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ジュウニントイロ  作者: 御萩
第二話フジノヤマイ
6/14

フジノヤマイ #1夢見る少年

ジュウニントイロ第二話はここから始まります。

以前投稿したものと全く同じだと前から読んでくださっている方々に申し訳ないので今回から若干話を変えていこうと思います。

目が覚める。


視界に入るのはいつもと変わらない真っ白な天井。

たなの方を見ると、時計の針は10時半になろうとしていた。


ーどうやら、いつもよりも早く起きたみたいだ。


ぼくはとびらの方に顔を向け、再び眠ろうとする。


ーどうせ起きる意味なんてないから、目が覚めなければいいのにー


すると、背中側にある窓の方から小鳥のさえずる声が聞こえ始める。


ー最近よく来るけど、うるさいなあ…ー


ぼくは両耳に手を当てる。


しかし、だんだんと音が大きくなる。

そのうち、鳥の声なのかなんなのかよく分からないものまで聞こえてくる。


「………うるさいっ!」


ぼくはベッドから出て、鳥をおいはらいに窓に向かう。


ガバッ


窓を勢いよく開いて鳥を追いはらおうと思っていたが、次のしゅん間、信じられないものを見た。


「…えっ…」


頭に輪っか、体から翼の生えた僕と同じくらいの子が、空中でハープのようなものを演そうしていたのだ。


「おや、こんにちは。」


その子はぼくに気付いたのか、ぼくの方を見て、言った。


「初めまして。僕は天使。寿命と代償に願いを叶える存在さ。」


天使と名乗るその子はニコッと笑いながら言った。


*


バタン


「…疲れてるのかな…」


ここは四階、窓の外に誰かいるわけないじゃないか。


きっと、最近の検査で疲れてげん覚を見てるだけだ。そうじゃないなら…


「…ひどいなぁ…。いきなり閉めることはないじゃん。初対面でしょ?」


スゥーっとさっきの子が窓を通り抜けて入ってきた。


うん。疲れてるんだな。寝よう。


ぼくはベッドに入り直し、目を閉じた。


「え?無視?見えてるでしょ?」


…何やら暑苦しい気がする。


ぼくはおそるおそる目を開けた。



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「うわああああああ!!!」


目の前にさっきの子の顔があった。

ぼくはげん覚をかき消そうと手を払う。


ペチッ


「痛っ」


えっ……さわれる……


「…もー…見えてるなら話進めるよ?」


うん。夢か。


ぼくはそう納得して体を起こす。


「さて、キミは僕が見えるという事は残念ながらキミは一週間以内に寿命を迎える。ただ幸運にも天使であるこの僕を見つけられたキミは願いを叶えることができる。…残りの寿命と代償にね。」


…なんか夢のわりには嫌な設定だな。タダで願いかなえてくれたっていいのに。


「あの……すみません。どうせ夢なら、タダで願いかなえてくれてもらってもいいですか?」


ぼくは天使と名乗る子に言う。


「夢じゃないって!……まあ、信じてもらえないのも無理ないけどね。」


天使と名乗る子は不満そうに言った。


「じゃあ早速だけどキミの願いはなにかあるかい?」

「とりあえずまぶしくて眠れないんで、光るのをやめてもらってもいいですか?」

「失礼な子だな!別に好き好んで光ってるわけじゃないわ!」


天使はほっぺをふくらまして言う。


「…初対面で名前も名乗らずに布団にはいってくる人に失礼とか言われたくないです。」

「むぐっ⁉」


天使は突かれたくないところを突かれたのかほっぺをふくらましながらこっちをにらんでくる。


「……特別だからね!僕はイロ!…天使長であるこの僕が人間に名乗らされるなんて…!」

「別に名乗れとは言ってないです。」

「ほへ⁉」


イロと名乗る天使はすっとんきょうな声を出す。


「ぼっ……僕の名前なんてどうでもいいんだよ!……さあ、僕は名乗ったんだ!キミも名乗るのが礼儀ってもんだろ⁉」

「だから名乗れとは言ってないです。失礼なのはあなたでしょって言ったんです。」

「んぬぬ!」


この子、おばかさんなのかな。

でもずっと光られると邪魔だし、ぼくも名乗ればどっか行ってくれるだろうか。


「…仕方ないですね、ぼくは橙歩だいだいあゆむ。これで満足ですか?」

「うん!満足満足!」

イロと名乗る天使はにこにこしながら言う。

「で、願いは決まったかい?」

「はい。」

「おっ⁉なんだいなんだい?」


天使は目をかがやかせながらこっちを見る。


「まぶしいので光るのをやめてください。それが無理なら、どっか行ってください。」


ぼくはにこにことしながら言い返した。


「…はぁい…」


天使はしぶしぶ窓から出て行った。


「変な夢だなぁ…まあ寝ればさめるか!」


ぼくはようやく布団にはいることができた。


***


目が覚めた。


時計を確認すると、3時半をすぎていた。


ーそろそろ来るだろう。


ぼくは体を起こす。


ーどこからともなくタッタッタッと走ってくる音が聞こえてきた。


ダァン!


「おーいあゆむー!サッカーしようぜー!」

「…もう少し静かに行動できないのかな、きみは。」


勢いよくドアを蹴り飛ばしてきて入って来た、三葉翔(みつはかける)はお構い無しに続ける。


「そんなことゆーなよー!オレとお前のなかだろー?」

「となりには他の患者さんもいるんだ。さわいでたら迷わくだろ。」


翔はまあまあと言いながらぼくのベッドにもたれかかる。


「…悪いけど今日もサッカーは無理かな。ごめん。最近ほんと体調よくなくて…」


根っからのサッカー少年である翔には本当に申し訳なく思う。


「そっかぁー…仕方ないな、今日はなにして遊ぶか?」


こんな風にいつも本当はサッカーをやりたいはずなのに、いつもぼくに合わせてくれている。


「……ごめん。」

「そんな気にすんなって!」


翔はニカッと笑いながら言う。

本当に翔はいつも元気だ。うらやましいくらいに……。


「…ならさ、ひさびさにしょうぎ、やろうぜ!歩アホつえーけどオレもけっこー特訓したからな!今日は負けねーぞ!さっそく借りてくる!」


翔はそう言ってドアをこじ開けてまたタッタッタッとどこかへかけてった。


「相変わらず元気ね、翔君。…歩君、何か食べる?今日はお昼寝してたみたいだったからお昼、まだ残ってるわよ。」

「ありがとうございます。寺島さん。…ヨーグルトってありますか?」

「そう言うと思って、とっておいたわよ。はい。」

ぼくの専ぞくかんごしである寺島さんはぼくの好物であるバニラヨーグルトをポケットから取り出す。

「ありがとうございます!…じゃ、いただきます。」


ぼくはスプーンを使ってヨーグルトをほおばり始める。


ダァン!


「あゆむー!しょうぎセット借りてきたぜー!さっそくやろー!」


「……少しはぼくの言うことも聞いてくれないかな。」

「別にいいのよ、これぐらい。子供は元気にするのが仕事だわ。…でも翔君、今歩君はお食事中だから少し待っててくれないかな?」

「これぐらい大丈夫ですよ。翔、ハンデはやっぱり4枚落ちがいい?」

「今日のオレはひとあじちげぇぜ!2枚落ちでやってやる!」

「…いばれることじゃ、無いけどね。」


翔が将棋盤を広げる。

ぼくはいつものように歩兵から打ち始める。


***


「ぐぬぬ………」


翔の王がすみへと逃げ込む。


「えい。」


ぼくのと金が翔の王の前に立ちふさがる。


「……だああ!まけだー!!」


翔は頭を抱えながら言う。


「やったね、ぼくの勝ちだ。」

「くっそー!また負けたー!あゆむつえーなー!」

「まあそれもあるけどね…」


ぼくは翔のものだった飛車と香車を手に取る。


「翔はじょばんからこういう駒で攻めすぎ。移動がはやくて便利かもしれないけど、相手に取られることも考えなきゃ。」

「…だってよー…飛車つえーじゃんかよー…」


翔は口をすぼめながら言う。


「それはそうだけどね。」


ぼくは今度は歩兵を手に取る。


「強い駒にしか目がいってないから、こういう駒に足元をすくわれるの。」


翔は、ぐでんとねっころがる。ぼくのベッド…。


「翔はやっぱうめーなー!そーゆーよえー駒の使い方かた!」

「…まあね。」


ぼくは歩兵を窓の方にかかげる。


「歩兵は全ての駒の中で最弱だけど、少しずつでも前に進めれば、いつしか強くなる。最強とは言えないけれど、そういった相手に対して油断するのはきんもつだよ。」


ぼくは歩兵、飛車、香車を片付ける。


「でも翔もだいぶ強くなったねー。翔の戦法でもその油断さえなければもう少しいい線いくかもよ?」

「ほんとか!」


翔は頭をがばっとあげる。


「うん、本当だよ。」

「よっしゃー!今度は負けねーぞー!」


翔は嬉しそうに言う。


「二人とも、はい。お茶よ。」


寺島さんがお茶を持ってくる。


「ありがとうございます。……あれ?もうこんな時間?」


時計を見ると5時を過ぎていた。

もう外もオレンジ色だ。


「あら、本当ね……」

「しゃーねーか………」


そう言う翔の表情は妙にそわそわしている。


「じゃーなー!また明日なー!」


そう言って翔はドアを


ダァン


と蹴破って帰って行った。


「……あの子は本当に元気ね。」

「ええ、まあ……」


ぼくは寺島さんといっしょに翔が開けっぱなしにしたドアを見る。


ーこの病院は個室で1日約2万円もする。


だから、他の患者さんに迷惑にならないように静かに帰って欲しいんだけどなぁ……


「じゃあ私も夕飯の準備があるからそろそろ行くわね。歩君、食堂行けそう?」

「はい。大丈夫です。」

「良かった!じゃあまた夕飯の支度が出来たら呼びに来るわね!」


寺島さんもそう言って部屋から出て行った。


「…はあ。」


一人残ったぼくは部屋でため息をついた。


「いつか翔に負ける時がきちゃうのかもしれないなあ…。」


窓から見える夕焼けを見ながらぼくはそうつぶやいた。


「…どうだろうね。……もしかしたらその時は永遠に来ないかもしれない…」

「え?」


振り返るとさっき夢で出会った天使がいた。


「いい試合だったよ。歩くー

「うわああああああ!!!」

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