47、戦士の血
「さて、私と君との関係だが」カイはマーシェの方を向いて言った。「大叔父というのは実は間違いで、君は私の孫になる」
「孫?」
「ああ。私の娘の子どもが君だ。どうして君の両親が殺されたのかを伝えておかなければなるまい」
「トクシックに殺されたって」
「その通りだ。トクシックはかつてのまがい物の魔法使いにあこがれて、研究をしていた。その中で力のある種族の力を利用する方法を知った。
私が350年前に滅ぼした悪い魔法使いたちは、少しの文献を残していたのだ。私はそれに気づかなかった。それこそきちんと消滅させなければならないものだったのに。
とにかくトクシックは昔の方法をもとに自分なりの方法を編み出した。それで手始めに、力のある種族を滅ぼしにかかった」
「滅ぼしちゃったら、その力が利用できないのでは?」
「その通り。滅ぼすことで、自分以外の者が利用できないようにした。また、反撃されることを防ぐ効果もあるのだろう。
そして、その小さな子どもだけをさらって、自分の思い通りに育てる。そうすれば反抗されることもなく自分の思い通りにできるからだ。君のことをさらって、君を思い通りにして、その力を吸い取ることがトクシックの目的なんだよ」
「でも僕には何も特別な力なんてないけど」
「たぶん、トクシックは最初君を引き取った時、君が私の孫だと気づかなかったんだろう。だがトクシックの目は大したものだ。ちゃんと力のある子どもを見抜いて引き取っていた。
君は自分の力がわからないかもしれないが、確かに君には私たち戦士の血が流れている。君の戦う能力は他の者よりも高いと思う。どんな形で現れるかはわからないがね」
マーシェは少し考えてみた。確かに仲間内では負けなしではある。そうは言っても、中隊長クラスの猛者と戦えば負けるだろう。そう思っていた。
でも、ルナと戦った時確かに、自分の本性を引き出される気がした。それは、普通の戦い方ではなく、絶対に勝つ方法を自分の血が知っているかのようだった。あれが本当の力なのかもしれない。
「君と一緒に引き取られたミーという少年はヴォンテールの生き残りの血が混じってると言ってたね? ヴォンテールは癒しの種族だ。それに風と大地を操る力の強い種族だ。その力を利用してトクシックはどんどん力を付けている」
ミーのことを思い出すと、確かにミーは誰かの傷を治す時には必ずそばにいた。それに彼がいるだけで、どんなに辛くても元気が出た。それがヴォンテールという種族の力なのだろう。
「トクシックは今でも、君の強い戦士の血を欲しがっている。絶対に戻ってはいけないよ」
「勿論です。でも、戻らなければトクシックと戦うことができません」
「そうだなあ。魔術師と協力して一発勝負か、なにか方法を考えなければね。それまで無茶なことはしないようにしてくれ」
「はい、わかっています」
それに、ただトクシックを滅ぼせばいいわけではない。
ヒーを助けなければ意味がないのだ。マーシェが戦うのはヒーのためだ。だからヒーを助けるための力を手に入れなければならない。
それにしても、だったらヒーの力はなんなのだろうか。彼は確かにとても賢いが、何か特別な力があるのかマーシェにはわからなかった。