表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/79

27、地図



 いきなり魔術師と一緒にマーシェが戻ってきたのでカイは驚いた。すぐにマーシェの首に血のにじんだ大きな絆創膏を見て、マーシェが怪我をしたせいで戻ってきたのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。

「なんだって、ミーの居場所が分かったのか?」

「この子たちは絆で結ばれています。マーシェが何かを感じているのは確かなようです」

 魔術師は地図を広げてそれをマーシェに見せた。それはただの紙の地図ではなく、魔術師の作った地図で、マーシェはそこにミーの叫び声を聞き、さらに心を騒がせ悲痛な顔をした。

「今私たちがいるのは、ロズラックの中心部、この辺りです。ミーの気配を感じるのはどちらだかわかりますか?」

 マーシェは、自分がロズラックという大きな国にいると初めて知った。前にカイと住んでいたところがどこかも知らないし、今まで住んでいたところがどこなのかも全く知らない。

 つまり地図の見方を知らない。


 しかしマーシェは迷いなく地図を指さした。

「ここです」

「モヴェズヴィル? マーシェ、ここは外国だよ?」

 そこはロズラックの西に隣接する小さな国である。

「うん。でもここだと思います。緑色の湖のそばに小さな木の家が三つ。そのそばにトクシックの屋敷があります」

 マーシェは苦しそうに目を閉じながら言った。

「わかりました。マーシェ、場所の特定はできました。ただ、トクシックはまがい物の魔法で屋敷を守っています。一筋縄では見つけられません」

「それに、あの男は残忍だ。お前を取り戻した時のことを覚えているだろうし、今度は不意を突くことはできない。そうそううまく子どもたちを二人とも救出するのは難しいぞ」カイが言った。

「でも、早くしないとミーが死んじゃう」

 カイにもマーシェがひどく心を騒がせていることがわかった。きっと本当にミーは危険な状態なのだろう。急がなければならない。


「では、マーシェ、あなたはカイと一緒に来なさい。そして場所を特定したら、安全な場所でカイと一緒に待っているのですよ」

「なぜですか! 僕も行きます」

「気持ちはわかります。でもこの作戦は非常に難しいのです。もう一人魔術師を連れて行きますが、二人がかりでも勝ち目は薄いと、それはわかってください」

「そんな」

「そう、そんなところにあなたのような子どもがいては、さらに勝算が下がります。あなたはトクシックに飼われていたのです、トクシックがあなたの気配を感じたら、あなたをもう一度手に入れようとするでしょう。そんなあなたまで守ることはできないんです」

 足手まといと言われてマーシェは口を閉じた。

 トクシックが残忍で、そしてまがい物の悪い魔法を使うことはわかっている。そしてこの魔術師が難しい作戦と言うのなら、きっとそうなのだろう。


 しかしなんとしてもミーを、そしてヒーも助けたい。

 そのためには、マーシェは大人しく待っていなければならなかった。ミーの叫び声が頭から離れない。それなのに何もできないのだ。

 そうしていると、カイの家にもう一人の小柄な魔術師が現れた。フードを被っていて顔はわからなかったが、ポレミクよりは若く見えた。

 そんなことを思っていると、ポレミックと若い魔術師、そしてカイとマーシェは夕暮れの湖のほとりに立っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ