13、立場の違う少年
トクシックはフーに、ひたすら目を攻撃する剣を叩き込んでいた。
仕掛け部屋には、人の頭の形の土の塊がたくさんぶら下がっていて、フーの周囲を揺れるようになっている。フーはその土の塊の目の部分を切る訓練をたくさんさせられた。目だけでなく頭を半分も切ってしまうと土の塊が爆発した。
しかも目の部分の切り方が浅いと、土の塊が大きくなってフーを押しつぶしてくる。細かな調節ができなければフーはやけどや怪我をしてしまう。それを回避するためにいかに上手くその目を切るか、フーは死に物狂いで練習した。
角度や高さ、どんな状況でも瞬時にして人の顔の形を認識して目を切る。
毎日ひたすら叩き込まれて、いつの間にか呼吸をするように自然に、人の目の場所が切れるようになっていた。
トクシックはその日を待っていたようだ。
ある日、この荒れ地の屋敷に一人の子どもを連れてきた。子どもと言っても、ミーよりも大きかった。11歳か12歳くらいで大人っぽく見えた。
トクシックはこの子どもをわざわざ紹介しなかった。それに衣服も部屋も与えなかった。動物のように首に鎖をつけ、研究室の隅につないでいた。
「なんで俺だけこんな扱いなんだよ?」
最初は良い子にしていたその少年は、他の子どもたちとの扱いの差にモンクを言った。その時、トクシックは少年を殴った。
少年はあまり賢くなかったのだろう。殴られる意味がわからず、騒いだり泣いたりして、さらにトクシックに殴られていた。どうしたらやめてもらえるのか考えなかったに違いない。声も出なくなるほどにいたぶられ、死体のように転がってやっとトクシックは殴るのをやめた。
少年はいくつかの実験をさせられていた。
フーは外にいたので見てはいないが、ヒーはその少年が毒を飲んで苦しむ姿や、何かに引きちぎられて手が取れてしまうのを目の前で見ていた。
死なない程度に回復させられ、痛みと苦しみで少年は泣きわめいた。
外にいたフーにもその叫び声は聞こえていた。それだけで中で何が行われているのか恐ろしい想像で恐怖心が膨らんだ。
ヒーなどはその地獄を目の当たりにさせられていた。とはいえ、普段は自分が飲むべき毒をその少年が飲むことになって、ほんの少しの安堵もあった。
夜になってもトクシックの虐待は止まらなかった。
子どもたちはそれぞれの寝台に入っても、少年の叫び声が聞こえてきて、恐ろしくてなかなか眠れなかった。
そうして朝がきて、少年の地獄はまた始まり、夜遅くまで叫び続け、この屋敷に来て三日も経つ頃には少年の目はすっかりうつろになり、立ったまま死んでいるようだった。
そしてその日、少年は庭にある一本の大きな木の前に立たされていた。
「こいつはお前のためにわざわざ取り寄せたんだ」
トクシックはフーにそう言いながら、長い剣を渡した。