4、いい子にしてること
ヒーはミーを部屋に案内した。
「ここが君の部屋。隣がフーの部屋、その向こうが僕の部屋だ。僕たちがするのは、勉強とトクシック様のお手伝いだ。あとは良い子にしてること」
「うん」
「呼ばれたら、すぐにトクシック様のところへ行けば良いんだ。あとは、何をするか、その場で言われたことをすればいい。服はこれに着替えて」
ヒーはトクシックが出した子どもの服をミーに手渡した。ミーはすぐに着替え始めながら言った。
「トクシック様ってお呼びすればいいんだろ? そしていい子にしてるってことか。ちょっと怖そうだけど、ホントのところどうなの?」
ヒーとフーは顔を見合わせた。そしてヒーが口を開いた。
「まだわからない」
「まだ、だって?」ミーが笑う。
「うん。僕はここに来て1年くらいだけど、なんだかトクシック様はだんだん怖い人になってく気がする。僕がまだ子どもだから手加減しているだけで、あの人は本当はすごく怖いんじゃないかって気がするんだ」
「ふうん。君は、ヒーは、すごく頭が良いね」
「ヒー! 来なさい!」
「はいっ、今まいります! 行かなきゃ」
ヒーはトクシックに呼ばれてすぐに走って行った。
「なるほど、こんな感じなのか。さ、じゃあ、僕たちは何をするの?」
「水汲みと薪割りをするから、こっち来て」
「君はいくつ?」
「ぼくは3歳。ここに来て、3か月」
「しっかりしてるねえ」
ミーに言われて、フーは少し顔が緩んだ。そして、自分で久しぶりに顔が緩んだ、と感じた。それくらいここに来てからずっと緊張していたのだ。それをミーは少しほぐしてくれた。ミーはそういう和らぐ雰囲気のある少年のようだった。
こうして3人の少年たちは、トクシックに仕え(虐げられ)ながら、勉学をしたくさんの仕事を覚え、そしてトクシックの手伝いをするようになった。
ヒーの考えていた通り、トクシックは子どもたちの年齢があがるにつれて、勉強や仕事を厳しくし、3人はいつも傷や痣が絶えなかった。そしてそれを少しでも回避するために、彼らは互いに協力して暮らしていたのだった。