のめりだった。

「モイラね、本当は医務官になりたいんだって。でも、ご両親は前線派で…」

 モイラの両親は事務官だったはずだ。

「戦闘部隊に行けって言われてたんだって。ほら、手っ取り早く結果出せるでしょ?」

 それは生きていれば、の話だ。戦闘部隊の父を持つフィリアは無言で頷く。

「医務官は重要だけど…親ってさ、優秀な軍人を育てれば査定上がるでしょ。だから今回の事すごく怒ったみたいで。モイラ、かなり折檻されて…ほら、最初1週間休んでたでしょ。あれかなり大変だったみたいで」

「ちょっと待って!」

 情報量が多すぎて頭が追い付かない。

「これ私聞いて良い話?何でイングリズが知ってるの!?」

「あれ?フィリ知らなかった?モイラはお隣さんなの。だから今日は公園に来たんでしょ」

 他人の事を深く探ってはいけない。のに、色々な抜け道があるなあ、と感心してしまう。それよりも隣の家でそんな事になっているなんて怖い。少しゾッとしたが、イングリズは気にせずに話を続ける。

「これ以上詳しい話は知らないけど…」

 十分詳しくて胃が痛い。

「この間のシアルド少佐が助けてくれて」

 それは初耳だ。ダリウスから何も聞いていない。

「モイラは保護施設でメンタルケア受けながら、今はそこで生活してて、モイラの両親は子供の養育権限剥奪で、もう育てちゃいけないんだって」

 本当にこれ聞いて良い話なのか?

「もう育てちゃ…って、モイラ以外にも子供いるの?」

「モイラの上に4人だから、もう自立してるんだけどね。ケアプログラム終了したら、1人暮らしの兄弟のところで住むんだって。同じコロニーだし、モイラとしても、どこかに行くよりはその方が良いって。で、」

「で…って、まだこの闇深い話続けるの!?」

 既に恐怖で泣きそうだ。

「モイラから、シアルド少佐にお礼のメッセージ渡して欲しいって」

 フィリアの個人端末にメッセージデータが送られて来た。

「今モイラ、ケアプログラム中だから、あんまり刺激できないでしょ?でもお礼はちゃんとしたいんだって」

 優等生のモイラらしいと思った。

「わかった。預かるね」


 悪い事をしてしまったし、たくさん怒られた。でも、あれが彼女の決死の悲鳴だったなら、これからは幸せになって欲しい。心から。





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