第71話 葵、大人気! そして迎える文化祭当日!
A.KOUDUKI『今日は本当にありがとうございました』
A.KOUDUKI『お二人のおかげで、和やかに進んでよかったです』
パラコードブレスレットの作成を終えて、家に帰り、花音と種田さんとのトークルームへそうポストを入れる。
今日の様子から、もう俺のことを変な目で中学時代の同級生達は見なくなるような気がする。
花音『いえいえ!』
たね『よかったわ、上手く行って』
やっぱ樹を連れてきて、俺と樹が仲直りをしたのを知らしめるのって、種田さんの仕込みだったのだろうか……?
A.KOUDUKI『種田さん、今日もありがとうございました』
たね『?』
A.KOUDUKI『今日樹を呼んでくれた件に関して』
たね『あれ、かのの発案よ?』
花音が仕込んでくれた……その真実を目の当たりにした時、俺の胸へカッと熱い感覚が迸る。
花音『せっかくの機会だと思って』
花音『葵くんがもっと過ごしやすくて、笑顔になってくれればなぁって思って』
春先に出会ってから今日に至るまで、花音はいつも俺のことを考えて、アレやこれやと手を焼いてくれている。
A.KOUDUKI『ありがとう!』
花音『うん、その調子っ!』
いつも俺に何かをくれる花音。そして今の俺の手の中には、花音から頂いたもので溢れかえっている。
そしてその状況に強い満足感を覚えている。
夏のキャンプバイト時、気づいた自分の真意の芽。それがだんだんと茎を伸ばし、葉を広げだしている感覚がある。
たね『また始まったわね、イチャイチャ』
たね『そういうのは2人きりの時にしてくれるかしら?』
花音『イチャイチャなんてしてないっ!』
花音『葵くんからもなんとかいってよぉー!』
さて、この場合どう返したら良いものか……恋愛超初心者の俺にはとてつもない難題である。
ーーそれから"森のカフェ"に関して、花音、種田さん、俺の3人が中心となり、順調に作業が進んでゆく。
文化祭当日まであと数日。
2ーCほぼ全員が連日居残り、時間ギリギリまで作業に勤しんでいる。
そして俺は、森のカフェのアドバイザーとして、日々各班の持ち場を行ったり来たり。
「香月くん! 悪いんだけど、ブレスレットの編み方、もう一度教えてくれない?」
「わ、わかりました!」
まずはブレスレット作成班の人達のところへ向かい、再度編み方を教え始める。
このグループには中学の同級生が所属しているだけど、以前とは違い、普通に接してくれるようになっていた。
俺と樹が仲直りしたことを告げられて、本当に良かったと思っている。
「おい香月、ちょっとツラ貸せよ」
と、言葉は粗暴ながら親しみやすい笑顔を浮かべて、肩を組んできたのは装飾準備班の剛田くん。
主に会場を飾りつけるガーラントの作成を行なってくれている。
「まったく剛田は口が悪いんだから……こんな呼ばれ方嫌だよなぁ?」
俺と剛田くんの傍で、骨川くんが苦笑いを浮かべていた。
この2人とは文化祭の準備が始まってから、なにかとつるむようになっている。
ぶっちゃけ、久々にできた男友達なのでとても嬉しい!
「いや、俺は別に……で、何かトラブル?」
「そうなんだよ、実はさぁ……」
「ちょーっと待ったぁー! 先にウチらに香月くん貸してくんねー?」
そう言って割り込んできたのはカトラリー準備班の吉川さん達。
廃材からフォークを削り出すといった作業に従事してくれている。
「ど、どうかしました?」
「こっちも問題発生でねー。なんで確認よろ〜」
「あ、でも……」
「心の友よ! こっちが先だよなぁ!? 吉川は後だよなぁ?」
剛田くんはよりグッと肩を組んで凄んできた。
体がでかくて、力が強いからちょっと怖い。
「ウチら本気で困ってるんですけどー?」
目の前の吉川さんも困り果てた様子を見せている。
どうしよう……剛田くんは久々にできた同姓の友達だし、先に声をかけてきてくれたし……でも吉川さんの方は、結構困ってるっぽいし……
と、そんな中、
「葵くぅぅぅぅーーーーん!」
稲穂のような髪を振り乱し、自慢の胸をばいんばいんと揺らして花音が飛び込んでくる。
「緊急事態! お願い助けてっ!」
「か、花音も!?」
「え?」
「いや、今剛田くんたちが困ってて……」
「行けよ、香月。やっぱこっちは大丈夫だ!」
剛田くんはさっきまでの困っていた様子とは一転、きっぱりそう言い放つ。
「あっ、やっぱウチらも大丈夫っぽいー? だからお先にどーぞー!」
なぜか吉川さんも。
「ごめんね! ちょっと葵くん、借りてくね! 行くよ!」
「ちょちょ!?」
俺は花音に腕を掴まれて、教室から無理やり引き摺り出される。
教室を出る間際にちらっと見た剛田くんと吉川さん、なんかニヤニヤ笑っていたような……?
……にしても、俺の学校生活は大激変どころか、天変地異レベルで変化したように思う。
俺は今、学校でも有名人で、しかもものすごく可愛い花音に腕を掴まれ、廊下を引きづられている。
以前は、こんな俺たちを見て、奇異の視線を寄せられていた。
だけど今は、誰もそんな視線は寄せず、むしろずっとそうだったような、そんな風に流してくれている。
種田さんやみんなのおかげで、ようやく俺みたいなのが花音の友達だと、胸を張って言えるような立場になったと感じている。
ーーこんな風に基本的にバタバタと、でも和やかに文化祭の準備は進んでゆく。
そしていよいよ、文化祭当日を迎える。
「いらっしゃいませー! 2ーC、森のカフェはこちらでーす!」
さすがは店の手伝いで慣れている花音だ。校庭の隅でやっているにも関わらず、次々とお客さんが森のカフェへ入ってきている。
「葵くん、スペシャルゲストご来場てーん! ご案内よろしくー!」
花音のそんな声が聞こえ、手空きになった俺は振り返ると、
「お、樹!」
「ん! これがおいくん達が一生懸命作った森のカフェかぁ!」
樹は椅子代わりの丸太や、飾り付けられた松ぼっくりのガーラントなどをとても興味深そうに眺めている。
そんな樹の姿を見つけた中学時代の同級生達は、彼女を取り囲んで席へと案内してゆく。
「ゆっくりしてけよー!」
「ん! ありがと! おいくんも頑張って!」
さぁて、樹も来たことだし、もうひと頑張り……と気合を入れ直したその時のこと。
俺の手かサッと、お盆が消え去る。
「休憩時間よ! さっさと行きなさい!」
目線の下に種田さんの頭が見えた。どうやらお盆を奪ったのは彼女らしい。
「ちょちょ、みんななにするのぉ!? そこだめっ……んにゃぁー!?」
なぜか目の前で花音がクラスメイト達にエプロンやらなんやらを剥ぎ取られていた。
なんかすごくエロいんですけど……
「はいじゃあ、いってらっしゃーい!」
「「わわっ!?」」
ドーンと、背中を押されて森のカフェを追い出されてしまう俺と花音。
すると花音は姿勢を崩して倒れ出し、俺へ彼女の爆胸が迫ってきている!?
ここは避けるべきか!? いやでも避けたら花音が地面に大激突……ええい!
「んふぅー!?」
顔面が柔らかくて、でも弾力のある感触に包まれて、おまけに花音のお花のような匂いが間近に……なんて、感じ入っている場合じゃない。口も鼻も、花音の胸の下敷きになっていて、息ができない……!
「ごごご、ごめんっ! 大丈夫!? 頭打ったりとしてない? 怪我してない!?」
バッと飛び起きた花音は、とても慌てた様子で、俺の頭を撫でたり、頬に触れたり。
しかも俺の腰の上に馬乗りになっているものだから……
「わ、悪い花音、降りてくれ……」
「わあぁぁ!? ご、ごめぇーんっ!」
花音は頬を真っ赤に染めて、胸をばいんと揺らしながら、ものすごく慌てた様子で俺の上から飛び降りる。
「本当ごめんね。私、重かったよね?」
どうやら気づいてはいなかったようだ……もし気づかれてたら、平然としてはいられなかっただろう。
「もう、タネちゃんいきなり押すだなんて酷いよ!」
「ふふ……きっと香月 葵が身を挺してかのを助けるって信じてたわ! ほら、さっさと行きなさい! 」
種田さんはそう言い置いて、さっさと森のカフェへと戻ってしまった。
「じゃ、じゃあ、せっかく休憩時間一緒だし……回らない?」
「そ、そうだね……」
俺は起き上がると、花音と一緒に校舎へと入ってゆくこととなる。




