第4話:この恋は偽物ですか?――本命婚約者とのラブバトル!
ルーク・グランフォード。
セレスティア様の“本物の婚約者”であり、この学園の中でもトップクラスのラブバトラー。
その彼が、私を見下ろしながら言った。
「……セレスティア、おまえがこんな地味なモブに恋をするとはな。くだらん、見え透いた茶番だ」
「ルーク、やめて。これは私の意志よ」
セレスティア様が静かに言う。でも、ルークの眼差しは冷たい。
「おまえが何を企もうと、関係ない。だが――“この男”が、おまえの心に触れるのは、看過できない」
「な……なんで私に矛先が来るんですか!?」
「おまえが“彼女の心に入った”と、感じたからだ。
それが恋であろうとなかろうと――俺の敵だ」
バァンッ!
ラブバトル・リングが召喚される。
学園中庭に再び現れるハート形のフィールド。観客たちはもう慣れたもので、席取り合戦を始めていた。
「なにこれほんと怖い!」
「バトル形式は、【恋愛力スパークリング形式】。相手を“恋愛的に揺さぶった量”で勝敗が決まる」
セレスティア様が耳打ちしてくる。
「……勝てるわけないじゃないですか。あっちは婚約者、私は“偽恋人”ですよ!?」
「だからこそ、あなたがこのバトルに勝てたら――彼に“認めさせる”ことができるわ」
「な、なにを!?」
「……私が、“誰かを好きになる自由”を、よ」
え、それ、今なんて?
でももうバトルは始まっていた。
バトル開始:梓 vs ルーク(恋愛戦力差 1:999)
「“守る”って決めたんです。だから、逃げません――!」
私が放ったのは、
《拒絶告白》!
偽りの好意や誘いを打ち砕く、精神の衝撃波!
だが――
「甘い」
ルークは片手でそれを払いのける。
「こちらから行くぞ。《本命への問いかけ:なぜ、彼なのか?》」
彼の目が、セレスティア様に向けられる。
それだけで、彼女の心がざわめく――バトルゲージが乱れるのが見えた。
《第三者の感情反応を利用した間接攻撃》が発動!
「卑怯じゃないですか!」
「これが“恋愛戦争”だ」
そんなの……こんなの……
「だったら私も――!」
私は一歩前へ出る。
目を閉じて、セレスティア様のことを思い浮かべる。
あの強がる笑顔も、冷たい瞳も、本当は誰より孤独を隠していることも。
「セレスティア様の気持ちを、勝手に決めるな!」
叫びとともに、心から溢れる想いが形を持つ。
新スキル解放:
《本気の嘘》
本当は偽装でも、“守りたい”という想いが真実になったとき、
相手に“本物の好意”として届く幻惑の一撃!
「私は……彼女が笑ってくれるなら、偽でもなんでも、恋人になってみせる!」
バァァァン!!
その言葉は、ルークの心を確かに揺さぶった。
相手の感情ゲージが乱れた
【嫉妬:15%】【混乱:40%】【動揺:30%】
ラブポイント、強制的にロス!
リングの鐘が鳴る。
「勝者――月宮 梓ッ!!」
ルークはリングの外で、黙ったまま立っていた。
静かにセレスティアを見て、ただ一言だけ残す。
「おまえは……あいつに、何を見ている?」
セレスティア様は小さく笑った。
「さあ、どうかしら?」