40、入隊試験
マーシェ13歳
誤字報告ありがとうございます!助かります~!
ところで、橋を直す際に主塔を上る場面があったが、これは軍隊ではごく普通に訓練として行われているものである。
高いところでの作業をするのは特殊な技能であるが、意外と使いどころが多いからだ。
入隊試験でも、3人一組で高い塔(ほとんど棒)を上って、上にある旗を付け替えてくるという作業がある。一人が塔を上り、残りの二人が命綱を握る。(勿論万が一に備えて、魔術師が配置されている)
この試験で、協調性を見られるわけである。
入隊試験では、このような団体技能のほかに個人技能と戦闘技能の試験がある。
マーシェは13歳になると入隊試験を受け、まずは団体技能を難なくこなした。
「では、これより個人技能試験となる。装備点検」
「はいっ!」
これから森に入り、決められたルートを通って向こう側へ抜けるという試験である。装備は軍隊のマントと短剣一本だけである(方位磁石はない)。大した距離ではなく、普通に歩けば半日もしないで通り抜けられるが、途中に指令がありそれをこなさなければならない。
中隊合同演習でこの森を通ったことは何度かあるものの、今回は個人技能試験ということで一人で出発しなければならない。途中、他の受験者と出会っても合流することはないが、もしも迷っていたり怪我をしていたり、困難なことがあった場合は協力しても良いことになっている。
受験者は一人ずつ森に入って行く。次はマーシェの番だ。
腰につけた短剣をもう一度確認し、表情を引き締める。マーシェは森に入る前から、空や風の様子をしっかり把握していた。
「入森開始!」
号令とともにマーシェは出発した。
速ければ良いというものではないが、遅いと減点される。
走らない程度、少し速足で森に入った。森の中は風が吹いていてすぐに方向がわからなくなる。しかしマーシェは落ち着いて太陽の方向を見失わずに歩いた。
マーシェの最初の指令は軍の小箱を見つけ、鍵を取ってくるというものだ。小箱は木や葉の色に擬態していて見つかりにくくなっているものの、マーシェはこれが得意だ。すぐに軍のマークのついた小箱を見つける。
「よし」中には鍵が入っていて次の指令が書かれている。「他の小箱を開けて金貨を持ってくること。なるほど」
森は横にも十分に広い。どこの小箱に金貨が入っているだろうか。
あまり端から端まで移動しても時間の無駄だが、森を抜けてから戻るほうがさらに手間である。小箱やその周辺、鍵や指令の紙を隅々まで探す。すると小箱の置いてあった下に木の幹が削った跡が見られた。それが暗号だろう。
「こっちだな」
マーシェは暗号の示す右へ行くことにした。今の場所と太陽の場所を見極めて進む。マーシェはとても慎重で、そしてよく気が付き、指令を次々とこなしていった。
この分ならほとんど迷わず、良いペースで森を抜けられると思った時、向こうの藪がガサと動いた。藪の中に人はいない、動物だろう、と思う。この森は軍の演習に使われるため、比較的人間の出入りがあるものの、動物は普通にいる。大型の動物も肉食獣もいるはずだ。マーシェは藪を見つめ、何が出てくるかを待った。