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ジュウニントイロ  作者: 御萩
第三話タベルモノ
12/14

タベルモノ #2ひーろーのどくはく

更新お待たせしました。

第三話の#2となります。

ようやく僕個人の試験が終わって、一息ついたので夏休み中はなるべく更新頻度を上げていきたいなと思います。

***


翌朝、カオルが元気な声で僕を起こす。


「てんしさん!おきて!にぃに、さがしにいこ!」


…どうやらいつの間にか眠っていたみたいだな。


「…おはよー、カオル。」

「おはよぉ!てんしさん!」


カオルは挨拶の後、少し考えて僕に聞く。


「…てんしさん!てんしさんは、おなまえ、なんてゆーの?」

「あー……まだ自己紹介して無かったっけ…」


僕は言うべきか迷ったが、今後生活していく上で呼び名が無いのも不便だと思い、結局言う事にした。


「…僕はイロ。数億年前に天使に夢見た哀れな少年のなれ果てさ。……今は天使長を勤めているよ。」

「ほへー……よろしく!いおさん!」

「イロね。改めてよろしく、カオル。」

「かおるはね、きそらかおるっていうんだよ!いおさん!」

「イロね。」


そんなやり取りをしながら僕は朝食を出す。


「はい、今日はおむすびだよ。」

「わあい!おにぎりだぁ!」


カオルはムシャムシャとおにぎりにかぶりつく。


「おっと、栄養が偏るといけないからね。」


僕はミルクと軽いサラダを生成してカオルに手渡す。


「ほら、ちゃんと野菜も食べるんだよ。」

「うん!」


カオルはミルクとサラダを受け取って再び食べ始める。…昨日は気を配る余裕が無かったといえども夕食をハンバーガーだけですませてしまったからね。まあこの子も昨日僕と会うまで長い間何も食べてなかったみたいだから栄養過多ということはないのかもしれないけど。食事を管理する上では今日からはやはりバランス良く食べさせないとね。


そんなことを考えているともう食べ終わったのかカオルが声をかけてきた。


「……いおさんはごはん、たべないの?」

「…ああ僕?僕はいいの。天使は食事とか睡眠とか、人間でいう三大欲求は必要なーいーの。」


僕が適当に返事を返したら、カオルは憐みの目を向け、言った。


「…いおさんも、ごはん、たべて。」

「だから大丈夫だって。さっき渡した分はキミの分なんだから全部食べなって。」


……そもそもキミの兄さんの願い的に、カオル以外は生成した食べ物は食べれないだろうし。


「いいから!たべて!こんなにおいしいのに!」

「…カオル……」


カオルはサラダを僕に押し付けてくる。

…この子達が何日も食べていなかったのなら、当然誰かと食事を楽しむ機会も失われていただろうな。この歳でそんなこと、あまり発達上ではよくないのかもしれない。


でも……


「……ごめんカオル。僕はそれを受け取ることは出来ないな。」


勿論僕が食べる前に口に運んだ時点でその食べ物は願いの効力を失って消えてしまうというのもあるけれど……


あるけれど。


第一に!


「…カオル君?このサラダ、ピーマンばかり残っているように見えるけど。なんでかなぁ?」

「………はぅっっ!!」


うろたえたカオルは汗をダラダラ流しながらしどろもどろ答える。


「あっ………あのー……これは…そう!ぴーまんおいしい!だから、いおさんにたべてほしい!」

「美味しいと言う割には一口も食べてないように見えるけど。」

「ほへ!?」


カオルがさらに目を泳がせる。


「…かーおーるーくーんー?ちゃんと野菜、食べるって言ったよねー?」

「はっへっひっほっふっ」


あらら。完全にバグっちゃってるな。

…しょうがない。ピーマン以外の野菜は食べているようだし今回はこれで勘弁してやるか。


僕はカオルの手からピーマンの残った容器を受け取り、消して、カップケーキを生成した。


「けーき!?」

「…今回だけね。このケーキ、ピーマン入っているけどやっぱりいらない?」

「たべる!」


カオルはカップケーキを強奪し、パクパクと食べだした。


「ほら、喉詰まるから落ち着いてね。」


僕はもう一杯ミルクを生成した。


***


朝食を終え、出発の準備を整える。


「よし、それじゃあ行こうか。」

「うん!」


カオルは元気よく返事をして僕の手を取る。


「…しっかりつかまっててね。」


僕は両手でしっかりとカオルを抱きかかえながら空へと飛び立つ。


「うわあああああい!!」


ギュンと鋭い音を立て、あっという間に雲の上へと到達する。


おっと、もう少し高度は低い方がいいかな。


僕はゆっくり高度を落としながら、低空飛行の体制を整える。


「うわーーー」


カオルは相変わらず飛行を楽しみながら目を輝かせる。


「……っと。」


カオルが僕に体重を預けてくるので、少しバランスが崩れる。


「わああ!」


バランスを崩した僕を見て、カオルは楽しそうに笑う。……全くこの子は、本当に元気だなあ。


「にぃに、はやくみつかるといいなぁ…」


ふと、カオルが呟く。


「……やっぱり、カオルはお兄さんの事好きなのかな?」


僕が聞くと、カオルは元気いっぱいに答える。


「うん!にぃに、とってもかっこいいし、とってもつよくて、だいすき!」

「………それはとても良いお兄さんだね。」


僕が微笑み返すと、カオルは続ける。


「うん!……でもね、かおるね、いおさんのこともすきだよ!」


……僕?

なんで、僕なんか。


「……どうして?」


僕は思わず理由を聞いてしまう。


「だって、いおさんやさしいし!ごはんおいしいし!!かおるおそらとぶのゆめだったけどいおさんのおかげでおそらとんでいるもん!!!」

「…………………」


……優しい?僕が?

幾千幾万もの人間の死を見て見ぬふりして、大切な者を何一つ守れなかったこの、僕が?


………有り得ないね。

今、こうしているのは僕の判断ミスで命を落としてしまった彼や彼女らへの、ただの自己満足な贖罪さ。

そんな事をしたって、彼らが戻ってこないことも、この子が彼らの代わりにはなれないことも、分かっている。


…ザザ…


脳裏に、彼との約束が蘇る。


『………って…くれ……………争………ない………和な…………世界を………………』


………………………………


…分かっているよ、ヤキョウ。こんなところで自己嫌悪している場合じゃない。


キミの叶えたかった願いは、僕が…必ず………


「かおる、おおきくなったらいおさんみたいなひとになりたいんだ!」


カオルの言葉で我に返る。


「……なんで僕みたいになりたいのかな。」


なんとか平静を装って返事を返したが、やはり少し低くくぐもった声になってしまった。

しかしカオルは笑って返した。


「かおるね、にぃにやいおさんみたいにだれかをたすける『ひーろー』になるのが、しょうらいのゆめなの!」

「………そっか。」


天使になるのは……勧められないが、この子にはこのまま純粋で優しい人に育ってほしいな。


「…頑張ってなってね!ヒーローに!」

「うん!かおるぜったいひーろーになる!」


カオルはつぶらな瞳で僕を通して未来を見つめた。


「そのためにはね、いおさんみたいにおそらをとべるようになったり、にぃにみたいにまいごになってたかおるにやさしくしたり…」

「……大変だねぇ…」


カオルは『ひーろー』になるために必要なことについて自分なりに考えているようだった。


***


昼になった。


カオルに昼食をとらせるために地上に降り立ち、僕は食事の用意を始める。


「はい、お昼はサンドウィッチだよ。」

「さんどうぃっち!」


カオルは相変わらずと言うかなんというか、僕からパンを受け取るとすぐに無我夢中で食べ始めた。


「…やっぱり飢餓状態だった影響なのかな。食事に対する反応が人間のものじゃない…」


昨日から見ていて、カオルは食事の時なりふり構わず食らいつく傾向がある。

今朝サラダを残した時点でトラウマは収まっていたと思っていたのだが…


……やっぱり、家族とか本当にカオルを理解してくれる人がいた方がいいのかな。


しかし、と僕は考えを改める。


カオルと兄が二人で彷徨っていたのは事実だ。普通、大災害があった後に子供だけで行動をさせようとする親なんているだろうか?……やはり、二人の両親はもう既に他界している可能性が高い。


また、孤児院か何かに預けるのも良くないな。現状そういった特別施設は災害の復旧作業で新規の加入者を受け入れる余裕なんてないだろう。


……その他諸々の条件を考えても、やはり現状維持が好ましいか。しかし、いつまでもこんな生活を続けるわけにはいかない。この子には未来がある。

将来この子が生きていく上で困らない最低限の義務教育ぐらいは受けさせないと。


「………いや、何考えてんのかな。僕。」


昨晩もついさっきも、この子を未来永劫僕が守り育てていくって決意したばかりじゃないか。

先日僕の判断ミスで命を枯らした由那やブランダの経験から、この子からは目を離しはしない。なのに、この子を誰かに託すだなんて。


いや、それではダメだと心の中の自分が言い聞かせる。


そんな事をすれば、この子は普通の幸せをつかみ取ることが出来なくなってしまう。

第一、天使が見えているということはこの子は残りの寿命が少ない。仮に僕が守ることで寿命を先延ばしに出来ても、死に近い非常に不安定な状態を一生続けさせるのは危険だ。


でも、……………………………………………

…いや、…………………………………………………


「ごちそうさまでした!」


カオルの食事終了の合図により我に返る。


「…あぁ、よかったかな。サンドウィッチ。」


カオルは満面の笑みを浮かべて答える。


「おいしかったよ!いおさんのつくるごはん、どれもおいしくてすごい!」

「…ははは、それはよかった。」


僕は適当に返事を返す。


…今考えるのはよそう。将来が不安なら、とりあえずこの子を確実に安全に育ててくれそうな人や施設を探しながら旅をすればいい。


「…んじゃ、準備は出来ているかな?」

「おしっこ!」


カオルはさっきまで平気な顔していたくせに突然今にも漏れそうな顔をしてもじもじしだした。


「………早く行ってきな、そこら辺の草むらでしていいから。僕、あっち向いてるから。」


僕が言い終えると一目散にカオルは茂みに駆け出した。


「……全く…元気だなぁ……」


そんなカオルの後ろ姿を見て物思いにふけっているとー


「…やっぱり、アクセサリーなんかじゃねぇ!本物の羽だ!」


ー不意に後ろから声がした。

最期までお読みいただきありがとうございました。

#3はなるべく早い段階で上げれるようにするので今しばらくお待ちください。

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