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ジュウニントイロ  作者: 御萩
第一話ジコマンゾク
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ジコマンゾク #1廻合

以前の表示形式が非常に見ずらいものであったため、一度全作品を削除して掲載しなおすことにしました。

前から読んでくださっていた方も今初めてこの作品を見つけた方も今後ともジュウニントイロのお話を見て頂ければなと思います。

第一話はここから始まります。以前掲載したものと同じものになっていますのでご心配なく読めたらなと思います。

俺は今日ここから飛び降りる。


眼下に映る屋上からの景色を思考から外し俺は決意を決める。

あのクソ野郎からのパワハラに耐えるのはもうウンザリだ。このまま一生アイツの下で働き続けるぐらいならここで死んでやる。


決心が鈍らないうちに手すりに手をかけ、身を乗り出す。

もうこの世に未練など無くいつもの日常の様にその行動を終えるつもりだった。


ーだから、次の瞬間目の前に現れた非日常に驚かざるをえなかった。


「ー?お、見える?」

「……は?」


突如俺の目の前、文字通り目と鼻の先に現れた子供がそう言った。


あまりに急な出来事に一瞬理解が追いつかない。

視界に映る白い輪っかに死人みたいな格好、黄褐色の目。白い翼はまるでこの世の物とは思えない。


「⁉︎……⁉︎」


驚く俺を前にその子供は口を開く。


「ーアー、コホン。」

「初めまして、僕は天使。」

「……は?」


……いや、は? ……天使? ……今こいつ、天使って言ったのか?

いや、確かに見た目はそれっぽいけど。でもそんな子供の様な見た目のやつが本当に天使なのか?それになんでこんなところにいるんだよ?


俺の頭の中を様々な疑問が飛び交い、そしてそれを見透かした様に目の前の子供が口を開く。

「ーまあ、信じられないのも無理ないね。でも事実だよ。」


子供は俺の疑問を遮るように続ける。

「さて、僕が見えるならキミに言わなきゃいけないことがあるんだよね。」


天使を名乗る少年?少女?はここで一拍おいて続ける。


「ー『あなたは残念ながら一週間以内に寿命を迎える。しかし、幸運にも天使を見つけられたあなたは残りの寿命と引き換えに願いを叶える事が出来る。願いはどれだけ寿命を注ぐかによるが何でも叶える事が出来る。』…さあ、どうする?」


……いや、急展開過ぎて頭がついていけないんだけど。

いきなり現れたと思ったら『天使です』って言われて『あなたは死にます』って言われたんだぜ?誰だってそうなるっての。


「……疑ってる?」

目の前の天使を名乗る子供が俺の顔色を窺う様に見てくる。


「ー別にそういう訳じゃないけど……、仮にその話が本当だったとして一つだけ質問していいか?」

「ん?何?何でも聞いてよ!」


俺の質問に目の前の天使は目を輝かせて答える。


「じゃあ遠慮なく聞かせてもらうぞ。」


俺は目の前の天使の目を真っ直ぐに見つめる。

「仮にそれが本当だったとして、何でそんな事教えてくれるんだよ。」


……そうだ。こいつが仮に本物の天使だとしてもそんなことわざわざ教える必要がどこにある?


「ーそういう規則だからね。別にキミを特別視している訳じゃ無いよ。」

天使は更に続ける。

「僕達天使の存在意義みたいなものさ。寿命が近づき僕達が見えるようになった生き物に僅かな寿命を代償に願いを叶える。それが僕達の仕事だよ。」


……いや、何でそんな他人事みたいに言えるんだよ。


「ーさて、どうする?残りの寿命を代償に願いを叶える?言っておくけど願いを叶えようが叶えまいが僕が見えている以上キミは必ず一週間以内に寿命を迎えるけどね。」


俺は話を聞くうちに冷静になった頭を使って答えた。

「アホらし、誰がお前の言う事を信じるんだよ。」


そうだ。

俺は今日ここから飛び降りるためにここに来た。こんな天使だか何だか知らないが変な奴に構っている暇はない。


「じゃあ、邪魔したな。」


俺は再び手すりに手をかける。

「ー何見てるんだよ。」

「いや、飛び降り自殺なんて久々に見るからさ。ちょっと見ときたいなって。」

「気ぃ散るな。失せろ。」

「残念ながら天使は天使が見える存在の最後を見届けるまでは監視する役目があるのだあ。キミに願いを叶える意思が無かろうとね。」

「ちっ……。」


俺は渋々と手すりから手を離した。

……まあ、こいつに見張られてると飛び降りれないししばらくここで暇を潰すか。どうせすぐに飛び降りるんだし。


「……一つ聞いていいか?」

「ん?なに?」

「何で俺が死ぬって分かるんだよ?見えるだけなんだろ?」


……そうだ。こいつが天使だろうと悪魔だろうとそんな存在に俺の寿命が分かるわけがないんだ。勝手にこいつが言ってるだけだ。


天使は少し考えるようにして言った。

「そういえばそうだね。死因が自殺なら僕が見え続けるのはおかしい。キミが自殺の意思を捨てれば見えなくなるはずだけど…」

「馬鹿馬鹿しい。付き合ってられっか。」


別に飛び降りはいつでも出来る。ならコイツがいなくなってからすればいいだけだ。

俺は振り返り、屋上を後にした。


「…何で着いてくるんだよ。」

「さっきも言ったけどキミが僕を見える以上キミが死ぬまでいつでも願いを叶えられる範囲にいないとね。」

「じゃあ、俺がお前を追い払えばいいだけだろ?」

俺は目の前の天使を睨みつける。


「ーまあ、そうしたいのは山々なんだけどね。」


天使がやれやれといった様子でため息をつく。

「キミに自殺の意思が無かろうが僕はキミから離れられないんだよ。」

「……なんだよそれ、呪いかなんかかよ……。」


そんなやり取りをしながら歩いているといつの間にか自分のデスクの前に着いていた。

……そういえば今日はまだ昼飯食ってないな。


「なあ、ちょっといいか?」

「ん?何?」

俺は机の上を漁りながら天使に声をかける。


「……俺さ、今日昼飯食ってないんだわ。」

「へー、そうなんだ。それで?」

「でさー……、俺が今から餓死を望むって言ったらお前はどうするよ?」


自分の自殺を餌に天使を追い払うという我ながら頭の悪い作戦だが効果はあるはずだ。こいつが本当に天使なら流石に『餓死』は願いの範囲外だろうしな。


「それが願い?ならこのペンダントに願いとそれを叶えるために使う寿命を言いな。」

天使は相変わらず純粋無垢な瞳で俺を見つめながら、言った。


「…は?」

「だーかーら!ペンダントに願いと寿命を言えばいいんだよ。」


……どういう事だよ。餓死は範囲外じゃなかったのか? まさか、本当に俺を殺すとでも言うのかよ……。

そんな考えが頭の中をグルグルと回る中俺は目の前の天使を睨みつける。


「……おい、ふざけてんのか?」

「ん?何がさ。」

「俺の言ってる事全部に決まってるだろが!失せろっつってんだから早く目の前から消えろ!」

そう言って俺は近くにあった空の花瓶を手に取り、天使に投げつけた。


しかし、花瓶は天使を通り抜け、地面に当たり、割れた。

「は?」

「あー…僕は現世に存在する物なら触れない事も出来るんだよね。残念だけども。」


天使が何かを言っている。


「……は?」

「いや、だから僕は現世に存在する物なら……」

「そうじゃねえよ!」


俺は花瓶の破片を拾いながら言う。

「……お前本当に人間じゃねえのかよ。」

「?そりゃそうさ。キミにしか見えないだけで僕はれっきとした天使だよ。」


いや、確かにそれは分かってるんだけどさ……。こいつの言い方とかそれにそぐわない見た目のせいでどうも実感がわかないんだよ……。


「で、願いと寿命は決まったの?餓死だっけ。早く言いなよ。」

「…チッ」


俺は軽く天使を払いのけ、財布をとってオフィスを出ようとした。


「アー、赤井君?」

突然、最も聞きたくない声が背後から聞こえ、鳥肌がたった。


「田村部長…!」

振り返るとそこには俺の直属の上司、田村部長がいた。


「赤井君?どうしたんだい?」

「あ!いえ!何でも無いです!」


俺は適当にあしらい、再びオフィスを後にしようとする。


「……赤井君?」

が、またも呼び止められてしまった。


「は!はい!何でしょうか!」

「いや、こないだ頼んだ派遣先へのメールはもう書いたかい?」

「い、いえ、まだです!しかし…」


俺が次の言葉を言うより前に田村の怒声がオフィス中に鳴り響いた。


「馬鹿者!」

「ひぃっ!す、すみません!」


田村部長は唇を噛みながら続ける。

「……赤井君?前にも言ったと思うが期限の近い仕事は余裕を持って終わらせる様にしてくれよ?それから、君は派遣社員やパートに対して言葉遣いがなっていないんじゃないか?そんな態度だからいつまでも仕事も終わらずズルズルと時間を潰すのだ。」

「は、はい。申し訳ありませんでした!」


……クソっ!俺が一体何をしたっていうんだよ!田村部長の言う通りメールもまだ出してないさ!

でもな、あんたが俺に回してくる仕事が多すぎるんだよ!


「分かったのならさっさと仕事にかかりたまえ!」

「……はい。」

俺はため息をつき、デスクに向かおうとした。


「ちょっと待て。何だねその割れた花瓶は?」

「こ、これは……俺がさっき……!」

「赤井君?」


田村部長の目つきがより一層厳しくなる。


「……はい。」

「私は君に『オフィスを綺麗に保つ様に』と言ったはずだが?」

「は!はい!」

「君はそれを守らなかった。そうだな?」

「い、いや……」

「どうなんだ?答えろ!」


田村部長が俺の胸ぐらを掴みながら怒鳴る。

その形相は正に鬼だった。


「は、はい!その通りです!」

「……。」


田村部長は俺を睨みつけた。胸ぐらを掴んでいた手が徐々に持ち上がり俺の頬へと近づいてくる。


(やべえ……!殴られる……)


俺は目をつぶった。しかし、予想に反して衝撃が来たのは顔面ではなく後頭部だった。


「うぐっ……!」


思わず声が漏れる。恐る恐る目を開けると田村部長が無表情で俺を見下ろしていた。


「……赤井君?」

「……はい」


田村部長は抑揚のない声で続ける。

「キミは未だにこの会社の規則が分かっていないようだな。」

「そ、それはどういう……」


俺が言いかけた瞬間田村部長は俺の胸ぐらから手を離した。突然のことに俺はそのまま尻餅をついてしまう。


「とっとと掃除を終わらせたまえ。早く取り掛かれよ!あと昼飯はメールまで終わらせてから行くように。」

「は、はい!」


田村部長はそのままオフィスを後にした。


「……なんなんだよ、クソが……!」


俺は立ち上がり割れた花瓶を片付ける。そしてデスクに戻りパソコンのスリープモードを解除した。すると天使が俺の隣へと飛んでくる。


「あれが自殺の理由?うっざいねー。あの豚ヅラ。」

「……。」


俺は天使を無視してメールを打ち始める。

結局昼飯は食べる間も無く昼休みは終わってしまった。

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