第2話:恋愛未経験者 vs モテ王子!? 初陣は告白でKOですか!?
「……えっ、私が戦うって……それ、冗談じゃないんですか?」
私は声を震わせながら、セレスティア様に尋ねた。だけど、その返事は容赦なかった。
「本気よ。今日の《ラブバトル演習》、あなたが代表として出なさい」
「む、無理です! 私、恋愛したことも、告白されたことも――」
「知ってるわよ。だからこそ、面白いのよ」
面白がらないでください!?
でも、逆らえるわけもなく、私はそのまま学園中庭の“ラブバトル・リング”へと立たされていた。
「対戦者、入場!」
観客席から黄色い声援が飛ぶ中、私の前に現れたのは……。
「ふっ、今日の相手はキミかい? 僕の愛の導火線に、火をつけてしまったようだね」
……誰だこのナルシストは。
「僕の名はフィオ・ラゼル。恋愛ポイント、学園内トップの25,000超え。恋人がいたことはないけど、告白された人数は67人。ちなみに今日も3件あったよ」
「なんでそんな情報を開示してくるんですか……」
「それが恋愛戦の礼儀だよ、ミス・初心者♡」
うっざい。
でも、うっざいと同時に、どこかキラキラしていて、心の中がざわつく。
《ラブフォース発動検知》――敵からの“好意的アプローチ”により、微量の恋愛エネルギーが発生しました
なにそれ!? ざわめいたら戦闘力になるの!?
「さあ、僕の攻撃だ。《告白スキル・君の瞳にラブ・クエイク!》!」
フィオが両手を広げて叫ぶと、ハート型のエネルギー波がこちらに向かって飛んできた!
「やばっ……!」
咄嗟に身をかがめる。直撃は免れたが、服の袖がちょっと焦げた。
「――集中して! 相手の言葉じゃなく、“本音”を見抜くのよ!」
観客席から、セレスティア様の声が飛んできた。
私のスキル……そう、《ストーカー・オブザーバー》!
目を閉じ、集中する。すると――フィオの頭上に、淡いピンク色のゲージが浮かび上がった。
【恋愛感情:45%(遊び)】【本気度:5%】【対象:自分】
【浮気性傾向:90%】【ナルシスト度:99%】
「なるほど……チャラ男ですね!」
「ひ、ひどい!?」
「でも、これでわかりました。そんな人に、私は――」
私は深呼吸して、初めて人の目を真正面から見た。
「好き、になんて……なりませんッ!!」
叫んだ瞬間、胸の奥から熱いエネルギーが湧き上がる。
新スキル解放:
《拒絶告白》――恋愛対象外と断言することで、相手のラブフォースを打ち砕く衝撃波を放つ!
バァァァン!
衝撃が爆風となってリングを駆け抜け、フィオの身体が吹き飛ばされた。
「ぐはっ……こ、こんな……“断られた”だけで……!!」
──勝った?
リングの鐘が鳴る。
「勝者、月宮 梓ッッ!」
信じられない。初めての恋愛バトルで……勝った……?
「……ふふ、やるじゃない」
観客席でセレスティア様が静かに笑っていた。
「でもここからよ。本当の“恋の戦場”は、もっともっと熾烈なんだから」
……嘘でしょう。まだ、始まったばかりなの?