27、地図
いきなり魔術師と一緒にマーシェが戻ってきたのでカイは驚いた。すぐにマーシェの首に血のにじんだ大きな絆創膏を見て、マーシェが怪我をしたせいで戻ってきたのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
「なんだって、ミーの居場所が分かったのか?」
「この子たちは絆で結ばれています。マーシェが何かを感じているのは確かなようです」
魔術師は地図を広げてそれをマーシェに見せた。それはただの紙の地図ではなく、魔術師の作った地図で、マーシェはそこにミーの叫び声を聞き、さらに心を騒がせ悲痛な顔をした。
「今私たちがいるのは、ロズラックの中心部、この辺りです。ミーの気配を感じるのはどちらだかわかりますか?」
マーシェは、自分がロズラックという大きな国にいると初めて知った。前にカイと住んでいたところがどこかも知らないし、今まで住んでいたところがどこなのかも全く知らない。
つまり地図の見方を知らない。
しかしマーシェは迷いなく地図を指さした。
「ここです」
「モヴェズヴィル? マーシェ、ここは外国だよ?」
そこはロズラックの西に隣接する小さな国である。
「うん。でもここだと思います。緑色の湖のそばに小さな木の家が三つ。そのそばにトクシックの屋敷があります」
マーシェは苦しそうに目を閉じながら言った。
「わかりました。マーシェ、場所の特定はできました。ただ、トクシックはまがい物の魔法で屋敷を守っています。一筋縄では見つけられません」
「それに、あの男は残忍だ。お前を取り戻した時のことを覚えているだろうし、今度は不意を突くことはできない。そうそううまく子どもたちを二人とも救出するのは難しいぞ」カイが言った。
「でも、早くしないとミーが死んじゃう」
カイにもマーシェがひどく心を騒がせていることがわかった。きっと本当にミーは危険な状態なのだろう。急がなければならない。
「では、マーシェ、あなたはカイと一緒に来なさい。そして場所を特定したら、安全な場所でカイと一緒に待っているのですよ」
「なぜですか! 僕も行きます」
「気持ちはわかります。でもこの作戦は非常に難しいのです。もう一人魔術師を連れて行きますが、二人がかりでも勝ち目は薄いと、それはわかってください」
「そんな」
「そう、そんなところにあなたのような子どもがいては、さらに勝算が下がります。あなたはトクシックに飼われていたのです、トクシックがあなたの気配を感じたら、あなたをもう一度手に入れようとするでしょう。そんなあなたまで守ることはできないんです」
足手まといと言われてマーシェは口を閉じた。
トクシックが残忍で、そしてまがい物の悪い魔法を使うことはわかっている。そしてこの魔術師が難しい作戦と言うのなら、きっとそうなのだろう。
しかしなんとしてもミーを、そしてヒーも助けたい。
そのためには、マーシェは大人しく待っていなければならなかった。ミーの叫び声が頭から離れない。それなのに何もできないのだ。
そうしていると、カイの家にもう一人の小柄な魔術師が現れた。フードを被っていて顔はわからなかったが、ポレミクよりは若く見えた。
そんなことを思っていると、ポレミックと若い魔術師、そしてカイとマーシェは夕暮れの湖のほとりに立っていた。