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プロローグ
「鬼さんこちら…。」
狂乱が聞こえる
「手の鳴るホウエ…。」
眠るのが惜しいなら、狂宴に溺れればいい。
生を嗤っているのは死者たちの歌…
もう夜が明けようとしている。
そこは一帯の落葉樹林がすべてなぎ倒され、半径数メートルに及ぶクレーターとなっていた。
爆心地に似たそれの中央に何かが佇んでいる。
ゆっくり明けて行く空、凄惨な冷気は白い闇へと変わりそこに取り残されたように黒が佇んでいる。
人、深く被られた黒いフードからは人の顔、口元だけが映し出されている。
しかし、ゆっくり持ち上げられた左手は人のそれとは異なり鋭い爪と異形の形状と色彩、硬質と思われる皮膚が黒衣から覗いている。
闇の周りを取り囲むように半透明の人の顔をした浮遊物が様子をうかがい旋回し漂っている。
「鬼さんこちら…。」
浮遊するこの地に呪縛された死者の魂が、甘美に囁き続ける。
闇はそれをぼんやり見つめる。
「手の鳴るホウエ…。」
歌声は魂を慰み、新たな死者を誘い瓦礫に幻想の花をおいしげらす。
新たな悲劇を呼び、仲間を増やすために。




