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神代物語  作者: J・WEST
4/4

予算編成と写真集・下

パシャ!

キャーキャーッ!

パシャパシャ!!

ワーワー!


まだ建てたばかりの真新しい体育館に鳴り響く歓声と撮影音。


俺達生徒会改めコスプレ団うぃずメイド服は体育館のステージで写真撮影会を敢行していた。


お客さんはわんさか入っている。生徒は一年から三年まで。はてには先生までいる始末。


なるほど。

こうこうことね。

確かにこれなら襲われないでしょうな。


ちなみにこの撮影会?はファッションショーのようになっていて、一人一人順番に舞台に上がりポーズをとり帰って行くのだ。

他の人は舞台袖で待機。


どんなポーズをとるかと言うと…


「さぁ、さらら嬢にはネコさんのポーズを取って頂きましょう!!それでは三、二、一…どうぞ!」

「に、にゃー?」


会長の指示なんだ。コレが。


しかも会長の声はアナウンサー的な声に変化していて、コレが騒々しい体育館内によく響くこと響くこと。


声が変わるのは会長の特技の一つで、自分では七色の声なんて言ってる。


全く、どんな声帯したら男が女声出せるんだよ…


と、それよりも今はさららに注目。


あぁ…さらら。

その身に付けた二つの吉備団子、さららが屈むのに合わせぷるぷると揺れる。


しかも両手はぐーにして顔の横につけてるものだから更に強調されることに。


正直、鬼ヶ島だろうと何だろうとついて行きたくなってしまいます。はい。


なんとこう思うのは俺だけではないようです。


「にゃー」


ポーズを少しずつ変える度にメイド服がひらひら。お団子がゆらゆら。


観客の女性達からは羨望の溜め息が。


野郎共からはゴクリと喉を鳴らす音が聞こえてくる。


なんてアホな企画。

はぁ…


「やぁ、マイハニー。溜め息ついていると幸せが逃げてしまうよ?」


キラーン。


隼人さんの白い歯が眩しい。


「マイハニーて…。言ってて虚しくありませんか?俺、男ッスよ?しかも後残ってるの俺と隼人さんだけだし…」


「なぁに、君の美しい姿が見れるとあらばこんな程度の苦労など、なんのその。あぁ、君が羞恥に頬を赤く染め、身を隠している姿を想像するだけで僕は、僕は!」


悦った表情を浮かべ自分の身をかき抱く隼人。


彼はもう、末期かも知れない。


ごめん、孝治。


あなたのお兄さん、もう駄目…



と、なんとも益体も無いこと考えてると隼人さんも呼ばれてしまった。


「次の登場は王子様、隼人様です!」


きゃー!!


再びあがる歓声。


かなり黄色い。


全く、本当に羨ましいよ…


ファンクラブの皆さんがスタンバってんだろうな。


はぁ…


「あぁ…ハニー。僕も呼ばれてしまったよ。別れるのはつらいけどもう行くね?」


そっと涙を拭う。

そんな何でも無いことが様になっている。


「なに言ってんですか…ファンの皆さんが泣きますよ?」


「ふふ。彼女たちだって祝福してくれるさ。じゃあね、僕の姿を見ててね!」


そう言い残し、隼人さんは舞台に入っていった。


そうですよ、きゃー、きゃー騒がれてますよ。


羨ましくなんかない。決して羨ましくなんかないもん!


…あれ?目から汗が。


「ではNo.1の隼人さんには…」


体育館に会長のアナウンスボイスが流れる。




…っとに、この人たちは。


分かってるんだ。


本当は。


これが、俺やさららのためにやってるってことぐらい。

俺たちは妖怪半分、人間半分の半端者。

いわゆる半妖と言うヤツだ。


故あって人間に組する者だ。


だが、半妖が人間の世界で生きていくのには多少の齟齬が発生する。


さららなんて元々大妖の子だから力が半端じゃない。


今でこそ、妖力を抑え、力をセーブするすべを学んだが、昔は加減が出来ず、苦労した。


そのたびに俺が狐の幻想で誤魔化していた。


さららだけじゃない、不都合があったのは俺だってそうだ。


未だに妖力が暴走し、俺の意識しない所で勝手に"変化"してしまうことがある。


俺たち結構危ない橋を歩いているんだ。


だから、会長はこんな一見変な大会を開いたんだ。


…いや、一見だけじゃなく、中身も変なんだけど。


ともかく、これで俺の"変化"した姿が学校に広まれば、それが学校の普通の状態になる。


変化の瞬間さえ見られなきゃ、女の姿でいても大丈夫になるんだろう。


…たぶんそのうち、女の学籍が出来るんじゃなかろうか。


会長が、理事長と組めば無いことは無いだろうと思う。


うん、現実を直視したくなくて遠まわしな表現をしました。


事実を述べます。


確実にあるでしょう。



うぅ…。


あまりのイヤさに涙が。


なんか最近こんなことばっかり。


いや、ここはプラスに考えてみよう。


ふふふ。いつまでも悲劇のヒロインやってらんねぇのさ!


見たか、会長!


…。


と、そうなるとさららのサポートのが楽になる。


いちおー色々考えているんだ、彼ら生徒会メンバーは。


まぁ、多分に趣味というか、暇つぶし的な要素が入っているだろうが。


なんだかんだ。


いい人達なんだ、彼らは。


だから、手伝ってやろうかって気にもなる。


「…さん、ありがとう御座いました!お次はなんと生徒会新メンバー」


お、俺の番か。


新メンバーのくだりで観客がどよどよしている。


今までそんな話していなかったからな。


寝耳に水というヤツだろう。


「しのちゃんでーす!」


おし!


行って来ますか。


俺は一つ気合いを入れ、スポットライトが輝く、ステージの中へと歩を進めた-





☆★☆★☆★☆★☆


それは。


唐突で、衝撃的だった。


誰もがそのどこか幻想的な美しさに見とれ、ぼーとしている。


何百人という人間の視線をその一身に浴びた少女は、ほのかに頬を朱く染め、アナウンスの質問に答えていた。


内容は簡単な自己紹介のようなものだったと思うが、誰も聞いちゃいなかったろう。


その少し蒼みがかった髪はスポットライトの光を受け、星空のように輝いていた。


それだけじゃない。


染みやほくろ一つ無い白磁のごとき肌に、すらっと伸びた美しい足、細い腰、大きな胸、切れ長な髪と同色の瞳、小さな顔。


彼女を構成するパーツ全てが完璧だった。


一目惚れ、というヤツだった。


でもそれは、叶わぬ恋。


自分なんか、彼女にふさわくない。


しかし、しかし。


自分は彼女が欲しい…






☆★☆★☆★☆★☆

俺は今、学校の体育館のステージの上で絶賛自己紹介中で御座います。


会長の質問につっかえながらも話ているところでなのです。

前を見れば大人数の生徒の皆さんが楽しんでいたはずなのですが…



やべー!


なんだこの空気。


誰も何も言わない。


観客の皆さん、お前誰だよ、的なこと思ってんだろうか。


皆さん、ポカーンと変な顔してる。


俺、そんなおかしな顔しているだろうか。


この顔は氷雨のだからわりかし…いや俺の主観ではかなりの美人だと思うのだが…


どうもこの主観と客観に違いあるらしい。


ま、顔の造作なんてな。


どの時代に生まれたとか、個人の趣味が大分あるからな。


気にしなくてもいいか。


あー。

めんどくなってきた。

とっとと終わらないかな…


「いやーそうですか~!苺大福がね~。…おっと、もうそろそろ時間ですので、最後にしのちゃんにはみんなに一言お願いします!」


む。


やっと終わったか。

結構聞き流した気がする。


そりよりも、最後に一言?だっけ?


どうすっかな…


まぁここは無難に


「えと、皆さん、生徒会の緊急企画にご参加ありがとう。感謝する。私たちともどもより良い学校を目指し、誠心誠意あなた達に尽くしていく所存だ。今後ともよろしく頼む」


まぁ無難な感じだろう。


敬語を使おうかとも思ったが、使い慣れてないのを急に使ってもしょうがないと思ったから素のままにした。


うん。

なんとかなるだろう。


「はい、ありがとうございました。いやいやかっこいいですね。…ではこれで臨時大会を終了します!」


ざわざわがやがや。

まだ生徒達の興奮覚めやらぬなか、この御披露目会に幕が降りる。



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