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第47話 葵らしいキャンプを

「ぶっちゃけ、このグランピングってやつ、俺的にすっごく物足りないっていうか、つまんないだ……って、みんなと一緒にいるのが嫌とかそういうことじゃないから、誤解しないで欲しいんだけど……」


「そっか……でも計画の時から、なんとなくそんな雰囲気は感じてたなぁ、正直なところ……」


 俺の言葉から間髪入れずに、花音がそう発言してくれる。

おかげで、俺の本音のせいで場が凍りつく状況は避けられた。

 本当、俺のことを深く理解してくれている花音の存在はありがたいと思う。


「ごめん、せっかく色々と計画してくれたのに……」


「ううん。実は私もね、ちょっとだけ物足りないなって思ってて。お料理とか食材は素敵なんだけど、やっぱり考えて作る方が いいなぁって……ってことで! 明日は普通のデイキャンプにしないかな? と思いまして!」


「普通のデイキャンプを明日?」


「そそ! ここってね、普通のキャンプ場も併設されてて、そこでテントとかタープの貸し出しを行なってるんだ! だから明日はそれを使って!」


「それ、良い!」


 と真っ先に声を上げてくれたのは、樹だった。


「今日はグランピングで、明日は普通キャンプ……良いじゃない、面白そうじゃない。乗ったわ!」


 さすがは花音の親友というべきか。

種田さんも乗る気を示してくれる。


「ってことで、無回答は葵くんだけなんだけどどうかな? 先生?」


「もちろん、乗らせていただきますっ!」


「そう来なくっちゃ! さすがキャンプ好きの葵くんっ!」


「花音、ありがとう! 本当に!」


 俺の気持ちをくんでくれた花音へ心からのお礼を述べた。


「代わりに明日はいっぱい働いてよね?」


「いいとも!」


「よぉーし! じゃあ、今夜は明日に向けてかいさーん!」


 花音の一声で、キャンプファイヤーは終了となり、各々明日に備えて早めに休むこととなった。当然、俺はウッドデッキの山岳テントにて、1人で就寝である。


 先ほどまでの浮かない気分から一点、ワクワクが止まらない俺である!



●●●


 このグランピング場は、海浜公園の中にある。

よって、海岸に隣接していて、そこはデイキャンプーー日帰りキャンプーーの有名なスポットとして知られている。

というわけで!


「わぁー! 海ぃー!」


「久々にプール以外の水っ!」


「2人とも飛び出す前にちょっと待った!」


 と、海岸を前にして、飛び出そうとしている花音と樹を種田さんは止める。


「ちゃんと日焼け止め塗ったかしら? そのままだと真っ黒になっちゃうわよ?」


「水着になってから塗ろうかと!」


「僕も!」


「だったら少々お待ちを! その間は木陰で休んでてください!」


 俺は3人を横切って、海岸へ一番乗り。


 そしてレンタルをしたタープセットを、ドカンと砂浜へ降ろす。


 まずは風向きの確認。

緩やかな風が海側から吹き続けている。


 海岸でのタープ設営は風向きと同じ方向に建てるのが常識だ。

そうしないとタープが風に煽られ吹っ飛んでしまうのだから。


 これにて設営方針は確定。

そしてもう一つの確認事項に移ってゆく。


「やっぱペグはこれかぁ……」


 タープセットの中に入っていたのは、予想通り、なんの変哲もないプラペグだった。

 まぁ、海浜公園内のキャンプ場は普通の地面で、そこに設営することを想定しているのなら仕方ない。

普通のペグでは砂地では抜けやすいといった特徴がある。


「ふっふっふ……しかし俺を舐めるなよ!」


「どう舐めちゃいけないの?」


「っ!?」


 独り言に応答があり、驚いて振り返る。

燦々とした太陽の元、花音の金髪が俺の後ろで輝いていた。


「こ、木陰から出ちゃだめだろ!? 焼けちゃうぞ!?」


「ちょっとぐらいなら大丈夫だよ! なんか葵くんがなにかしそうだったから、興味湧いちゃって! 私になにかできることある?」


「じゃあ……少し大きめの石を6個くらい拾ってきてもらえる?」


「ラジャー!」


 花音は意気揚々と海岸へ繰り出していった。

早くしないと花音の雪みたく白くて綺麗な肌が真っ黒になっちゃうぞ。


 あ、でも、日焼けした花音も、ちょっと昔のギャルっぽくって良いかも……などとくだらないことを考えつつ、荷物の中から"こんなこともあろう"かと忍ばせておいた【サンドペグ】を取り出した。


 これはU字型をしたアルミ製のペグだ。

U字であるために断面積が広く、更に通常の30センチから40センチといった通常のペグよりも長いものなので、柔らかい砂地でも抜けにくい特徴がある。


 そうして俺は風向きと同じ方向へタープを広げ、サンドペグを使って固定してゆく。


「わぁ! もうタープが立ってるぅ! やっぱり葵くんってすごいねっ!」


 石拾いから戻ってきた花音は、あっという間に立ったタープを見つつ、感心してくれている。

ほんと、こういうリアクションは嬉しい。


「おかえり。早速だけど、拾ってきてくれたその石を刺さってるペグの上に置いてくれ」


「なるほど! 石の重みで、ペグが抜けないようにするんだね?」


「そっ! 海岸って風が強いから念のためにね」


「やっぱり、葵くんって頼りになるなぁ! ふふっ!」


 ただ石を置くだけなのに、花音はとても楽しそうだった。

もしかすると花音も、俺と同じくグランピングよりもこういうキャンプの方が好みとか?


「樹ぃー! 種田さぁーん! お待たせぇー! こっちへどうぞー!」


 ようやく俺たち専用の日陰も完成したことで、2人を木陰から呼びつける。


「相変わらずおいくん、設営の手際がいいね! かっこいい!」


「ふぅーん、香月 葵やるじゃない。この間の家族キャンプで、私たち、家族総出でタープ立てたのよ?」


 樹も、種田さんもベタ褒めしてくれて嬉しいような、恥ずかしいような……。


「んじゃ、早速脱いじゃおうか!」


 花音はタープの日陰の下で、シャツの裾に手をかける。


「ちょちょちょ、たんまっ!」


 慌てて背を向ける俺だった。

いくら、下に水着を着ているとはいえ、花音の生脱ぎシーンを凝視するわけには行かない。

 さすがの花音も、そこら辺はわかっているのか、何も言ってこず、ただただ俺の背中には衣擦れの艶かしい音が響いているだけだった。


「あいかわらず、かのの胸凄いわよね」


「ほんとだ、すごい……!」


「ちょっと、2人とも凝視しすぎっ! にしても、木村さんやっぱり、本物の女の子だったんだね、ごめん……」


「脱ぐと凄いじゃない、意外と木村さんのって。そこだけ王子じゃなくて、姫ね」


「そ、そお……?」


 とてもとてもてとても、背後から気になる会話が垂れ流されていた。

 樹、また成長したんだ。中学1の後半から、急激に発達し始めたもんな、あいつ……。


「あ、葵くん! もういいよ、こっちを見ても!」


 花音のお許しの声が響いてきたので、後ろへ振り返るため踵に力を込める俺。


 そこに見えたのはーー


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