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追憶の俺たち  作者: 春天アスタルテ
第十七話 忘れ物と電話
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忘れ物と電話②


「母ちゃんが新品で買ってくれたんだ!」


 ノブオ少年はノブオにそれを差し出す。


 その表紙を見て、一瞬で記憶がよみがえる。


「あぁっ!! “よいこのオカルト全集第8巻”じゃないか!?」


 この本にはもはや見覚えしかない。


 実は今現在もオカルト大好きなノブオは、子供の頃ももちろん大好きだった。


 昔は児童向けのオカルト本を隅から隅まで読み漁っていたのだが、この一冊にはとりわけ思い入れがある。


「そうだよ! これ新刊でさ。今までのやつは図書室で順番待ちして読んでたんだけど、特別に母ちゃんが買ってきてくれたんだよ! 俺、嬉しくってさぁ……」


 ノブオ少年は愛おしく表紙を見つめた。


「そうか、そうか……うん、うん……それは大事だもんなぁ。よかった、よかったなぁ。ちゃんとあってなぁ……」


 両頬を熱いものがつたうノブオは鼻をすすりながら、ノブオ少年の肩をそっとポンポンする。


「おじさん!!」


 つられてノブオ少年の目にもこみ上げてくるものがあった。


「グズッ……へへっ、俺もオカルト大好きでさ。その本、めちゃくちゃ面白いよな」


「えっ! おじさんもこのシリーズを読んでるの? 大人なのに!! やっぱり、おじさんはすげぇやっ!! 習字も俺のやつ当てちゃうし、もしかしてエスパー!? ねっ、エスパーなんでしょ!! すげぇー!!!」


 ノブオ少年はサイドに飛び跳ねながら、ノブオに羨望のまなざしを向ける。


「まっ、まぁな! その第8巻、大人になったらすっごくすっごく役に立つからな。ずっと大事にするんだぞ! そして、人生でもうダメかもしれないと思ったとき……いいか? 本当にダメだと思ったその時だ! その時には売りなさい。でもそれまでは大切にするんだ。これはノブオ君にだけ教えてあげる人生の秘訣だ。誰にも内緒だぞ?」


 唇に人差し指を押しあて、ノブオは意味深にシーッと前歯の隙間から息を漏らす。


「人生の秘訣!!! すっげぇー!!! うん、この本はずっと大切にするよ!」


 ノブオはわりと最近、いろいろあって家を整理したときに出てきたこの本を、近所の店に売りに行っていたのだった。


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