忘れ物と電話②
「母ちゃんが新品で買ってくれたんだ!」
ノブオ少年はノブオにそれを差し出す。
その表紙を見て、一瞬で記憶がよみがえる。
「あぁっ!! “よいこのオカルト全集第8巻”じゃないか!?」
この本にはもはや見覚えしかない。
実は今現在もオカルト大好きなノブオは、子供の頃ももちろん大好きだった。
昔は児童向けのオカルト本を隅から隅まで読み漁っていたのだが、この一冊にはとりわけ思い入れがある。
「そうだよ! これ新刊でさ。今までのやつは図書室で順番待ちして読んでたんだけど、特別に母ちゃんが買ってきてくれたんだよ! 俺、嬉しくってさぁ……」
ノブオ少年は愛おしく表紙を見つめた。
「そうか、そうか……うん、うん……それは大事だもんなぁ。よかった、よかったなぁ。ちゃんとあってなぁ……」
両頬を熱いものがつたうノブオは鼻をすすりながら、ノブオ少年の肩をそっとポンポンする。
「おじさん!!」
つられてノブオ少年の目にもこみ上げてくるものがあった。
「グズッ……へへっ、俺もオカルト大好きでさ。その本、めちゃくちゃ面白いよな」
「えっ! おじさんもこのシリーズを読んでるの? 大人なのに!! やっぱり、おじさんはすげぇやっ!! 習字も俺のやつ当てちゃうし、もしかしてエスパー!? ねっ、エスパーなんでしょ!! すげぇー!!!」
ノブオ少年はサイドに飛び跳ねながら、ノブオに羨望のまなざしを向ける。
「まっ、まぁな! その第8巻、大人になったらすっごくすっごく役に立つからな。ずっと大事にするんだぞ! そして、人生でもうダメかもしれないと思ったとき……いいか? 本当にダメだと思ったその時だ! その時には売りなさい。でもそれまでは大切にするんだ。これはノブオ君にだけ教えてあげる人生の秘訣だ。誰にも内緒だぞ?」
唇に人差し指を押しあて、ノブオは意味深にシーッと前歯の隙間から息を漏らす。
「人生の秘訣!!! すっげぇー!!! うん、この本はずっと大切にするよ!」
ノブオはわりと最近、いろいろあって家を整理したときに出てきたこの本を、近所の店に売りに行っていたのだった。




