表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/18

第14話:恋が目覚めるとき、傷ついた想いが力になる

「梓――!?」

矢の放たれた瞬間、セレスティア様の目が見開かれた。

けれど、彼女の前に立ちはだかったのは――


「ぐ……うっ……」

私、だった。


ほんの一瞬、無意識に体が動いていた。

それが“好き”って感情の力なのか、それともただの反射かもわからないけれど――


矢は梓の胸元で弾かれ、青白い光を放って砕けた。


「え……?」

「梓、今……あなたのスキルが……!」


セレスティア様が震えながら、私の手を取る。


《新スキル発現:恋盾ラブ・ガーディアン

恋心を代償に、最も大切な人を“無条件で守る”自動防御スキル

発動条件:命を賭けてでも守りたいという“覚悟”の成立


「恋のスキルって、こんなに……重いの?」

「重いけど、それはとても――美しいことよ」


セレスティア様は、私を強く抱きしめた。


だが、敵はまだそこにいた。

フードを脱いだその顔は――

王宮直属の〈恋愛統制官〉、カイン・ミルディナード。


「初対面だね。元・王配候補、セレスティア=レグルス嬢、そして“異邦の恋愛者”アズサ=ヒガシノ」

カインは静かに語り始めた。


「あなたたち二人の相性値は、あまりにも突出している。

王族を超える“適合率”を持つ恋愛体験は、世界構造を歪めかねない」

「それって……つまり……」


「君たちは、“愛しすぎてはいけない”存在だということだ」

にっこりと笑いながら、彼はナイフを抜いた。


「ここで恋が燃え上がるなら、まだ消せるうちに――摘む。それが僕の仕事なんだ」


「ふざけないで……!」

セレスティア様が杖を構え、光の矢を撃ち出す。

が、カインはそれを軽々とかわす。


「君の恋愛魔法も、分析済みだよ。次は、君の心を先に折る」


「やらせません……!」

私の声が響く。


心に浮かぶのは、セレスティア様の笑顔。

私にだけ向けてくれた、あのやさしい言葉。

震える手を握りしめる。


《恋盾:拡張モード 起動》

“共鳴防壁”発生――対象:セレスティア・レグルス、現在半径1m


「恋を、守るのは“正義”じゃない。

でも私は、あなたを守りたい。ただ、それだけです――!」


カインの攻撃は防がれ、彼は後退した。


「……面白い。君の恋は、まだ途中だ。なら、もう少し見守ろう」


彼は静かに退場し、空間から姿を消した。


残されたふたり。

沈黙のあと、セレスティア様が私の頬をそっと撫でた。


「……ありがとう。あなたに守られるなんて、思ってなかった」

「でも私……本当に、セレスティア様のことが……」


「――わかってるわ」

柔らかく唇が近づき、


ちゅっ。


額に、短く優しいキス。


「これが、私の“好き”の証よ」

「え……あ、額に……ってことは、次は……?」

「ふふ。楽しみにしていなさい?」


顔が、心臓が、全部熱くてたまらなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ