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43、ひげの受験生



 森での個人技能試験が終わると、すでに数人が脱落していた。


 そして次の日から、剣術の試験となった。勝ち負けは関係なく、一人2試合を行い戦いぶりを見られる。

 すべての試合を見学することができるが、名前が呼ばれるまではあまり試合は見たくない。自分の試合に集中するためにマーシェは控室で静かに座っていた。

「君も受験生? 最初からいた?」

 一般の受験生だろう。ひげを生やしている受験生に話しかけられた。

「はい。最初からいました」

「まあ、受験生多いからな。小さく見えるけど、何歳?」

「13です」

「えっ、13歳? 受験できるの? 力試し?」

 ひげの受験生はなれなれしくマーシェの横に座ってきた。すっかり大人の身体をしていて、ごつくてデカい。

「力試し、みたいなもんです。一応見習い生なので」

「へえ、13で見習い生か。偉いんだな」

 軍隊に入れば給料が高い。それで入隊を希望する者は多い。もしかするとマーシェは家計のために急いで入隊したい健気な少年だと思われているのだろうか。

「はい」

 マーシェが答えた時、試合場からわあっと歓声が聞こえた。勝敗が付いたのだろう。今は、一般の受験生と見習い生の試合だったはずだ。勝敗は関係ないとはいえ、どちらが勝っただろうか少し気になる。

 そんなことを考えていると、名前を呼ばれた。

「あ」

 と言って立ち上がると、ひげの受験生も立ち上がった。

「どうやら、次は君と試合のようだね。よろしく、おチビさん」

「はい、よろしくお願いします」

 マーシェは気合を入れて試合場へ向かった。



 試合場は厳かな雰囲気だった。お祭り騒ぎのように声援を送ったりすることもなく、試験会場らしく機械的に配置されている。

「両者前へ。構え」

 マーシェは両手で基本の構えをした。対してひげの青年は余裕で片手で構えている。

「はじめ」

 合図があるとひげの青年はすぐに剣を振ってきた。まずはブンと大きく斜めに振り切る。マーシェは一瞬避けようと思った。ここで避ければ、そのすきに下から足を切り上り、剣を落として試合が終わる。その隙があるように思う。

 しかしやめておいた。これは勝ち負けではなく、戦い方を見られる試験だ。

 マーシェは振り下ろされた剣を自分の剣で受け止めた。

 頭上でガキンと鳴る。重い剣に腕がビリビリした。


 ひげの青年は頭上で剣を構えるマーシェに、何度も剣を振り下ろしていた。まるでマーシェの剣に当てる練習でもしているようだ。持ちこたえるマーシェは腕が痺れてたまらない。

 マーシェの胴体ががら空きなのだから、一度剣を横から振ればひげの青年は勝てるはずだ。それなのに、なぜそうしない。

 腑に落ちない思いで、マーシェは頭上に振って来る剣を斜めに捌いた。

 途端にバランスを崩す青年。マーシェはスッと青年の後に回り、後ろ手にマントを切りつけた。

 青年は一瞬、視界からマーシェがいなくなった上に、自分のマントが切られたので、驚いたようだ。すぐに振り向き、また大きく剣を振るう。

 しかしマーシェはすぐに避けた。

 ガキンと青年の剣が地面に当たる。


 ひげの青年は自分の剣が避けられていることに気づいた。今までは重い剣を相手に当てれば、たいてい向こうから降参してきたのだが、この小さなマーシェはその剣を何度受け止めても降参してこなかったし、しまいには避けられるようになってしまった。自分の動きが遅いわけではなく、マーシェがすばしっこいのだとわからず、青年は少し焦ってきた。

 こうなると剣はさらに大振りになる。

 上からばかり振っていた剣を、あちこちに振り回すようになった。これはマーシェも避けにくいが、マーシェはその剣の隙をついて反撃を仕掛けることにした。



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