俺と花音の未来予想図
〜時系列は最終話後になります〜
スーパーカブとクロスカブが山道を華麗に疾駆している。
花音もだいぶ運転が上手くなって、きっちり良い感じで、クロスカブで俺のスーパーカブに追従してくれていた。
にしても、颯爽とバイクを駆る花音って、普段とは違って凄くかっこいいと思う。
だけどバイクを降りれば、可愛いんだから、ほんと最高の彼女だと思う。
そうしてくねくねした山道から県境を超えて、俺と花音がバイクでやってきたのはーー
「わぁー! キャンピングカーがいっぱい!」
花音は巨大な屋内展示場にずらりと並ぶキャンピングカーを見て、青い瞳をキラキラと輝かせている。
北海道への修学旅行の際、こうしたイベントに参加しようと思ってはいたが、結局あれだったので……なので、春休みを利用して、少し遠くで開催されるキャンピングカーのフェアへツーリングついでに訪れていた俺と花音だった。
「それじゃ早速、解説付きでよろしくお願いしますね、葵せんせ?」
俺は花音といつも通り手を繋いで、会場へと踏み込んで行く。
相変わらず花音が歩けば彼女に美貌にみんなが目をとめて、その隣にいる俺へみて「……?」と言った具合に首を傾げるという……まぁ、もうだいぶ慣れたし、周りがそう思ったって、花音は俺の彼女で、俺たちがラブラブなのは変わらない。
まず最初に訪れたのはキャンピングカーの中でも特に目を引く【フルコンバージョン】の車種。
「フルコンは製造段階からキャンピングカーとして規格されてるものなんだ」
「わぁ! ほんと家の中みたい!!」
内装を見た途端、花音は嬉々とした声をあげている。
キッチンもあり、シャワーもあって、まるでホテルの一室のようだ。
「ねぇねぇ、これってどうやって寝るの?」
「このソファーが電動でベッドに変形するみたいなんだよ」
「へぇ! これがベッドに! すごぉい!」
ベッドという単語を言っただけで、花音をちょっと変な目で見てしまう……だめだぞ、そういうのは!
「じゃ、じゃあ次は【キャブコンバージョン】を見に行こうか!」
次いで俺たちが訪れたのは、日本国内ではキャンピグカーといえば、これといった感じのキャブコンのコーナー。
「キャブコンはトラックやバンをベースに居住キャビンを架装したモデルなんだよ」
「こっちも家の中みたぁーい! じゃあ、この上にある屋根裏部屋みたいなスペースって?」
「このモデルは、そこが寝室みたいだね」
「ふーん」
花音はヒョイっと、寝室スペースへ登ると、何故かコロコロ転がり出して……いや、ころころと言うよりは、大きな胸の影響で、ゴトンゴトンといった具合なのだが……
「ちょっと天井低いかなぁ……」
「おーい、そろそろ次行くよ」
「わかったぁー!」
そうして3番めに訪れたのは、
「これは【バスコン】。マイクロバスなんか改造して作ったもので、他のより大人数で泊まれる」
「わぁ! これ欲しい! これだったらタネちゃんとか樹ちゃんが一緒でも大丈夫だね!」
「いや、これ欲しいって……」
バスコンは巨大なことからお値段2000万円ほど。こんなもの気軽に買えるはずがない。
ちなみにフルコン・キャブコンのキャンピングカーも、平均お値段1000万円以上。
どういう仕事をしたら、こんなものを買えるのか、甚だ疑問である。
「あーでも、これってパーテーションとかないんだ……」
と、なぜかバスコンの中を見渡しつつ、花音はそんなことを口にしている。
「パーテーション? なんか仕切りたいの?」
「あ、あ! な、なんでもない! 次、行こ!!」
なぜか花音は顔をちょっと赤く染めて俺の手を取り、次のコーナーである【バンコン】のスペースへ。
バンコンは既存のバンの車種の内装を、キャンピングカーに改装したもの。
普段は普通のバンとしても使える。特に国産車をベースにしているモデルは日本国内に多く存在する狭い道路を走り抜けるのに適している。日本でキャンピングカーに乗るなら、まずは、と言われているジャンルの一つだ。
「これってベッドスペースしかなくない?」
「ソファーを全部倒してフルフラットにするモデルみたいだね」
「ふーん。じゃあ、あっちもそんな感じ?」
と、花音は隣の展示スペースを指差す。
今、日本国内のキャンピングカー市場で最も熱い【軽キャンパー】の展示スペースだった。
日本独自の車種である軽自動車。
そのバンタイプの内装を居住スペースとして改装したものや、軽トラックに架装したものなど様々なタイプが存在し、お値段も100万ちょいから存在していて、手が出しやすいものが非常に多い。
ちなみに師匠の高橋さんは、軽トラックに架装をした軽キャンパーに乗っている。
着脱可能で、普通の軽トラックとして使えることが、良いそうな。
「わぁ! 意外と広いー!」
花音はバンタイプのベッドスペースでまたゴトンゴトンと転がっていた。
とはいえ、バンコンに比べてそうできるスペースは少ない。
「ねぇ、葵くん……こっち来て?」
「は?」
思わずそう聞き返す俺。
まさか、一緒に軽キャンパーの後ろに寝転がれと!?
「いや、ダメだろさすがに……」
「そう? 別に誰かと乗っちゃいけないなんて書いてないよ?」
そういや他の展示車種でも、家族だったり、ご夫婦で寝転がっている人たちもいるし……というか、"ご自由に寝転んでみてください!"なんて、積極的なポップも掲示されていることだし、モラル的には問題ないかな……?
「じゃ、じゃあ……失礼します……」
さすがに俺が乗り込むと、軽キャンパーからわずかにギシッといった音が上がる。
それにやっぱり軽自動車をベースとしたキャンピングカーであって、寝転がると花音の綺麗な顔が息づかいさえ感じられるほど身近にあって、肉感の良い花音の体に触れてしまうわけで……
「なんか、緊張するね……」
「あ、ああ、まぁ……」
「でもこの密着感落ち着く♩ やっぱ、葵くんに買ってもらうなら軽キャンパーかな!」
「か、買うって……」
「別にいますぐじゃないよ。お互い大人になってー、自分でお金稼げるようになってー……」
急に花音は黙り込んだ。そしてきゅっと服を摘んできて、
「け、結婚したら、買って欲しいかも……で、2人で、長いお休みの時にね、旅に出てみたいなぁって……! えへへ!」
花音が語ってくれた未来予想図は、俺の胸へ熱い気持ちを宿らせた。
お値段は普通の車よりも高い。だけど、休みの日は花音と2人で軽キャンパーで、海や山、それ以外のところも訪れて、素敵な思い出を作り続けてゆく……そんな想像は、俺にぜひ未来予想図を現実にしたいという思いを湧き上がらせた。
「わかった。こういうのが買えるよう頑張って、仕事をするよ!」
「あは! 頼もしい! さすが葵くんだね! じゃあ、頑張ってね! もちろん私も協力するよ!」
花音のこうした笑顔をこれからも1番そばでずっとみ続けていたいと思う。
そしていつの日か、花音と本当の家族となって、軽キャンパーでキャンプを!
と、そんな中、花音はわざと体を揺すった。すると軽キャンパーもゆらゆらと揺れ始める。
「うーん……でも、軽キャンパーだとこれがなぁ……」
「? 揺れることが何か問題でも?」
「だ、だってさ……きっと葵くんのことだしさ……」
花音は顔を真っ赤に染めてそう言った。
「い、いや、しないよこういうところじゃ!?」
「えーそうかなぁ……? だって最近の葵くん、やたら私にがっついてくるしさぁ……これでそういうことしてると、外からバレバレだし……」
「まさか、さっきからベッドスペースでコロコロしてたのって……?」
「も、もう、そういうことは聞くな、ばか! そういうところデリカシーないぞ!!」
初めて花音の口から"ばか"と言われた気がする。
でもそれって、俺たちの中がそれだけ深まった証拠なのだろう。
ーーこのあと、やっぱりムラムラしてしまった俺と花音は、俺の部屋で致してしまった。この時は花音の方からがっついてきたが……それを指摘すると怒られそうなので、言わないでおくこととした……。




