銭湯とラーメン⑤
帰り道、二人はゆっくり川沿いの道を並んで歩く。
「仙人、たくさんごちそうになっちゃって、すみません……」
後ろ頭を手でかきながら、ノブオは申し訳ない気持ちになっていた。
「んっ、いいんだよ。俺も久々に楽しかった。いつも一人だからな。ラーメンの玉子もサービスしてもらったし」
仙人はニコニコ答えた。
「そういえば、あそこのラーメン……妙においしかったなぁ。なんていうか、何かはわからないけど、すごい隠し味が潜んでいそうな? あんなにシンプルだったのに、ただの醤油ラーメンではない気がする……」
思い出しながらノブオは首をかしげた。
「……んっ!! おぉ、ノブオ!! わかるのか!?」
銭湯の時と同様に、仙人は小さな目を見開いた。再びノブオはその表情に驚く。
「えっ!?」
「んっ、実はな……内緒なんだが……あそこのラーメンにはすごい秘密があるんだよ」
声をひそめ、意味深に仙人は言った。
「すごい秘密? えっ、何? それは?」
デジャヴを感じながら、ノブオも小声になる。
「んっ、それはな……」
「それは……?」
「……んっ、んっ……秘密だよ! なぁんてな」
はっはと仙人は楽しそうに笑った。
「えぇ!? なんだぁ……あはは……」
銭湯に引き続き、仙人は重要な何かを隠しているようだ、とノブオは思う。でも、やっぱり聞けない。聞いてはいけない気がする。
「……んっ、秘密だからなぁ……んっ、んっ……」
仙人は相変わらずニコニコしている。ノブオも愛想笑いする。
そうしていると、気づけばコーポ仙田に着いた。階段裏の部屋の鍵を開け、仙人は中に入る。小さくただいまと言って、ノブオも仙人について入った。




