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始まりと儀式(2)④
もう何もいないと思っていた。もしいたとしても敏也だけだと……
敏也はうつぶせに倒れているようだった。生きているのかどうかはわからないが、ぴくりとも動く様子はなかったように思う。
ただその脇に、小さな人影が立っていた。
(メ、メリーさん……立ってた、しかもこっち見てた……目が合った……)
体の全部を使ってする荒い呼吸と、脂汗が止まらない。
「はぁ、はぁ……」
それでもノブオはふすまを押さえ続けた。
「ねぇ……」
「ひっ……!!!」
背後から右肩をつかまれた。
目の端の限界まで目玉を動かして、つかまれたその肩を凝視する。
自分の顔の真横にもう一つ顔がある、そんな気配がする。
相手の息が耳にかかった。
「ねぇ……あなたも行くでしょう」
機械のような、変な音声だった。
もう片方の肩も強くつかまれる。
「あっ……あっ……!!!」
声を上げたがなんともならない。
そのまま後ろに引っ張られたかと思うと、背中から落ちていく感覚だけが残った。




