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陰キャンプ・ゼロ

「ありがとう葵くん! パソコンにも詳しいだなんてさすがだね!」


 花音はピタッと肩を寄せて、とても嬉しそうにそう言ってくる。


 付き合い始めてもう半年は経つが、それでも未だにドキドキしてしまうのは、花音が可愛すぎるためである。あとおっぱい大っきいし。


「い、いや、それほどでも……。てか、ただメモリーカードを差し忘れてただけだし……」


ーーある日の週末、花音から突然「パソコンから思い出の写真が消えちゃった!」、という電話が入った。

 いつも明るい花音が電話越しで泣いていて、とても悲しそうだったので、急いで彼女の家に駆けつけて、部屋に飛び込み状況を確認してみると……思い出の写真とやらは全てメモリーカードに収まっていたらしく、そのカードがスロットから抜けていて、閲覧できなくなっていただけ、というオチだった。


「よかったよぉ〜大事な思い出が無くならなくて……」


「この機会に全部クラウドにアップしちゃえば?」


「ああ! そうだね! 葵くんナイス!」


 椅子を並べて、隣に座っている花音はカチカチとマウスを操作し、画像の収まったフォルダを開いた。

どうやら花音が小さかった時に撮影したものらしい。


 今の花音もすごく可愛いが、ちっちゃい時の彼女はまるで天使のように愛らしい。

ご両親がこうやって何気ない日常を撮りまくっていたのも理解ができる。

と、一緒に写真を眺めていると、


「あ、ちょっと良い?」


「ひゃっ!?」


 花音へ手を重ねてマウスを操作し、目に留まった画像を拡大する。


 どこかのキャンプ場と思しき背景に、ちっちゃい頃の花音と、花音にそっくりな若い頃のエマさんーー花音のお母さんーーを写したもののようだ。


「あ、葵くんっ……! いきなり手、握んないでよ! 驚くじゃん?」


 子供用のシェルジャケットを羽織って、すごく楽しそうな笑みを浮かべている花音をじぃっと見つめ続けていると……ぶわぁっと、俺の小さい頃の記憶が溢れ、蘇って行く。



●●●



ーーあれは確か小学校中学年くらいのことだ。


普段の家族での夏キャンプは遠い場所へ行くのだけれど、この歳に限っては近くの湖の畔にあるキャンプ場ですることになっていた。


 こうやってキャンプに連れ回されるようになってはや数年。

父さんの指導のおかげで、俺もだいぶキャンプに慣れてきた。

 さらに今回は近場ということで、父さんのスーパーカブの後ろに乗せてもらって、その風を切る感覚が気持ちよくて。


 俺、元々ライダー系のヒーロー番組が好きだし。

だから大きくなったらバイクに乗って、キャンプをしてみたいなと思ったりしていた。


「父さん、俺遊んでくるー!」


「おう、気をつけてな!」


 設営も終わったので、俺は湖畔へ向けて駆け出した。

最近覚えた、水切りーー平らな石を水面に向かって投げて跳ねさせる遊びーーをするためだ。


 今回の目標は3回以上! ここは水切りに適した平べったい石が多くあるので、たくさん拾って準備を整え、いざ水切り開始!


「すごぉーい!」


 と、水切りを楽しんでいる最中、甲高い声が脇から響いてきている。


 振り向くとそこにはシェルジャケットを羽織った、長い金髪に、青い目のドキッとしてしまうくらい綺麗な女の子が佇んでいる。


「ねぇねぇ! 私、それやりたい! 教えて、教えて!」


 知らない子だった。なのに妙に馴れ馴れしいというか、圧が強い子だった。


「あ、ああ、うん、まぁ良いけど……」


 促されるまま俺はその子へ、平べったい石を使うこととか、サイドスローで石に回転を加えて投げるとかを教えると、


「わぁー! できたぁー!」


 初めての投擲でその子の投げた石は、ぴょんと水面で一回はねて、水面に沈んでゆく。


 俺が散々練習をしてできるようになったことを、この子は一回であっさりとやって退けた。

そのことにちょっとだけ悔しさを覚えた俺は、続いて石を投げた。

水面上で石は2回も跳ね、俺は密かにガッツポーズをとる。


「わぁー! 2回も跳ねた! すごぉーい!!」


 するとその子はより一層青い瞳を煌めかせて、そう叫んだ。


「ま、まぁ、俺の方が君よりずっとながくやってたから……」


 なんかすごいって言われて、とても気分が良くなったというか、恥ずかしいというか……


「私も2回ぴょんぴょんさせたい! 教えて!」


「ああ、まぁ、良いけど……?」


 それから俺はその子と夢中になって水切りをした。

最終的には俺は3回、その子は2回を達成できて、ハイタッチをしたり。


「かのんちゃーん! ごはんよー! もどってきなさーい!」


「はーい! 楽しかったよ! ありがとっ!」


 金髪碧眼の可愛い女の子は明るくそういって、向こうでテントを張っている家族の元へと走ってゆく。


 あの子"かのん"っていうんだ。珍しい名前だな。


 なんてことを思いつつ、俺も自分のサイトへ戻ってゆく。


 そうして俺たち家族はバーベキューをし始めた。


 そんな時のことーー


「こんばんはー!」


 元気な声と共に、昼間に水切りで一緒に遊んだ金髪碧眼の可愛い女の子がうちのサイトに現れた。


「これうちが焼いたバークムーヘンです! 食べてください! さっき、遊んでもらったお礼です!」


女の子ーー"かのん"は大人びたふうにそう言って、お皿にたっぷりと盛り付けられたバームクーヘンを差し出してきた。


 最初は父さんも母さんも困惑していたけど、俺が"さっき一緒に水切りをして遊んだ"と話すと、状況を理解して、かのんからバームクーヘンを受け取る。


 かのんが持ってきてくれたバームクーヘンはほんのりあったかくて、外はカリッと、中はモチっとしていてとても美味しかった。


 そして父さんと母さんはもらってばかりでは悪いと言い出す。


 そこでうちが食べていた特製ローストビーフを何枚か切って渡すこととなり、父さんと俺が渡しにゆくことに。


 するとかのんのかっこいいお父さんとお母さんは、快くうちのローストビーフを受け取ってくれて。


 さらにかのんのお父さんが飲んでいたワインに、酒屋のうちの父さんが興味を示して、話が盛りに盛り上がってーー


「んふふ! また一緒になったね?」


「あ、うん、まぁ……」


 すっかり俺の父さんとかのんの父さんは意気投合してしまって、2家族合同のバーベキューをうちのサイトですることとなった。


 その間、かのんはずっと俺の隣にいて、けらけらと楽しそうに笑っていたりしてとても楽しそうだった。


 でも俺はかのんの可愛さと、初めて身近に感じる女の子の存在に戸惑って、うまく話せなくて。


「お、俺、疲れたから先寝るよ……」


 大人たちはまだまだ眠らない雰囲気だったし、俺もなんだか妙に疲れてしまったので、1人テントへ向かってゆく。


 そうして微睡んでいると、テントが開く気配が。


 また酔いすぎた父さんが寝転がりにやってきたのかな?


「ねちゃった?」


「ーーっ!?」


 驚いて振り返ると、俺の隣にはかのんがいて、ねころがっていたのだ。


「おとなの中に1人だけおいてかないでよー」


「あ、いや、えっと……」


「わたしも一緒に寝てもいい?」


「あ、うん、まぁ……」


 恥ずかしいけど追い出すわけにもいかず、認めるしかなかった。

だけどやっぱりはずかしいのでかのんへは背中を向けて、寝入ることにした。


するとーー


「えいえい」


「ひゃっ!?」


 突然背中を指先でツンツンされて、情けない声をあげてしまう俺だった。


 一瞬、逆襲してやろうかと考えたが、女の子の身体に触れるのがはずかしくて何もできず終いであった……。


●●●



「えいえい」


「ひゃっ!?」


 パソコンの画面を見つめて、ようやく昔のことを思い出した俺へ、花音は脇腹ツンツン攻撃を仕掛けてきた。


 今までの俺は花音の弱点を知らなかったからやられっぱなしだった。だけど、今の俺はもう違う!


「こ、このやろう! えいえい!」


「ひっ!? あ、ああああっ……!」


 花音は脇が弱点なのだ! ここを集中的に攻めるのが、花音を弱らせるのに1番効果的なのだ!


「だめっ、そこっ、葵く……んんっ!」


「や、やめて欲しけりゃ花音もツンツンやめてって!」


 俺たちは椅子に座ったまま、お互いをツンツンしあった。

するとだんだんと頭がぼぉっとし始めて、花音も呼吸を荒げ始めてーー


「はぁ、はぁ……葵くんっ……チューしよ……?」


 花音が熱っぽくそう言ってくるし、俺もしたかったのでお互いに唇を近づけ合った。


「んっ……んんんんっ……!」


 ピチャピチャと水音を立てつつ激しく舌を絡めて。


 唾液を何度も交換しあって。


 キスをしながらお互いの身体のいろんなところを触り合って。俺も花音もすっかりそういう気分になってしまい、


「あっち、いこぉ……?」


 花音はベッドに向かうことをおねだりしてきた。


「大丈夫なの、今日?」


 今日は隣の部屋で花音のお父さんとお母さんがくつろいでいる。

でかける予定もないっぽいし、こんなタイミングでしてしまっても大丈夫なのだろうか……?


「し、静かにすれば大丈夫だよ……? たぶん……」


「俺は、まぁ大丈夫だけど? むしろ花音が気をつけるべきじゃ?」


 花音の声はかなり通るので、うっかりすると聞こえてしまいかねない。

それに花音って、すごく敏感で、ちょっと声が大きめというか。まあ、そこが良いんだけど。

 

「うう……気をつけます……」


 ならば今日は花音のその言葉を信じようと思い、俺たちは致し始めた。


 必死に声を殺している花音の姿はとても魅力的で、強い興奮を覚え……花音も逆襲と言わんばかりに、俺に声を出させようと、色々と攻勢を仕掛けてきて……結局短い時間で俺たちは3度ほどしてしまうのだった。


「……ようやく思い出してくれた?」


 一通り満足した段階で、花音は俺にぴたっと身を寄せたまま、耳元へそう甘く囁きかけてくる。


「お、思い出したっていうか、えっと、まさか……?」


 もしかしてあの日キャンプ場で出会った"かのん"って女の子はひょっとして……?


「んふふ」


「もしかしてずっと?」


「えっと、それはねぇ……」


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