表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

第3話 依頼は討伐、狙いは財宝

勇者パーティーの次なる依頼は――古代竜の討伐だった。


王都から北へ三日。霧に包まれた山脈の奥に、その竜は棲んでいるらしい。

依頼内容にはこうある。

『討伐報酬:金貨三千枚。副産物はパーティーに帰属』

副産物、つまり竜の巣にある宝は全部俺たちのものってことだ。


もっとも、勇者とエルフは「竜を倒して魔王討伐への足がかりに!」と燃えている。

俺は「竜を倒す」部分に一切興味がない。

狙いはただひとつ――竜が守っているという《炎帝の首飾り》だ。


首飾りは古代王国の至宝で、炎の魔力を宿しているらしい。

王家なら喉から手が出るほど欲しがるだろう。

つまり、高く売れる。


竜の巣に到着すると、勇者が剣を抜き、エルフが弓を構える。

俺は【職業模倣ジョブ・インパーソネイト】で宮廷魔術師に変身。

戦闘開始の号令と同時に、二人が竜に突っ込んでいく。


俺はというと……あえて戦場の外へ回り込み、竜の巣穴へ。

宝物庫を探すのは簡単だった。

溶岩の熱気と金属の匂いが漂う奥まった部屋――そこに首飾りはあった。


赤い宝玉を中心に、金の鎖が炎のようにゆらめいている。

魔力障壁が覆っているが、宮廷魔術師の知識をコピーした俺には関係ない。

魔法陣の逆起動を唱え、障壁を解除。

首飾りを外套の内ポケットへ滑り込ませた。


その頃、戦場では勇者が「トドメだ!」と叫び、竜の首を一閃。

巨体が地面に崩れ、山が揺れる。

エルフは矢を下ろし、額の汗をぬぐっている。


俺はタイミングを見計らって戦場に戻り、「遅れてすまない! 魔力を温存していた!」と息を切らせる。

勇者は「おお、助かった!」と信じ切っている。

……いい仲間だ、本当に。


首飾りのことは誰も気づかない。

竜の財宝は焼け落ちた、ということで話は終わった。


討伐報酬の金貨三千枚が分配される。

勇者は「資金を装備強化に使おう!」と言うが、俺は「必要経費だから」と軽く流す。


夜、野営の焚き火のそばで、俺は首飾りを取り出し、その赤い輝きを見つめた。

炎の光が宝玉に反射し、俺の顔を照らす。

……これは高く売れる。間違いなく。


異世界に来てから、もう二つの大物を手に入れた。

この調子でいけば、俺はこの世界で最も裕福な怪盗になれるだろう。


焚き火の炎が小さくなり、首飾りの輝きだけが夜の闇に残った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ