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第84話 お正月を花音と過ごす

 残念ながら、みんなでのクリスマスキャンプ以降、俺と花音はとても忙しかった。


 人気者の花音はいわずもながだが、俺自身も普通に男友達ができたことで、ツーリングへ出かけたり、ゲームをして遊んだりとなかなか充実していたのだ。


 しかも最近、俺が店の手伝いをするようになって気をよくした父さんが、どんどん仕事を振ってくるようになったのもあり、12月の間は花音とデートすることさえも叶わず。


 本番クリスマスも、お互い実家の仕事の手伝いが忙しく。

で、学校では終業式を迎え、あれよあれよという間に冬休みに入りーー



花音『あけおめー!』


花音『今年もよろしくね!』



 気がつけば、元日の深夜に花音と新年の挨拶を交わしている俺だった。



A.KOUDUKI『明日、何時からだっけ?』


花音『10時に神社でおねがいします!』



 12月がお互い死ぬほど忙しかったので、元日から初詣デートをしよう、と決めていた俺たち。


 新年早々、彼女と初詣に行けるだなんて、以前の俺からは考えられない進展である。

しかも、その相手は誰もが認める爆乳で、金髪碧眼の美少女・花守 花音。


 きっとオシャレな花音のことだから、晴れ着を着てくるに違いない!


 どんな晴れ着姿なのかな? 楽しみだな……!


 と、元日の10時、ウキウキ気分で待ち合わせ場所である近所の神社へと向かって行く。


 この神社は地元だと結構有名なところで、人通りが多い。


「あ! 葵くーん! あけおめぇー!」


 そして鳥居の元へ辿り着くと、ブラウンのロングコートを羽織った花音が身振り手振りで、会えたことの喜びを表現してくれていた。


「あ、あけましておめでとう」


 大人っぽい花音の格好にはドキッとはしたし、今羽織っているコートは彼女の金髪をより美しく際立てているように思う。

 だけど……内心では花音の晴れ着姿を期待しただけに、ちょこっと残念なのは否めない俺だった。


「あれ? 葵くん、なんかテンション低い?」


「あ、いや! えっと……実は花音と新年の挨拶RINEしたあと、なんとなく寝付けなくて……」


「そうなんだ。実は私も。早く、葵くんと会って、初詣行きたいなって、考えてたらあんまし眠れなくなっちゃって!」


 花音が晴れ着でないことへの残念さは、うまく誤魔化せたようだ。


 まぁ、これから先、何度もこうして一緒に新年を迎えるのだから、いつの日か晴れ着姿を拝めるのだろうと思う。


「じゃ、いこ!」


「お、おう」


 花音がナチュラルに手を差し出して来たので、俺は緊張しながらその手を取って。

ほんのちょっぴり冷たい手を、お互いに取り合って、鳥居を潜った。

 そして隣同士に並んで、拝殿に向かってニ礼、ニ拍手、一礼の作法で神様へ今年の挨拶と共にお願いを。


 どうか今年一年も、花音と一緒に楽しく過ごせますように……と。


「なにお願いした?」


 参拝を終えて拝殿から離れると、花音は明るい様子でそう聞いてくる。


「べ、別にたいしたお願いしてないよ……」


 まさか、花音とのことをお願いしたなどと、恥ずかしくて言えるわけもなく……


「たいしたことないなら言えー! えいえい!」


「うはっ!? ちょ、こんなとこで、やめっ……!」


 公衆の面前で、脇腹指ツンツン攻撃を花音は始める。

なんか今日はやけにしつこくて、このままでは周りの迷惑になってしまうと判断し、やぶれかぶれ「花音と楽しく過ごせますようにお願いした!」と叫んだ。

 すると花音は頬を赤く染めて、満足そうな笑みを浮かべる。


「やっぱ私とのことお願いしてくれてたんだ! 嬉しっ! ちなみに私もなんだよー?」


「そ、そうなんだ……」


「3年も同じクラスになれますようにーとか、受験一緒に成功しますようにーとか、あと、えっと……これからもずっと、ずっと、ずーっと葵くんと一緒にいられますようにーとか!」


 どれほど自分が目の前の美少女に想われているか、よく伝わる言葉に、胸が熱く焦がれた。


ーーそれから俺たちはおみくじを引いたり、恋愛成就のお守りはカップルの絆を守るにも有効なのかどうかのかなんて話をしたりなどをする。でも、さすがにこれ以上神社にいても何もすることはないと判断し、境内を跡にした。


「このあとどうしようっか?」


「そこなんだよなぁ……」


 俺は本日、最大の懸念事項を口にする。


 ここは田舎だ。だから都会のように商業施設がほとんどない。

しかもここ最近では元日営業を取りやめるところも多くある。

まさか、唯一空いているのがコンビニだからと、そこで時間を潰すわけにも行かないし……


「だ、だったらさ……ここから近いことだし、葵くんの家、行って良い……?」


 多少は想定していたが、それでも花音の口から直接言われると、驚いてしまうのは否めなかった。

しかも、今日、父さんと母さんは親戚のところへ行っていて、夜遅くまで帰ってこない。

というか、今夜は帰ってくるかどうかさえ怪しい。


「い、良いけど……」


 不安とか、期待とか、驚きとか、嬉しさとか、いろんな感情が渦巻く中、それでも花音へ了承の旨を伝える。


「やった! ありがと! じゃあちょっとしたいことあるから、コンビニよろー!」


「お、おう」


 こういう時、花音の積極性というか、元気いっぱいなところが話をうまく転がしてくれると思う俺だった。


 そうして花音はコンビニで色々と買い集めて。それを見た途端、花音がうちの庭先で何をしたいか理解したので、帰宅後すぐさま部屋から、バスケットチェアを2脚とシングルバーナーと"網"を持ってきてーー


「じゃあ、さっそく焼いちゃおー!」


「了解」


 とてもワクワクした様子の花音の視線を受けつつ、俺は網の上へ購入したばかりの"お餅"を並べた。

焦げなようにバーナーの火をうまく調整しつつ、その時を待つ。

やがて中心がほんのり狐色になったお餅がぷっくりと膨らみを現にした。


「いただきまーす! ……ん、んんんんっ! んまぁーっ!!!」


 焼きたてのお餅に、チューブ入りあんこをつけて食べた花音は、とても満足そうな声をあげた。


 俺も焼きたてのお餅をあんこでいただいてみる。

表面はかりっと、中はもちっと。うまい焼き方ができて、とても満足な俺だった。


「実は一度お餅をこうやって焼いて食べてみたかったんだ! めちゃうまだね!」


 花音はそう言ってひょいと、二つ目のお餅をお皿に乗せる。次は黒蜜で楽しむらしい。


 なら俺はお餅にスライスチーズと、海苔を巻いて……


「あーっ! 葵くん、1人だけすごく美味しそうなことしてる! それ私にも食べさせろー!」


 食い意地の張っている花音は、予想通りそう言ってきたわけで、


「はいはい、わかってますってお嬢様」


 同じものを花音のためにこしらえる俺だった。


 新年早々、外でシングルバーナーを使ってお餅を焼くだなんて、ほんとキャンプで繋がった俺たちらしいと思う。


 と、言った風に、最初は楽しい時間を過ごしていた俺たち。


 だけどーー


「う、うう……やっぱ、寒いね……」


 花音は体をブルブルと震わせていた。

 だんだんと風が吹き出したため、体感温度が急激に下がり始めたのだ。


 俺も俺とて、そろそろこの寒さには耐えられそうもない。


「部屋、行くか」


「え……? あ、うんっ!」


 なんだろ、今の一瞬感じた花音の間は……?


 でもそんな疑問を吹き飛ばしてしまうほど、風がどんどん強まって来ている。


 俺たちは早々に片付けを行い、まるで逃げ込むように俺の部屋へ入って行く。


「はにゃぁ〜……天国だよ、ここぉ……こたつ最高……」


 俺の部屋にあるこたつに足を突っ込んだ途端、花音はテーブルの上へ頬をべったりくっつけて、蕩けてしまっていた。


 かなり油断をしているというか、なんか自分の部屋みたいに感じているのかとても無防備だ。


 対して俺は、自分部屋なのにも関わらず、すごい緊張感の中にある。


「……」


 合流してから花音はずっと厚手のコートを羽織っていたので、これまでは特に気にせずいられた。


 だけどコートを脱ぎ、その下に着ていた白のニット姿を見た途端、俺の視線はそこへ釘付けとなった。


 やはり花音の胸は、新年早々主張が強すぎるのである……。


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