忘れ物と電話①
真っ赤な夕日は沈みかけ、暗い教室の所々を不気味に照らしている。
そんな中、少年は慣れた様子で机の中をがさがさと探っていた。
後からやって来たノブオは、教室の後ろに画びょうで貼り出されている習字に気が付き、持っていた懐中電灯を点け、なんとなく一枚ずつ眺めていく。
努力という文字が様々な筆跡で書かれている。
すると、やはりその名前を見つけてしまった。
「おじさん! 本、見つかったよ! あれ、習字を見てるの?」
ノブオの横に立った少年は明かりに照らされている名前に目をやった。
「これ、君のだよね? 福田ノブオって書いてあるやつ」
自然にノブオは聞いてしまった。言ってしまってから後悔するが、もう後には引けない。
「えっ!? おじさん、よくわかったね!? そう俺、福田ノブオです!」
「……ははっ、適当に言ったんだけど、当たっちゃったな! ほら、字には性格が出るんだよ……ちなみにおじさんの名前も、ノブオっていうんだよ」
ちょっと迷いながらノブオは言った。
「えぇっ!? おじさんもノブオなの!? すっげー! 偶然、すげぇー!!!」
片手に本を持つノブオ少年は小躍りしている。
うまくごまかせた、とノブオはほっとした。
「ところで、その本は何の本? 明日でもいいだろうに、わざわざ学校に戻って取りに来るなんて、よっぽど大切なものなんだろうけど?」
ノブオ少年が過去の自分であるならば当然その本も知っているはずだった。
だが、そんなに大切な本なのに、ノブオはさっぱり思い出せない。




