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ジュウニントイロ  作者: 御萩
第三話タベルモノ
13/14

タベルモノ #3あらたなであい

更新遅れてすみません!

第三話の続きになります!

ザッ


相手の声が届くや否や、僕は身を翻し、臨戦態勢になる。

ー何者だ?ここに降りる前に周囲の確認、警戒は確実に行った。いつからここにいた?ー

様々な思考が頭を埋める中、僕は相手に接近を許した理由に気が付く。

ーさっき考え事をしていた時かー

ここ最近の自分の苦境やカオルへの心配で自身の警戒心が緩んでいたことを反省する。

ー…いくら辛い事が続いてたからって、警戒を薄めるのは失態だなー

さて、と、自身の失点の分析を終えたところで、今度は相手や状況の分析に入る。

ー見たところ、僕に話しかけたのは目の前の若い男一人。筋肉質で体力が多そうではあるが、カオルとの位置関係を鑑みてもまず敵わない相手ではないー

いや、と、ここで考えを改める。

ーいくら思考を沈めて警戒が薄れてたとはいえ、僕に全く気付かせずにここまで近づいている。…只者ではないなー

相手から尋常ならない気配を悟った僕は、夢奏むそう虹弓こうきゅうを召還するための手印と詠唱を始める。


「螟ゥ蠑馴。慕樟 螟ゥ鄒ス縲�泙 …螟ゥ逡後�逾悶�豎晏、ゥ菴ソ繧、繝ュ縺ョ蜷阪↓縺翫>縺ヲ…」


男は僕から放たれている殺気に気付いたのか、おびえた様子で口早に話し出した。


「まっ、待ってくれ!さっきは感じのわりぃ事を口走っちまったが、お前と争う気はこっちは微塵もねえんだ!話を聞いてくれ!」


男が心底焦った様子で話しているのを見て、僕は詠唱を止める。

ーなんだ?本当にただ僕が見えるだけの普通の人間なのか?まあ、こんな世界で現実離れしたものをみたら、誰だって自分が狂ったか錯覚はするか。いやでも、…ー

少し引っかかるところがあったが、男からは特に攻撃の構え等は見られなかったため、とりあえず相手の話を聞いてみることにした。


「…そう。それは申し訳ないことをしたね。改めて、僕は天使。…まあ、見たまんまの通りだけど、何か聞きたいことがあるのかな。」

「ああ。…お前、さっき何もないところから食べ物を出していなかったか?」

「………そうだね。僕はあんな風に願いを叶えることが出来る。」

「…お前が天使だってのも、何でも願いを叶えるってのも俺は疑いはしねぇ。明らか、人ではないものが見えてんだ。何だっても驚かねえ。」

「そう?…ならついでに言うけど、……キミは天使である僕が見えている以上、一週間以内に死ぬことになる。これはキミが僕に何を願おうと、変わらず、ね。」


男は一瞬絶望の表情を浮かべたが、すぐに平静を取り戻して話を続けた。


「………何でも願いを叶えられるって言うのは、本当なんだな。」

「…うん。神具の力を使えば、叶えられない願いは存在しないよ。」

「そうか…」


男は先程とは異なり、希望に溢れた表情を浮かべ、続けた。


「…頼む。お前のその力で浪治なみじの爺さんを助けてやってくれ!」

「………………」


男の言葉には必死さが感じられ、噓の類を言っているようには感じられない。浪治という人は実在し、本当に危ない状態なんだろう。

ただ、ねがいのうつわに叶えられる願いに制限は無いが、特定の対象に遠隔で願いを施すには願いの器の所有者である僕自身が対象を最低限認知している必要がある。

男の言う浪治という人にカオルを連れて会いに行って、本当に大丈夫なのだろうか。万が一カオルに危害が加わるようであれば、今すぐカオルを連れて逃げた方がいい。


「……あの子を心配しているのか…」


男が突如として口をはさむ。


「………カオルに危害を加えようとしてみな。キミの首を一瞬で飛ばして、波治って人も必ず見つけ出して同じ目に合わせてやる。」

「待ってくれ!そんな意図はねえんだ!………………あの子は何者なんだ?」


男は僕がカオルを連れていることに疑問を持ったのか、僕に問いかける。


「それは…………」


僕は男の問いに答えようとするが、言葉に詰まる。

僕にとって、カオルは、なんだ?

なんで僕は、カオルに一生懸命になっているんだ?

いや、確かに答えはあるはずだ。カオルは僕にとってー

しかし、と脳が否定を示す。

カオルは特段これまでの人間と比べて特別な何かを持っているわけではない。いたって普通の、子供だ。

これまでだって子供でも僕が見える人と何万人も会ってきたじゃないか。カオルが子供だから、っていう理由はない。

ならば、なんで僕はカオルを特別視しているんだ?


「………………………………」

「…答えはないのか。まあいい。特別な人に、特別な理由なんか必要ねえしな。」


男はどこか空を見上げ、再び僕に顔を向けた。


「……………あの子の事、俺に任せてくれねえか?」

「…は?いきなり何をー」

「お前だって、何なのかはさっぱりわからねえが、あの子をずっと連れていくことは出来ねえはずだ。あの子が拾い子かなんかなら、俺達の集落で面倒を見て、育ててやるって話だ。」

「…………集落が出来ているのか。」

「ああ。…波治の爺さんは俺達の集落を創ってくれた人だ。………行き場のなかった俺達に生きるための場所をつくってくれた爺さんには感謝しかねえ……それなのに………………」


男の話を適当に相槌を打ちながら考えると、カオルの安全を保障するため集落に行くというのは悪くないような気がしてきた。

ある程度設備があるのならば、僕がいなくても生活が出来るぐらいにはまともな教育が出来るかもしれない。また、あまり危険がないのであればカオルを守ることもやりやすくなる。

…それに、人が集まっているのならカオルの親族について、何かわかることがあるかもしれない。もし見つかれば、カオルをその人たちに返すのが、カオルにとって一番幸せなはずだ。


「………分かった。カオルの安全を絶対に保証するっていう条件を吞むのなら、波治って人を治すためにその集落に行ってやってもいい。」

「本当か!……ありがとう、これで爺さんに…」

「おまたせ!いおさん!!………あれ?おじさん、だぁれぇ?」

「………確かに、人にお願いをするのならまずは名乗ったらどうだ?」


僕が男に言及すると男はやや不貞腐れた態度で続けた。


「こういうのは言い出しっぺが先に言うべきだと思うんだがな………………まあいい。俺は宮川蓮みやかわれんだ。アンタは?」

「天使イロだ。この子はカオル。よろしく。」

「いおさん、れんのおじさんって、だぁれ?」


カオルが僕に聞いてくる。そうか、カオルに行き先を伝えないとな。

……………………………


「カオル、この人はキミのお兄さんの居場所を知っているかもしれないんだ。今から案内してくれるって。」


僕は宮川蓮に指で余計なことを口走らないようサインを送りながら話したが、彼はそれでも会話に割り込んできた。


「はぁ?なんだそのー」

『よけいな ことを しゃべるな』


僕が全力で念を出して連に指示を送ると彼はその口に封をした。


「ほんとお!?ありがと!!れんのおじさん!!!」

「…あ、あぁ。君のお兄さんなら居場所に心当たりがあるんだ。俺についてくるといい。」

「うん!!」


宮川蓮は背を向け、ビルの残骸に向け歩みを進める。

僕達は彼に続いて残街路へと入っていった。


***


「おい、イロ!」

「ん?なんだい。」


道中宮川蓮が前を歩くカオルに聞こえないような小さな声で僕にささやく。


「あの子、カオルの兄って………」

「ああ。………お察しの通り、もうこの世にはいないよ。」

「!!……………なんでお前はあの子に噓ついてんだよ………………」

「カオルの立場に立ってみろ。あの子は兄に対してかなりの信頼と安心感をおいている。それがもう無いって知ったら、……もう分かるだろ。」

「それは…………………………………、…………俺にどうしろって言うんだよ。お前の言ったことは嘘だったと俺がカオルに伝えろって言うのか?」

「それはいづれ僕の口から伝える。……………キミにはカオルの親族を探してもらいたい。」


「…どういうことだ?あの子の兄は死んだんだろ?」

「………もし兄以外に家族が生き残っているのなら、カオルは兄の死を知ってもまだ立ち直れるかもしれない。………………もっとも、親族なんてのが本当にまだ生きてこの世界にいるのかは賭けだけれどね……キミの集落ってのは結構人はいるんだろ?」

「ああ。…確かに聞いて回れば見つかる可能性はあるな。」

「頼めるかい?」

「……分かった。必ず親族を見つけ出して、カオルに会わせてやるよ。でねえと、相当精神状態やべえんだろ?」

「助かるよ。僕の方でも探すけど、限度があるからね……」

「れんのおじさん!つぎ、どっち?」


突然前を歩くカオルが聞いてくる。どうやら分かれ道があったらしい。


「右だ!右に曲がってまっすぐだ!」

「ありがとおじさん!!」


カオルが礼を言う声が聞こえた後、タッタッタと走っていく音が聞こえた。


「………俺ってそんな老けてるかよ……………………まだ20代だぞ…………………」


隣で宮川蓮がブツブツ何か言っているのが聞こえたが無視してまっすぐカオルの後を追った。

ここまでお読みくださりありがとうございます!

次のお話をなるべく早い段階で投稿できればなと思うので応援してくれたら私がトビマス。

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