タベルモノ #4あらたななかま
久々の更新になってすみません!お待たせしましたが続きになります!
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「いおさん!なんかいる!」
カオルの声が聞こえる。
前の方に視線を向けると明らかに人の気配がする光が見える。
「………ついたのかい?」
「…ああ。ここが俺達の住む街だ。……まあ、廃墟になってたのを勝手に拝借して住処にしてるだけなんだがな。」
宮川蓮はどこか後ろめたさを感じる声でそう言った。
宮川蓮が案内した集落はすでに一つの街のようになっていた。
あの事故から二週間足らずでよくここまで発展させられたな、と僕は思った。
「あっ!レン!おかえりー!」
こちらに気付いた少女が言った。それにつられて家から子供達がわらわらと出てきた。
「あぁ。ただいま、ミサ。」
「おにく、あったー?」
「レンさん、ちょっとは休みなよー!」
「そのコはだれ?」
帰るなり質問攻めにあった宮川蓮は慌てた様子で言う。
「ちょっと待てお前ら!一人ずつ喋ってくれ!……まずはミサからだ。」
一瞬の間があり、宮川蓮は口を重くして続けた。
「残念だが、今回は何も食べれそうなものは手に入らなかった。すまねぇ。」
「……そっかぁー…まあ、レン、さがしにいってくれてありがとね!」
対して失望する素振りも見せずに明るく返すミサを見て宮川蓮はやや救われた表情を見せた。
「あぁ!……次は必ず取ってくる。」
「次に秀、労ってくれてありがとな。この後はしっかり休むよ。ー後は……」
「レン、そのコはだぁーーれぇーーー」
「わかったわかった華炎。この子はカオル。今日からお前らの仲間になる。カオル、自分であいつらにお願いします、って言えるか?」
「うん!!」
突然話を振られたにも関わらずカオルは元気に返事をして子供達の方を向いた。
「かおるはね、きそらかおるっていうの!よろしくね!」
カオルは元気いっぱいに子供達に言った。
しかし、ハナビと呼ばれた子が再び言い放った。
「レン、ボクがききたかったのはこのこじゃないよ。そっちのおくでとんでるコ。」
ハナビが言い放った一言はその場を一瞬完全に沈黙させた。
この子は僕を認識している。そういう事はつまり、この子もそうなのだろう。
「確かに。レンさん、奥の子は誰なのー?」
ハナビに続いて秀と呼ばれた子も僕に言及する。
僕が口を開こうとしたとき、宮川蓮は僕を遮って彼らに向かって話した。
「…この子はイロだ。この子も今日から仲間になる。お前ら、仲良くやれよ。」
「…………初めましてかな。イロだよ、よろしく。」
僕が宮川蓮に合わせて挨拶すると秀が気持ちのいい笑顔を見せて返す。
「初めまして!よろしく、イロさん!あと、カオル君もよろしくね!」
「…………ボクは華炎。華やかの華に、炎ってかいて華炎。……よろしく、イロ、カオル。」
続いて、ハナビも自己紹介を返した。
「よろしく!はなびちゃん!ーあとは、えぇと…」
「僕は秀だよ。それと僕の後ろにいる子がミサ。よろしくね、カオル君!」
「!うん!!よろしく!しゅうくん!みさちゃん!」
カオルは明るい笑顔で返した。
しかしー
「ねぇ、シュウもハナビもなにかみえてるの?イロってこ、どこにいるの?」
ミサが僕の存在に疑問を呈す。
つまり、ミサには僕が見えていないことがミサの口から発せられた。
「カオル。シュウもハナビも、レンも、なにがみえてるの?」
ミサがカオルに問いかける。
僕は安堵を覚えつつも秀やハナビに対して僕の存在をどうしようか考えていると、宮川蓮が代わりに答えた。
「…………この子は……いい子にしか見えないんだ。サンタさんと同じで、いい子にしてないとイロは見えないぞ。ミサ。」
宮川蓮の言葉にカオルは驚いた表情を浮かべる。そしてそのまま僕に視線を向けたので僕は適当にうなずいた。
「レン、ひどぉーい!ミサがわるいこだっていうのー!?」
「あのなミサ、秀が毎晩火起こし用の薪を集めに行ったり、華炎が毎朝みんなのために川に行って水を汲んできているが、お前は何かしていたか?」
「え?ミサはみんなとなかよくなるために、おはなではなかんむりをつくってりみんなをあそびにさそっているけど?」
「…………そういうところだぞ、皆お前が思っているほど暇じゃないし、忙しいんだ。」
「えー!」
ミサと宮川蓮がギャーギャー言い合っている間にカオルが僕に聞いてきた。
「いおさん!かおるっていいこなの?」
「あ、あぁそうさ。カオルはとてもいい子だよ。」
「でもかおる、かおるずっとにぃにをひとりにしてるし…」
「………きっとキミの兄さんは、キミがどこかで一人ぼっちになったりせずに元気にしてるのが一番嬉しいはずさ。だからカオル、キミはお兄さんにとって一番のいい子だよ。」
「ほんと!?えへへぇー」
カオルの顔がにんまりとほぼれ、カオルは照れたように笑った。
「…あの、イロさん?」
秀が小声で僕に耳打ちした。僕も彼にだけ聞こえるように声を抑える。
「どうかしたかな、秀君。」
「………レンさんのさっきの様子がおかしかったってのもありますが、見た目からして明らかに人では無いですよね?華炎とミサをうまくごまかしたのでしょうけど、あなたは一体なんなんですか?」
「…初対面の相手にする言葉遣いではないね。」
僕が指摘するも、秀は変わらず疑念の目を向けてくる。
「質問に答えてください。…僕は彼女達を守らなければいけないんです。」
「…そう………心配せずともキミにはいずれ話すよ。」
「ちょっと……!」
僕は秀にそう言って宮川蓮の方へと向き直る。
「子供相手にいつまで口喧嘩してんのさ。とっとと波治って人に案内してくれ。」
「ったく………あ、あぁすまない。こっちに来てくれ。」
宮川蓮は廃墟の奥の方へと歩みを進める。
「カオルもおいで。」
「うん!」
僕はカオルの手をしっかりと握りしめて後に続く。
***
「ここだ。」
宮川蓮は一つの廃墟の前で立ち止まった。その家はかなりボロボロで、人の気配はとても感じられなかった。
………いや、もしかしたら中に生きている人はいないのかもしれない。
ギィ…
古ぼけた扉を開けて足を踏み入れる。内装も外見と変わらず、寂れてガラッとしていた。
少し廊下を歩くと奥にうっすら光が見えた。
「……波治さん、レンだ。………悪いが食えるような動物はこの辺りにはいなかった。」
「…………そうか………ご苦労、だったな。」
宮川蓮の呼びかけに対し、返ってきたのはしわ枯れた掠れ声だった。今にも消えてしまいそうなその声からは残された寿命が僅かであることを鮮烈に感じ取れる。
「…だが、一人彷徨っている子供を見つけたんだ。この子も俺達の仲間に加えてはやらねぇか?」
「………勿論だ。………明日から一緒に、仲良くしなさい。」
「うん!かおる、がんばる!!」
「!ーカオル!波治さんの前ではもう少し声を落としてくれ!」
宮川蓮はカオルに小声で注意する。
「あ、ごめんなさい……」
「……構わんよ……子供は元気なのが、一番だ。」
波治はかすれた声でカオルをなだめ、こちらを向いて重い体を起こした。
…思ってた通りの老体だ。剝げかかった白髪に、小柄で貧相な体。あらゆる要素が余生の短さを表している。
こんなのでよく、集落を形成する事が出来たな、と僕は思った。
「…これからよろしくね、カオル君……」
「よろしく!なみじさん!!」
カオルが元気いっぱいに挨拶すると波治は大きく笑った。
「ハッハッハッ……!…………本当に元気だな、君は。……さてー」
波治は僕の方へと向き直る。
「…君は誰の死迎え人かな、……明るい少年君。」
やはりこの人には僕の存在は認知できるようだ。
僕は大きく息を吸って答える。
「初めまして、波治。僕は見ての通り天使、願いを叶えるだけの存在さ。宮川蓮に連れられてキミの願いを叶えにきたけれど………」
波治は首を振った。
「…私にはもう、願いなぞ無い。…………強いて言うのなれば、集落の皆が欠けることなくこれからの社会に復帰できること、くらいかの。」
波治はやや含みのある口調で僕にそう言う。しかし、宮川蓮が口をはさむ。
「波治さん、待ってくれよ!………あんたが俺達を見つけてくれなきゃ、俺達は空っぽのまま何処かで野垂れ死んでいたんだ!ーー何もなかった俺達を集めて生きる意味をくれたのはあんただろ!あんた一人先に行ってしまったら、俺達は、どう生きていけばいいんだよ!!」
「蓮………私が皆に手を差し伸べたのは、ただの自己満足だ。…何も成し得ることのできなかったこの生涯に、ただ一度英雄になりたいという、言うなれば私のエゴだ。………すまない。今のはお前たちにとって言葉足らずだったな………………とにかく、皆を導くことが出来た私は、穏やかに余生を終えるつもりなのだよ。」
「…………!!」
宮川蓮は言葉に詰まっている様子だった。
話を聞くに、宮川蓮やさっきの子達にとって波治は集落をつくってくれた恩人なだけでなく、何らかの形で彼等に生きる意志を与えてくれた人なのだろう。そんな恩人が間もなく死ぬ上、心残りもないとなれば言葉が出てこないのも無理はないだろう。
「…だったらよ………その余生でせめて俺達を見ててくれよ。あんたが見つけ出してくれた俺達が、成長していくところをコイツの願いの力でー」
「…僕の力じゃ寿命を延ばすことは出来ないよ。宮川蓮。」
宮川蓮は驚いた顔で僕の方を振り向き、途端に落胆の顔を見せる。
「……僕の願いの力は、発動者の寿命と引き換えに願いを叶える。……だから波治に僕の力を使ったとしても、寿命を延ばすことは出来ないんだ。」
「そんな…………ならー」
「『なら俺の寿命を使って波治さんを延命させてくれ』、とでも言いたいのかな。その願いは波治が望むものなの?彼はさっき『集落の皆が欠けることなくこれからの社会に復帰できること』を唯一の心残りに挙げていた。その『皆』にはキミも入っているんじゃないの?宮川蓮。」
「…………」
宮川蓮は再び言葉に詰まった。
「…………だったら何で、お前はここまでついて来たんだよ………………お前が見えている以上は、俺も近々死ぬんだろ?」
「さっきも言っただろ?カオルの家族を探すのを手伝ってもらいたいんだ。それにー」
僕は話の蚊帳の外になっているカオルを撫で、続きを話す。
「天使である僕がいれば、本来の寿命の死因を回避できるかもしれないからね。」
お読みいただきありがとうございました。
今回の第三話はクリスマスあたりまでに終わらせられればいいなぁ思いながら頑張って執筆しようと思います。




