1話 出題編
魔女「早速出題よ」
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『Aさんは単独で宇宙船の中に居た』。
『宇宙船はこの時から問題終了時まで一度も着陸を行っておらず、別の宇宙船との連結が行われることもなかった』。
『2時間後、宇宙船の中には誰も居なかった』。
当然、『宇宙船の外は生身の人間が生存できる環境ではない』。
『問題開始時はAさんが単独で宇宙船の中にいた時』とし、『問題終了時はその2時間後、宇宙船の中に誰もいなかった時』とする。
Aさんはどこに消えた?
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魔女「私は、「Aさんは魔法で宇宙船外にテレポートした」と主張するわ」
レイ「問題開始時と終了時?」
魔女「時間が分かりにくくなるのを防ぐための言い回しね。問題開始時と終了時の間を「問題中」と言うわ」
レイ「確かに、「この問題の話の10年前にあったこと」とか言ってごまかされたらどうしようもないからね」
魔女「今回は最初の問題だし、優しい優しい魔女が復唱要求には積極的に応じるわよ」
ソラ「宇宙船から着陸もせずに脱出したのか…あり得なさそうだけどなぁ」
ルナ「[復唱要求:問題終了時、宇宙船の中にはAさんの死体は無かった]」
ソラ「いきなり怖いな!?」
魔女「応じるわ。『問題終了時、宇宙船の中にはAさんの死体は無かった』。Aさんは死んだからそれはAさんじゃない、なんて話では無いわよ」
ソラ「あっ…そういうことか…突然何言い出すのかと思っちゃった」
レイ「じゃあ一応補強しとこうか。[復唱要求:問題終了時、Aさんは生存していた]」
魔女「『問題終了時、Aさんは生存していた』」
ソラ「あっ、わかっちゃったかも!問題文にちょっと違和感を感じてたんだよね…[回答:宇宙船は問題開始時、地上に着陸していたため、Aさんは宇宙船から出ることができた]」
ルナ「え?着陸してないって問題文で言ってたじゃない」
ソラ「よく見て。「一度も着陸を行っておらず」でしょ?つまり、ここで言う「着陸」っていうのは行動のことだから、最初から着陸していれば問題文に反しない!」
勝ち誇っていると魔女がにやりと笑う。
魔女「残念、『宇宙船の外は生身の人間が生存できる環境ではない』に反するわ」
ソラ「あっ…」
レイ「いや、追撃しよう。宇宙船の外が毒ガスとか銃撃戦とかで生存できなかったのかもしれないから、それなら問題文に合うはずだ」
魔女「おっ。詰めてきたわね。これはちゃんと否定を出さないとダメね。『宇宙船の外には生存に十分な酸素が無かった』わ。これで否定できるわね」
ルナ「[復唱要求:2時間とはAさんから見た時間である]」
魔女「ずいぶん突拍子もない考えね。まぁ、宇宙船がでてるならおかしくないか。『2時間とはAさんから見た時間である』、ついでに『この問題中での時間の流れは全てにとって一定』」
レイ「あぁ、相対性理論だっけ?」
魔女「そんな学術的な知識は必要ないわ」
ルナ「あれ、というかこれそもそも…[回答:Aさんは問題終了時、船外活動をしていたため宇宙船には誰もいなかった]」
魔女「…あー…そう言えば潰し忘れてたわ。『問題終了時Aさんは宇宙船から十分離れた場所にいた』」
ソラ「確かに忘れてた。うーん…あ、これならどう!?[回答:Aさんは船外活動中に事故で宇宙船と離れてしまい、問題終了時には宇宙を漂流していた]」
魔女「それならこれで切るわ。『問題中、宇宙船には一切不具合はなかった』」
ソラ「切る?」
魔女「…否定するってくらいの意味よ」
なかなか行き詰まってきた。ここらで一度まとめておこう。
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『Aさんは単独で宇宙船の中に居た』
『宇宙船はこの時から問題終了時まで一度も着陸を行っておらず、別の宇宙船との連結が行われることもなかった』
『2時間後、宇宙船の中には誰も居なかった』
当然、『宇宙船の外は生身の人間が生存できる環境ではない』
『問題開始時はAさんが単独で宇宙船の中にいた時』
『問題終了時はその2時間後、宇宙船の中に誰もいなかった時』
『問題終了時、Aさんは生存していた』
『宇宙船の外には生存に十分な酸素が無かった』
『2時間とはAさんから見た時間である』
『この問題中での時間の流れは全てにとって一定』」
『問題終了時Aさんは宇宙船から十分離れた場所にいた』
『問題中、宇宙船には一切不具合はなかった』
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魔女の独り言
なかなかいい発想が飛び交ってたわね。
問題文の違和感も見落とさないとは、意外と難敵ね。
特にアレは肝が冷えたわ。
おかげで違和感のある返答になっちゃったけど…あとはそれに気づかないことを祈るだけね。
次回、解答まで一気に走り抜ける解答編、3日後の投稿になります。