第15話:召喚状と決断、恋が試される王宮の扉
朝。
学園にひときわ大きな馬車が横付けされた。
「……これ、王宮の正式な使者?」
「ええ。“あの夜”のことが、王家の耳に届いたのね」
セレスティア様は淡く微笑むけれど、どこか張り詰めていた。
《特命召喚状》
差出人:第三王子 レオニス=アルグレイ
内容:異世界より召喚された東野梓殿、およびセレスティア=レグルス嬢に対し、
今後の国家方針における諮問と、恋愛スキル適合に関する進展の確認を求める。
「……恋愛で、国家方針を決めるって。どうなってるんですかこの世界」
「そういう世界なのよ、梓。恋は――力。時に、戦争よりも影響を与える」
王宮・恋愛諮問室。
ゴシック様式の荘厳な部屋の中央に、ひとりの少年が座っていた。
銀髪に金眼。整った容姿に、気品すら纏う――第三王子、レオニス=アルグレイ。
「初めまして、異邦の者。君が“梓”か」
「は、はい……東野梓です。普通の女子高生でしたが、転生してきたら恋愛スキル世界でして……」
「要点はいい。僕が君に求めるのはひとつ」
レオニス王子は立ち上がり、梓を見下ろすように言った。
「セレスティア=レグルスを、国家に捧げる気があるかどうか――だ」
空気が、一瞬止まった。
「ちょ、ちょっと待ってください! セレスティア様は“もの”じゃありません!」
「理解している。だが、彼女は【恋愛王戦】における最有力適合者。
国家間の恋愛外交に使える“最終兵器”とも言われている」
「だからって……っ」
レオニスは梓の目を見据え、問う。
「君は、国家よりも彼女を選ぶのか?」
「それとも、彼女を守るために――“別れる選択”ができるか?」
沈黙。
梓の心に、揺れが生まれる。
セレスティア様は――
自分が抱えていたより、ずっと大きな存在だった。
自分の「好き」が、彼女を縛ってしまうかもしれない。
だけど。
「それでも、私は彼女の隣にいたいです」
梓は、しっかりと言った。
「私といることで彼女が傷つくなら、その責任も背負います。
セレスティア様が選んでくれた“未来”を、信じたいから」
レオニスの目が細められる。
「ならば――証明してもらおうか」
ぱちん、と指を鳴らす。
部屋の扉が開き、数人の従者が入ってきた。
「明日開催される《王都恋愛武闘会》。
そこで君の“恋の強さ”を、王族の前で見せてもらう」
「恋愛武闘会……?」
「愛の力で戦う。それがこの世界の真理だ」
セレスティア様が、静かに囁く。
「梓、ここから先は……本当に、命懸けになるかもしれないわ」
でも、私の答えは決まっていた。
「それでも、セレスティア様と一緒にいたい。
だから、やります。恋愛武闘会――参加します!」