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気が付くと過去に

 俺は死んだ。

 殺されたのだ。



 『フェルディナン帝国の皇弟殿下暗殺!』

 いかにもといった見出しで新聞に載るかもしれない。



そんな呑気なことを考えながら、ぼうっと窓の外を見ているのは、ルートヴィヒ・シュタルンベルク・フェルディナン。



 何を隠そうこのフェルディナン帝国皇帝陛下の唯一の弟であり、シュタルンベルク公爵としての爵位も賜っている。



あの時殺されたはずのルートヴィヒが再び目を開けると、いつの間にかここにこうして立っていたのだった。



「夢…?」

 


 そう思いかけて、ルートヴィヒはすぐに首を振る。



「あれが夢なわけが無い。今でも生あたたかい自分の血が流れる感覚を覚えているんだからな…」



ごくりと生つばをのむ。

 自分に何が起きたというのだろうか。



 一瞬パニックを起こしかけたが、元々の楽天家気質が、この突拍子も無い状況の中で、取り乱すことなく冷静でいられる精神をどうにか保っていた。



 刺されたはずの左胸に痛みはなく、覗き込んでも衣服には血しぶきのあとはない。洗いたてのような白さが目立つだけであった。



「ん?」



 覗き込んだ自分の服装に違和感を感じ、ルートヴィヒは慌てて鏡の前に立つ。



そこにはよく見知った姿があった。



  背の高いスラリとした背格好。光の加減によっては青く輝くツヤのある黒髪がサラリと風になびき、前髪の下からは、美しくまばゆい金色の瞳がキラキラと光っている。



 さらにいうと、想像より少し幼い顔が映し出されていた。



「これは…俺…だな?」



 冷静になればなるほど、頭から足の先までが冷えていくような感覚で、どんどんと蓋が空いていくように、ルートヴィヒの脳内に記憶が駆け巡る。



「つい今しがた、俺は確かに殺されたはず…」



 誰に?なぜ?

 …いや、まずはそこじゃない。



 今目の前にいる男は傷ひとつなく若返っており、アカデミーに通っていた頃の衣服を身に付けている。



 違和感はまだあった。

 テーブルに置かれているのは、かつてルートヴィヒが誤って割ってしまったはずのお気に入りだったティーカップ。



「カーテンの色も違う…昔のものだ」



 部屋中を見渡すと、そこかしこに違和感があった。



 何よりも異なるのはこの部屋だ。



「ここは俺が皇子だった時に使っていた部屋…?」



 どう見ても公爵として使っていた執務室や寝室では無い。



 これらから導き出される結論は…。



「過去に…戻ってきたのか…?」



 これが夢でなければそうとしか考えられないのだ。



 鏡の中の男は、せいぜい17~18歳そこそこといったところだろうか。



 アカデミーのシャツを着ていることからもそれが伺える。



「10年ほど時を遡ったというのか…?!」



 にわかには信じ難い現象であるが、目の前で起きていることへ説明をつければつけるほど、それは確信へと変わっていくのだった。



この世界に魔法自体は存在しているが、時を操る魔法は存在していない。



  神のいたずら。そんな抽象的な言葉でしか言い表せない事態だった。



 そして10年間の記憶と共に蘇ったもう1つの記憶。



  ルートヴィヒとして生を受ける以前の記憶。



  それは前世の記憶であった。




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