第49話 水鉄砲合戦! 樹の叫び!
「ちょっと試し撃ちを……うおっ、めっちゃ飛ぶなこれ……!」
ビューっと水鉄砲から飛び出た水に、思わず感心してしまう俺。
この銃ってなんかどっかで見たことあるような……ああ、この特殊な形状ってP90か?
ジャンケンでの装備決めの結果、3番手になった俺はガトリングを逃し、P90によく似たサブマシンガン型の水鉄砲を取得する結果に。
こいつは見た目こそ変わっているが、エアーポンプで空気を圧縮して水を飛ばす、標準的なものだった。
「さて……出撃しますか。香月 葵、P90行きまーすっ! なんちゃって……!」
ちょっとふざけて防風林の中からいざ出陣。
ゲームの制限時間は30分。
またポイの数は全部で3枚となり、つまりこれがライフ扱いなのだが、これを撃ち抜いた数で勝負をすることとなった。
俺は周囲を警戒しつつ慎重に森の中を進んでゆく。
すると、傍にわずかな気配を感じーー
「そこか!?」
水鉄砲の水をピュッーっと放ったが、相手はヒラリを身を翻し、軽々と避けて見せる。
「悪いわね、早速いただくわ!」
俺の目の前に現れたのは、弓形の水鉄砲を持った種田 菜種さん。
彼女は弓道部に所属し、去年は全国大会にまで出た実力者だ。
弓型水鉄砲を構える姿がとてもかっこいい……って、呑気にそんなこと考えている場合じゃない!
このままではいきなり、頭の上につけたポイを撃ち抜かれ1点を失ってしまう!
だけど、種田さんはしっかり俺を狙っているし、彼女は全国クラスの実力を持った弓道部員。
この俺に避けられるか? いや、避けてみせーー
「な、なによこれぇー!?」
と、目の前の種田さんは呆れたような悲鳴をあげていた。
俺も正直びっくりだ。
水がピューっ……といった、かわいい勢いで出ている。
種田さんが獲得した弓型の水鉄砲はデザインの上ですごくかっこいいし、強そうにみえる。
だが、これはあくまで"キャラクターグッズ"の範疇であるらしく、実用性はかなり低いらしい。
ならば!
「くらえぇー!」
「きゃっ! っっっっんんんっ!!!」
種田さんも俺と同じく額の上にポイをつけているので、顔面へ向かって思いきり、盛大に発射する。
見事ポイは破れて、俺は1点獲得。しかし……
「んぐっ!? んんっ……かはっ、けほっ……!」
勢い余って発射したソレが口の中に入ってしまった顔のビシャビシャな種田さんは、咽び込みながらその場に倒れる。
「す、すみませんっっっ!」
「ううっ……はぁ、はぁ……き、気にしなくて良いわよ……だけど……」
「?」
「覚えてなさいよ、香月 葵。あとであんたの顔も、私のでビシャビシャにしてやるわ、ふふ……ふふふふ……!」
怒ってないようにみえて、実は種田さんめっちゃ怒ってる!?
ここは種田さんが戦線復帰する前に立ち去るが得策だろうと考え、その場から走り去る。
しかしこれで1点は獲得。
そして次出会うのはおそらくーー
「わぁー! カニさんだぁ! 可愛い! えいえい!」
白い砂浜の上で、白い水着を着た花音は、かがみ込んで足元のカニを指先でつんつん突いていた。
これは油断をしているのか? なら、今がチャンス!
俺はしゅっしゅっ、と水鉄砲の下部をさすりつつ、はぁはぁと呼吸を抑制して忍足で花音へ接近。
俺のタンクは触ってもわかるほど、かちかちな硬さを得た。
これならどれほど勢いで飛び出すのだろうか。
期待と興奮を胸に、無防備な花音へ向けて歩を進め、やがて有効射程に達しーー
「悪いな、花音っ!」
ビュゥゥゥゥーーーーッ! っと、勢いよく放った。
しかし、怒涛のように放った水は花音を濡らさず、ソレによって完全に防がれてしまう。
「ふふん、甘いよ葵くん!」
筒状の水鉄砲を、まるで傘のように開いた花音は、ふんぞり帰っている。
ふんぞりかえると、大きな胸が更に強調されて……しかも花音は的のポイを、胸の谷間に挟んでいる……!
と、今は花音の胸に見惚れている場合じゃない!
「それそれそれぇー!」
花音は傘型の水鉄砲をシュッシュと摩った。
すると先端からビュッビュと水が吹き出してくる。
水の威力は結構あるし、花音の胸の谷間に挟まっているポイは傘によって完全に守られている。
こういうゲームの場合、最強つぅか、チートなんじゃね? 傘型水鉄砲って……。
だがしかしーー
「あっ!」
突然、花音からの水の応酬が止まった。
どうやら水切れを起こしたらしい。傘型って柄の部分が水タンクになっているので、そんなに入らなそうだ。
傘型の弱点、ここに発見したり!
それは花音も気づいているのか、補給用のバケツに向かってジリジリと後ろづさりをしていた。
ならば、花音を叩くチャンスはいましかない!
「ひゃっ!?」
花音の傘へ向けて砂浜の砂を投げつけた。
これまでの攻防でびしょびしょになった傘に砂がこびりついて、花音の視界を悪くする。
そして花音が怯んでいる隙に、一気に距離を詰め、自分の水鉄砲で花音の傘型水鉄砲を払いのける。
「悪いな、花音っ!」
「ちょーーーーんんんんんんぅぅぅぅーーーーー!」
谷間のポイを撃ち抜く。
破れたポイの間を水が通り抜け、花音の顔をビシャビシャに濡らす。
「かはっ、ごほっ……水飲んじゃったぁ……葵くんのばかぁー!」
「ご、ごめん! でもこれ勝負だから!」
「んもうぉ! あとで覚えてろぉー!」
とりあえずやられる前に、その場から立ち去った方が良いと判断し、飛び出す俺だった。
こっから先はさらに注意をしないとな。
なぜなら……
「ーーっ!?」
浜辺に唐突に響いたモーター音。
その音だけを頼りに身を翻す。すると俺の脇を、ビュビュビュビュビュっ! と鋭く水が過ってゆく。
「避けられた……さすがおいくん……一筋縄じゃ行かない……!」
一見、気を抜いているように見える樹。
しかし、六連装×2門、合計12個にも及ぶ銃口は全て俺に狙いを定めている。
さらに背中にはランドセルのように背負った、なんだかSFアニメなんかに出てきそうなバックパック。
「まさにバルカン・樹……いや樹ヘビーアームズと、いったところか……」
「前者はゲームのキャラで、後者はロボットの名前だよね、おいくん?」
「よ、よく分かったな……?」
「僕を舐めないで! 僕はおいくんの友達だから! 君のこと分かってる自信があるから!」
俺のぼやきをしっかり拾い、そして適切に返してくる樹。
こういう友達がいてくれることに、嬉しさを隠しきれない俺がいて、少々照れてしまう。
「僕はおいくんのこと分かってるよ……おいくんの動きさえもっ!」
「おわっ!?」
照れているのも束の間、樹は遠慮なしに俺へ向けてダブルガトリング砲から、無数の水を放った。
この水鉄砲ガトリングは発射の際、銃口の辺りがマズルフラッシュみたいに光って無茶苦茶本格的だ。
さらに水は背中に背負ったタンクから直接補給されるため、残量をあまり気にせず攻撃ができる。
樹いわく、この海外製のガトリング砲風水鉄砲はタンクとセットで、約うん万円。
「なんでお前の部活、そんな大人気ないもん持ってんだよぉー!」
木の影に身を隠しつつ、思わずそう叫ぶ。
「練習も、遊びも真剣に! これが僕たち山内学院高校水泳部のモットーだから! それにね……」
「?」
「この水鉄砲が当たった時にね……いい機会だからおいくんに逆襲してやろうと思ったの!」
「ぎゃ、逆襲? なんの……?」
「おいくん、6月くらいに山内のプールの前をバイクで通ってたよね? あの時、おいくんと僕、まだ仲直りしてなかったよね?」
「そ、それは……」
「なんであそこを通ったの? たまたまじゃないよね? てか、一瞬僕と目があったよね?」
樹はガトリングを斉射しつつ、淡々とそう語る。
「僕、道に飛び出して、おいくんの名前呼んだんだよ? でもおいくん、そのまま走り去ったよね? あの時はまだ仲直りしてなかったから仕方ないんだけど……でも、あんな寸止めみたいなことされて、僕、とっても、とっても悲しかった……その日、寮の部屋で、寂しくて泣いちゃったんだから……」
「……」
「おいくんとは仲直りできて、一緒に部屋に泊まったり、こうして一緒にまた楽しく遊べるようにはなったけど……やっぱりあの時の寸止めに関してはしっかり逆襲しておきたいと思って!」
「ぐっ……」
「だからね、だから……僕の痛みを味わってよ……今日は僕にやられてよぉ、おいくぅぅぅぅぅんっ!」
樹の気持ちを代弁するかのように、ガトリング水鉄砲が苛烈に水を放ち続けている。
まさかあの日の樹が、そんなことになってしまっていたとは予想外だった。
ひょっとすると、あそこでバイクを降りて、声をかけるだけで俺たちは容易に仲直りできていたのかもしれない。
ぶっちゃけ、今樹が言っていることは無茶苦茶だ。
だけど、俺は樹の親友で、コイツに酷いことをし続けてきたのは事実だ。
だったら……!




