ジュンジ~キャテリーヌちゃんの家へ行く~①
「あぁ、ノブオさんね! そうそう、昨日は来なかったのよ。こんなことは初めてだったけど、そういうこともあるかって思ったら、すっかり忘れちゃってたわ! はっはっ!!」
とても六十代には見えないフジ江さんはそう言って、若々しく豪快に笑った。
キャテリーヌちゃんの飼い主であるフジ江さんは生まれてからずっと、この立派すぎる木造平屋建てに住んでいるという。
一体、どこまで先があるのかわからないほどに広く緑の美しい庭を眺めながら、ジュンジは縁台におよばれして、よく冷えたお茶をいただいていた。
「そうですか……ノブオさん、来てないのかぁ。困ったなぁ」
ふぅ、とため息をついたジュンジは、薄く透きとおったオシャレなガラス製の湯飲みに口をつける。
「あら、ジュンちゃん。何か落ちたわよ?」
「えっ? あぁ、これ……」
それは、意山さん家の玄関にあった伝票だった。ジュンジのズボンのポッケに突っ込まれ、持ち帰えられてきたそれが、するりと落ちたのだ。
縁台に並んで腰掛けている二人の足元に着地したのを、フジ江さんはさっと手に取る。
「……これ意山さんの、おじいちゃんのところね? あのお宅もいろいろ大変だったから……」
「へっ!? フジ江さん、このお家を知ってますか!?」
目を大きく開けたジュンジは、右隣に座るフジ江さんの顔を凝視する。




