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取引先のエリート社員は憧れの小説作家だった  作者: 七転び八起き


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第3話 運命の人

 橘さんと、次会う時っていつなんだろう、と、よくわからないまま数日が経った。


 陽介からはあの日以来連絡はなくなった。

 ふと思い出が蘇って少し苦しくなったりしたけど、やっぱり戻る気はなかった。


 久々に、フリーになった。

 誰にも縛られない生活。


 自由なのか孤独なのか──


 仕事から家に帰って、テレビを見ながらぼーっと考えてた。


 その時、スマホに着信があった。

 橘さんからだった。


「はい!」


『今から車でそっち行こうと思うんだけど…いい?連れて行きたいところがあって』


「どこですか?」


『神谷さんの新しい家』


「え、もう見つけたんですか?」


 あの時橘さんが"なんとかする"って言ってたけど、本当に何とかしてくれたのか…

 その場限りの幻ではなかった事を、ありがたく感じていた。

 私は自分の家の住所を教えた。


 ──


 暫くしたらまた電話がかかってきた。


『今から出てこれる?』


 私は足早に家を出た。

 家の近くに人影があった。

 橘さんだった。


「こんばんは!」


「お疲れ」


 優しい顔に安心した。


「こっちに車あるから」


 橘さんに付いていったら白い車があった。

 高級車…

 橘さんのいでたちといい、結構お金持ちな人なのかな…。


 橘さんの会社は業界の大手で、そんな企業のマネージャーともなると凄い年収なんだろうなと、色々考えていた。


「中に入って」


 私は恐る恐る助手席に座った。

 橘さんも運転席に座った。


「神谷さん」


「はい!」


「会いたかった」


 会いたかったって…

 私達、まだ出会ったばかりで、恋とかそういうのじゃなくて、あの夜に重なっただけの、仕事の取引相手…


 でも、たったそれだけのきっかけなのに、なぜか、その言葉にドキドキしてしまってる自分がいた。


 そのまま車で連れて行かれたのは、高級マンションだった。


「え…ここは…?」


「神谷さんの新しい家」


「え!?こんな高そうなところ??」


 私の年収じゃ住めない!


「無理ですよこんな立派なところは」


「大丈夫だよ」


 何が??


「とにかく付いてきて」


 マンションのオートロックが開いて、そのまま付いてくとエレベーターがあった。

 エレベーターに乗ったら7階で止まった。


 7階って…高いよね、家賃。


 橘さんは、マンションの一室の玄関のドアを開けた。


「ここ」


 私は恐る恐る見た。


 ピカピカの内装…

 しっかりした作り…


 橘さんはそのまま靴を脱いで中に入った。

 私も靴を脱いで、部屋をちらっと見たりした。


 理想的な部屋だな…。


 その時橘さんが部屋の窓の外を見ていた。

 私も隣に行ったら、すごい綺麗な夜景が広がっていた。


「わぁ…綺麗ですね」


 こんな素敵な夜景も見られるのか…。


「気に入った?」


「はい…でも私の給料じゃちょっと…」


「ここ、俺のマンションなの」


「はい?」


「正確には親のだったけど、もらったんだよね」


 びっくりして何も言えなかった。

 とんでもない金持ちだ…


「だから、家賃とか気にしないで住んでていいよ。俺は最上階に住んでるから、なんかあったら来ていいよ」


「同じマンション!?」


 いきなりそんな身近な場所に!!

 階は違うけど…


「そんな…まだ出会ったばかりなのに、こんなに良くしてもらって…。お気持ちは嬉しいんですけど、まだ心が追いつかなくて」


「俺がここにいて欲しいの。それじゃダメ?」


 え?


「それは、どうしてですか?」


 橘さんの謎めいた笑みに混乱する。


「神谷さんが欲しいから」


「欲しい??」


 どういう事?


「わかったんだよあの時」


「え?」


「俺が探していたのは君だって」


 探していた…?


「よくわからないんてすが」


「わからなくていい。あの日、君と会ったのは運命だと思っている」


 運命…?


「俺に委ねて。何もかも」


 私は結局、橘さんの言ってる事がよくわからないまま自宅に帰された。


「引っ越しの準備、早くしてね」


 紳士の笑顔で去っていった。


 あの人は一体何なんだ…


 何で私をそんなに特別視するかわからないけど…とりあえず引っ越しはしてみる事にした。


 ◇


 あれから二週間──


 仕事が忙しくて、なかなか引っ越しの準備が進まなかった。

 橘さんからも連絡が来なかったから、後回しにしていた。


 会社でエレベーターに乗った時、ふとあの香りがした。


 まさか──


 私が恐る恐る振り返ると、橘さんが少し不機嫌な顔で立っていた。

 私をじっと見つめてる。

 これは……怒ってる?


 だんだんとエレベーターから人が降りていって、とうとう二人きりに。


「引っ越し準備、まだかかりそう?」


「すみません……ここ最近忙しくて」


「ずっと連絡待ってたんだけど」


「ごめんなさい」


 橘さんはエレベーターの別の階のボタンを押した。


「え、どこに行くんですか?」


 開いたフロアは、テナントがまだ入っていないフロアだった。


「ちょっとこっちに来てくれる?」


 橘さんに導かれながら、暗闇のフロアの奥の部屋に入った。

 その時ドアを閉められた。


「え?」


 橘さんがゆっくり近づいてきた。


「神谷さん」


 部屋の机に体を押さえつけられた。

 橘さんの瞳が私を見て揺らめく。

 その時、唇が重なった。


「もう待てない」


「すみません!すぐに準備するんで……」


 仕事では落ち着いている橘さんは、まるで別人のように余裕がない。


「このまま連れて行きたい」


 そこまで私を待っていたの?


 橘さんにきつく抱きしめられた。

 苦しくなるくらいに。


 その時、足音が聞こえた。

 複数人の話し声。


「静かに」


 私達は部屋の片隅に隠れた。

 やばい……見られたら色々まずい!

 人がもうドアのかなり近くにいる。

 ドアノブが動いた。


「あれ、開かない。鍵かかってますね。取りに行きます」


 そのまま人々は去っていった。


 鍵がかかっていたのか。

 助かった──

 安心して腰が抜けそうになった。


「ごめん、驚かして」


 橘さんは少し申し訳なさそうにしていた。


「早く来てほしくて意地悪しちゃった」


 意地悪?


「そんな……私凄い怖かったです」


「ごめん。やりすぎた」


 橘さんは私の頭を撫でた。

 その後、私の顔をじっと見た。


「神谷さん、可愛い」


 心臓が跳ねた。


「戻ろうか」


 二人でエレベーターに戻って、オフィスフロアに着いた。

 橘さんはそのまま会議室に行った。


「ちゃんと引っ越しの準備してね」


 また仕事の時の落ち着いた表情になっていた。


 引っ越したらどんな生活になるんだろう。


 橘さんの予期せぬ行動に一喜一憂しつつも、この人の事をもっと知りたいと思ってしまった。

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