第11話:踊る二人に恋の波紋、ペアダンスバトル開幕!
放課後の中庭、特設会場に設けられた舞踏ステージ。
煌めくシャンデリアと浮遊する魔法の灯り。観客席には王族、貴族、学園関係者、果ては新聞部まで集結していた。
「え……えええ……? 本当に……踊るの、私たち……?」
梓の声はすでに裏返っていた。
「えぇ、そうよ。ルールに従えば、これは“恋人の資質を証明する神聖な行事”――
私たちが公式にペアであること、全校に示すチャンスよ」
セレスティア様は相変わらず微笑んでいて、
その右手をさりげなく差し出してくる。
「踊ってくださるかしら、梓?」
――“私と、恋人として”。
「……っ、はい……! 精一杯、やります……!」
緊張で足が震える。でも、それ以上に嬉しかった。
ダンスの競技は《ペアシンクロ率》で勝敗を決める。
つまり、息が合っているかどうかがすべて。
「最初はワルツよ。ステップは基本だけど、バランスが命。ついてきて」
セレスティア様の手が、梓の腰にそっと添えられる。
(あっ……近い……近すぎる……顔が……顔が……女神……)
意識が吹き飛びそうな中、音楽が始まった。
♬ タン、タン、タタ――
「一歩、回って。そう。次、ディップ」
「ひゃあああ!?」
ぐいっと倒され、見事なまでのディップ(反り)体勢に。
客席からは歓声が上がる。
「――見せてごらんなさい、梓。あなたの“恋”の覚悟を」
「セレスティア様っ……私、頑張りますっ!」
もう逃げない。目を閉じて、次のターンに集中しようとした――
その時。
セレスティア様の唇が、そっと、私の額に触れた。
(……え……)
「あなたのその一生懸命さ、可愛くて仕方ないわ」
甘やかな囁き。会場の魔力検知水晶が、鮮やかに発光する。
《ペアシンクロ率:98%》
「うおおおおおお!?」
会場が歓声とどよめきに包まれた瞬間――
「ふふ、やるじゃない」
後方から静かに歩いてきたのは、リシェルだった。
「ですが、お姉様の愛を試すのは、ここからが本番ですよ?」
彼女のペアは――まさかの兄、ルーク。
「セレスティア様に釣り合う人間は誰か、それを今度こそ示します」
妹VS彼女の、愛と誇りをかけたバトル第2ラウンドが始まる――!