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敏也と倫子とノブオ②
「どうしたんですか?」
倫子は心配そうにノブオの次の言葉を待つ。
「いや、その敵対関係のことではないんだけどさ。さっき、キャテリーヌちゃんの飼い主のフジ江さんの話で、マンションに住む意山さん家の孫が神隠しにあったって話があったよな!? それって敏也のことだろ? 俺、うろ覚えだけど、中学生になってから敏也には一度も会った記憶がないし、それで勝手に引っ越したとばかり思い込んでいたんだ。でも、もし本当に神隠しにあっていたとしても、それもおかしいんだよ。だって、俺は大人になった、年をとった五十歳過ぎの敏也に、ちゃんと現在の意山さん家で会っているんだから……」
「……敏也が神隠しにあっているのは間違いないと思います。そして四十年後、ノブオさんが現在であった五十歳過ぎの敏也は、本物の敏也ではないはずです」
うつむき、ノブオと目を合わせない倫子は、はっきりと強めの口調で言った。
「へっ?」
ただならぬ雰囲気を察した人面犬ジュンジも、ウサギ小屋から目を離し倫子に向きなおる。




