商売敵と世界平和⑤
「99体のメリーさん? なんですか、それは?」
ほぼ思考が停止したジュンジは体育座りに座りなおしながら、やけくそ気味に尋ねる。
「……なんていうか、いろんな呪術に貸し出すように私が仕込んでいる人形よ。99体あるんだけど、貸し出した覚えはないのに行方知れずの57番があるの」
スカッシュイエローはあまり言いたくないのか、下をむいたまま小さく早口で、たいした説明をしない。
「へぇ……」
それを受けて、ジュンジの返事も適当になる。
変な間があって、突然ネクターピンクが口を開いた。
「ジュンジさんはノブオさんを助けたいのよね!? こうなった以上、私たち飲料戦隊・甘エンナーと共に過去へ行って、サブ郎じいさんたちを倒しましょう!! 協力してノブオさんを助けて、世界を平和に!!!」
叫びながら急にこぶしを突き上げ立ち上がるので、びっくりしたジュンジはひっと小さく悲鳴を上げた。
「せっ、世界平和……!?」
「そうだ! 世界平和だ!!」
「世界平和ね!!」
「世界平和!!!」
コーラレッド、スカッシュイエロー、コーラブルーは続けて叫び立ち上がった。飲料戦隊の間で大きな拍手がわき起こる。
「……えぇ?」
話を合わせないと何をされるかわからない。狂気じみた雰囲気にのみ込まれたジュンジも遅れて立ち上がり、小さく拍手してみる。
ネクターピンクはジュンジの腰に手をまわした。もう逃げ出すことは許されないのだろう。
ジュンジは自らの背中に一筋の冷たい汗がつたうのを、ただ感じるしかなかった。




