第48話 男冥利に尽きる? デイキャンプ!
「あ、この間と水着が違う……?」
「気分変えようと思って、新しいの買ってみたんだ! どうかなぁ?」
花音が着ていたのは、純白のワンピースの水着。
とはいえ、腰骨の辺りが開いていてセクシーで、胸のあたりには可愛らしいリボンが据えられている。
セクシーさと可愛らしさを両立させた、花音の金髪碧眼をより強調させるとても良い水着だと思った。
……にしても、花音の水着姿は相変わらず凄い。
さすがは元モデルだけのことはある。
「へぇ、別の水着姿知ってるんだ? 前はどんなのだったの?」
フリフリのたくさんついた、すごく愛らしい水着姿の種田さんがそう質問を投げかけてくる。
「前の花音は青いビキニスタイルで……」
「ちょ、ちょっと葵くんっ!」
種田さんの質問にうまく乗せられてしまった俺は、花音の言葉で我に返る。
まさか、嵌められたのか!?
「ふぅーん、あんた達、すでに水着姿さえも見せっこする間だったのね。仲がよろしいことで!」
「た、たまたま! あれはたまたまだったんだよ! ねっ、葵くん!?」
「あ、おう……」
たとえ水着姿だったとはいえ、一緒にお風呂へ入ったなどいえようはずもない……。
ここは貝のように口を閉ざしておくのが得策だろう。
「と、ところで木村さんの水着は、なんかアスリートって感じがするね!」
さすがの花音もこの話題は避けたいのだろうか、樹へ話の矛先を向ける。
すると樹は苦笑いを浮かべた。
「あ、うん……僕、こういうのしか持ってなくて……この間、競技用のはもっと性能の良いのに変えたから、これはレジャー用にしようかなって……」
樹が身につけていたのは黒を基調とした、花音と同様のワンピーススタイルの水着。
花音のもの比べると、セクシーさや可愛らしさは皆無なのだが……
「なんだか木村さんの水着って、すっごくぴっちりしてるわね? キツくない?」
「競泳用はね、これで正解なんだ。水の抵抗を極力少なくするためにね」
そう、種田さんが指摘した通り、樹の水着はピッチピッチなのだ。
まるで肌に水着柄の塗料を塗っただけのような、それぐらい。
しかも樹は長らく消費カロリーが莫大な競泳を行っていて、しかもしっかりいろんなところが成長しているわけで。
花音とは方向性が違うが、かなり蠱惑的なスタイルというか……
「おいくん?」
「な、なんだよ?」
「……なんで僕から視線逸らすの?」
「ーーっ!!」
どうやらあえて樹の水着姿を視界の収めないようにしていることが、バレてしまったらしい。
かつての俺はとあるグラビアアイドルと、水着姿の樹を重ねて見て、妙な気持ちを抱くことがあった。
でも、そのせいで俺と樹の関係がを狂わせていた。
もう同じ轍は踏みたくはない。回復した樹との関係を、もう壊したくはない。
「やっぱり、僕も花守さんとか種田さんみたく、可愛い水着にすれば良かったかな……こんな地味なの変かな……」
樹は寂しそうな声を放ち、俯いてしまう。
そんな樹の態度は、仲直り前の彼女を俺に思い出させ、胸を詰まらせる。
もう樹のこうした寂しそうな顔なんて見たくはない。取り戻したこの良好な関係を壊したくはない。
だったら、変わるべきはーー俺自身!
「な、なんかその、水着……」
「え?」
「そういう水着の方が、樹って感じがして、似合うと思うぞ……?」
意を決してそう言った。
すると樹の顔が一瞬で真っ赤に染まりだす。
「そ、そっか……似合うんだ、えへへ!」
「ああ! THE樹って感じ!」
「じゃあ、これにして良かった……! たくさん褒めてくれてありがと、おいくんっ!」
樹に笑顔が戻る。やれやれだ……でも、やっぱり樹の笑顔が見られるのは嬉しい。
この笑顔をこれらも守って行ければと思う。
「でも確かに、種田さんのいうとおり少しキツそうだな。窮屈じゃないのか?」
「ちょっとね! でも、僕、おいくんと約束したから! 目指せオリンピックなら、これぐらいへっちゃらだよ!」
「んじゃ、金メダル獲得の暁には、しっかりインタビューの時頼むぞ」
「もちろん! 全世界に向けて、おいくんが僕にとってどれほど大事な人か……」
「ね、ねぇ、木村さん! その大きなバックは何!? なにが入ってるのかしら!?」
と、なぜか突然、種田さんが割って入ってきて、樹の持参した大きなスポーツバックを指摘する。
すると樹はにんまりとした笑顔を浮かべて、
「あっ、これはね! 海が近くにあるって聞いたから、こんなもの持ってきた!」
「「「なんじゃこりゃー!?」」」
俺に花音、そして種田さんも樹がバックから取り出し"銃型の武器の数々"に目を丸くする。
「これ全部水鉄砲! うちの部活ね、こういうの使ったレクリエーションをして遊ぶんだ。部活内の連帯感を図る的な。で、前にそのレクレーションで使ったものを借りてきたんだ!」
どっかで見たことがあるようなアサルトライフル型を筆頭に、ガトリング、弓、そして何故か傘のようなもの。
実に多様な水鉄砲の数々だった。すげぇな、こんなのあるんだ……! ガトリング、めっちゃかっこいい!
「せっかくだからこれを使って、水鉄砲合戦をしてみようかなって」
「合戦ってことは、ただの撃ち合いじゃないな?」
俺がそう聞くと、樹は笑みを浮かべつつ大きく頷く。
「ルールがあってね。このポイを体のどこかにつけて、相手の撃ち抜いたら1点て感じでポイントの多さを競うの。ちなみにポイは撃ち抜かれても、再度付け直して戦線復帰しても良いんだよ」
そう説明し、樹は金魚掬いの時に使うアレを見せてくる。
へぇ、これ"ポイ"って名称なんだ。初めて知った。
なかなかに面白そうなゲームだと思った。
樹はこの手の遊びが大好きで、昔と変わんないなぁ……だから俺はこいつと一緒にいるのが好きなんだよな。
「凄いね、木村さん! 面白そうだね! 私やりたいっ!」
なんとなく花音はこういうのが好きそうだと思ったが、予想通りのリアクションであった。
「ルールがちゃんとしていて良いじゃない。良いわ、やりましょ!」
種田さんも乗る気を見せてくれる。この人も、話してみればなかなかに面白い人のようだ。
なんとなく、これからも仲良くできそうな……?
「ん! じゃあ、さっそくやろう! で、各々に武器の決め方なんだけどじゃんけんで良い?」
「ラジャー!」
「良いわ!」
「おう」
かくして、俺たちは、おそらくこの"水鉄砲合戦"の勝敗を決めるであろう、武器選択のじゃんけん勝負に挑む。
俺が狙うは当然、ガトリング! 圧倒的な制圧力狙いである。
「それじゃ……じゃーんけーん!」
樹の発声で、運命の扉が、今開かれるっ!!




