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Amour  作者: 星河 翼
11/12

#11 融合

 加速して落ちていく体。

 礼司は、先ず瑞希の手を取った。そして、翼を広げ『浮け!』 と念じた。しかしまだ浮く事ができない。そのまま落ちていく。そして、気を失っている怜羅の彷徨っている腕を掴むと、グイッと体を自らの体に引き寄せる。怜羅が言ったことが正しければ、地上すれすれまでには何とかなるはず。それを待つしかない。

 かなり高いところから落ちた分、もし翼が扱えても二人分の体重を考えると反動はでかいだろう。それでも、もうやるしかない。

 ドンドンと、森の天辺が近づいてくる。それがもう限界だという時に、怜羅の体がスウッと光を放った。そして、自らの体も。

 それはまるで、融合でもするかのように、引き寄せられる。

「何ですか……これは……」

 礼司は、必死でその光の先を見ようとしたが眩し過ぎて見ることが出来ない。

そして、その光が消え気付いた時には、自らの体は宙に浮いていた。

その光に目がくらんだのか? それとも余りの急下降に眩暈でも起こしたのか。そんな気絶した瑞希様一人を抱えたまま……

「意識が混乱する……なんだこの感覚は?」 

 怜羅の記憶が礼司の頭の中に流れ込んでくる。小悪魔であった頃の怜羅の記憶。そして、この世界に来るまでと、来た時の礼司の知らない記憶。それが、頭に混乱するくらい詰め込まれてくる。

 今、自分は礼司なのか、怜羅なのかそれさえも判らなくなるくらいに、膨大な量の情報。

そして、何とか意識を保とうと翼に力を込めると何とか地面スレスレで体が浮いた。そう感じた瞬間、意識が飛んでしまった。

 あの、ガブリエル様に頂いた赤色の羽根が緑色に変わった事にも気が付かずに……


「おい、怜羅。起きろ! くたばるな!」

 礼司の耳に届いた声は、自らの体を揺さぶりながら必死で呼びかけていた瑞希様のものだった。

 それに対し、礼司は『私は、礼司です』と、言葉にしたくても出来ない状態でうっすらと目を開く。

「………………」

 何かを言いたくても声が出ない。何なのだこれは? 私はどうしたと言うのだろうか。それも有るが、瑞希様は私のことを『怜羅』と呼んだ。それ自体変である。すると、耳元で、怜羅の声が響く。それは、自らの口から飛び出した声であることに気が付き、礼司は驚愕した。

「瑞希……助かったのか? 私達。礼司という天使は何処だ?」

 瑞希はそれに関して、首を振った。

「礼司は、消えた。地面に叩きつけられる前、光に包まれた後、それと同時に消えてしまったみたいだ……」

 瑞希様は一体何をおっしゃっていらっしゃるのであろうか。私は此処にいます。ほら瑞希様、貴方の目の前です。今、私を見下ろしてらっしゃるではありませんか? 

 礼司は、そう言いたくとも、声にならない。私は、一体何であると言うのであろう? 五感はある。でも、体を動かす事も、声を出す事もできはしない。体が自らの思うように動かない……そして自らの意志とは異なるが、瑞希様が体を抱え起こした。すると、長い黒髪が礼司の腕だと思うべきところに掛かり、またもや驚く事になる。

私は……誰?

「消えた? 何故!」

 意識とは相反する言葉。それが耳に響き渡る。私は、此処にいます。消えたなんて事はありません。瑞希様なら判りますよね? 私は此処にいるんです!

「判らない……あの光の中で、何が起こったのか……それが俺には判らなかったんだ」

 瑞希様は、そういって涙ぐんだ。何故涙ぐむのですか? 私は此処にいるのに……

 そんな混乱している私の頭の中に、ガブリエル様の声が響いた。

『礼司……貴方は、今怜羅の中に居るのです。

いえ、居ると言うより、同化したのです。あの後神から連絡が入りました。怜羅は、小悪魔に転生した際に、天使としての善意、もう一人の人格。礼司と言う魂の欠片を瑞希自身の傍に配置するように仕向けたのです』

 礼司は、その声を聴きながら、『私が、怜羅の善意の欠片?』と問い返した。

 それは、声にはならないガブリエル様との交信。よって、瑞希様達に届いているわけではなかった。

『そうです。貴方は怜羅の善意の塊です。それをそのまま礼司と言う見習いにもなれない天使の器に転生させました。それは怜羅が、基本穏やかな性格の天使だったからです。成績も優秀でした。しかし、悪魔に恋をしてしまった。それは話しましたね?』

『はい』 

 なおも続く。

『そして、天使にも感情というものがある。

それが怜羅の中に有った嫉妬と言う感情。その為、リヴィアタンの元へと送られた魂だった訳です。でも、今怜羅自身、神が引き離し実行した先で、また瑞希という天使と鉢合わせをさせた』

 それに関しては納得がいかない。そんなことをして、何になるというのか?

『どうしてそのような事を……もう、そんな必要は無かったと思われます。神がなされることは、矛盾しすぎています』

 礼司は、ガブリエル様に対して反論してしまっていた。

『そうですね。でも、神は輪廻というメビウスの輪の中に投じて二人の魂を試したのです。

確かに勝手な事だと思われます。でも、信じてみたかったのではないでしょうか? 純粋に……それは礼司、貴方にとって不可解な事だと思いますが、記憶も無いそんな魂に、どう逆らい、触れ合うのかを……それも、善意の無い怜羅と、どこか良いところを探そうとする瑞希の二人を』

 ガブリエル様の言っている事は、判る。でも、だからと言ってこの私をパーツとして扱われた。それが辛い。

 私が瑞希様を慕う心は、輪廻の輪の中で只のパーツだったと言うわけですか? と悲観する気持ちのほうが大きいのだ。礼司は、心から神を怨みそうになる。  

 でも、それは、有ってはならないことだ。今までの自分の姿勢を崩すまでしてこんな気持ちにさせる。こんな感情を持ち合わせてしまった自分は、瑞希様の傍に居る価値は無い。そこまで考えて、礼司はガブリエル様に申し上げた。

『私のこの自我を殺して下さい。怜羅の中に存在している個別化されたそんな意志は何の役に立ちましょう?』

 礼司は、悲観的にそう言った。

『礼司……貴方と言う自我は瑞希を支えるためだけに有った筈。それを殺すと言うのですか? それでは怜羅の一部にはなれませんよ? それに私は、貴方を殺す事など出来ません』

 ガブリエル様の声のトーンが下がった。 

『では、融合してしまったと言うのであれば、完璧に融合してしまいたい。今の私は、生殺し状態です。怜羅の眼を通して見る瑞希様に何をして差し上げられるのでしょうか? それは、私の意志の下動く体ではない限り意味はないのです。ならいっそ、全てを怜羅の中に!』

 礼司は怜羅の中で頭を垂れたい気分だった。

『……それを望むのですか、礼司。貴方は、瑞希に忠実な召使とは別のもの。愛というものを計らずしも持ち合わせてしまったようですね。不憫な……判りました。そのような貴方を怜羅と完全に融合させるには、こう唱えなさい。怜羅に全てを譲る。と……』

 ガブリエル様は、こうなることを望んでいなかったという感情が声に見え隠れする。

 でも、礼司には耐えられない。あの時、自らを召使天使として拾ってくれた時から決めていたことを。ずっと仕え、そして、力になることを願っていたその事を出来ずにいるならば、いっそそんな意志を捨て去りたい。

 だからガブリエル様に聞いたとおりその言葉を念じる。

『怜羅さんに全てを捧げます譲ります……』

 すると、見る見る自らの自我が消えていく。最期に頭に浮かんだのは、あの時拾ってくれた瑞希様の差し出された指。それを小指に取る自らの姿。そして、ありがとうございますという言葉が途切れた。

 そう、全ては怜羅の中へ……真っ白な世界へと消えて行った……


「あ……駄目だ! 来るな! 礼司!」

 瑞希と礼司が消えた事に関しての会話の途中、怜羅は突然悲鳴に似た声を上げた。

 怜羅の中に異物が溶け込んでくる。それは否応無くも自らの心を書き換えていく。

 多くの礼司が見てきた瑞希への忠実な映像。私は、それを受け入れられる体勢が整っては居ない。貴方と言う善意を受け止められる器量が無い。

 だけど、それを止める事など出来ない。

 何故なのだ。大切なら、自らが見守れば良いじゃないか。私を介そうなんてそれこそ卑怯だ! 

 ガブリエルとの会話など知る由も無い怜羅は、只否定をする。礼司自身の気持ちも考えられない。それでも、脳裏に流れ込んでくる映像。  

 その中に、ガブリエルと礼司の会話があった。そしてそれは怜羅自身の存在そのものの理由を知る事となる。それは、大量な情報量の元、礼司を受け止めた際に得たもの。

そして最期の一つ。只一つだけ礼司が、怜羅に向けて残した映像があった。それは一粒の涙であった。

 そして一言『お幸せに……』そう言って、涙を零した礼司。その映像が何故有るのか? 誰に向けられているのか? それが理解出来た時怜羅は礼司を受け入れ終わった。そして怜羅の瞳からとめど無く涙が零れ落ちていた。

「貴方……大莫迦者だわ……」

 怜羅は、ボロボロと涙を零していた。何故こんな気持ちにさせられるのか? それは、礼司が自らの前世の魂の欠片であり、お互いがそんな前世を経ても瑞希への愛の形は違うにしろ愛してしまったという結論から来る物だ。

 だから、それが辛くて悲しいという気持ちなのだと理解する事だけはできた。

「怜羅……大丈夫なのか? お前……」

 瑞希は何も知らない。礼司がもうこの世には居ない事を。そして、その魂が自らと完全に同化してしまったという事を……

 怜羅は言うべきかどうか悩むことなく、こう言った。

「あの虹を渡りましょう。礼司は虹の事を言ってたわね。そして瑞希も望んでいた事でしょう? きっとあの先に何か有るのよ」

 怜羅は、切れ長のその目を瞬かせるとゆっくり目じりを下げた。その時、最期の涙がポロリの零れ落ちた。泣いていてはいけない。そう決意を固めるかのように。

「さあ、瑞希行くわよ! あの虹の所まで」

 怜羅は、呆気に取られているその瑞希の手を取った。そして、この森を抜け、今にも消えてしまいそうな虹の麓まで歩を進めるようにと促す。それに対して、瑞希は、

「一体どうしたというんだよ……いきなり。口調は変わるし……それに礼司がいないじゃないか。捜さないといけないだろう?」

 瑞希は、訳が判らないと、その場に残ろうと足を止めた。

「瑞希。礼司は私の中にいます。だから、捜しても無駄なの。そう、私は怜羅であり、礼司でもあるの。礼司は私の中で生き続けます。これから先ずっと貴方と共に」

「え?」

 疑問符を振ろうとしたが、怜羅は、その言葉を待たず、瑞希に軽く口付けた。

「……怜羅?」

 瑞希はうろたえて、顔を真っ赤にしていた。

「判ったら、行くわよ! のんびりしてるとあの虹消えてしまう。ほら、うっすらともう色が霞んできてる」

 怜羅は、戸惑っている瑞希の背中を押す。そして、駆け出した。

「知りたい事があるのなら、付いて来なさいよ! 元見習い天使さんは私に勝てるのかしら?」

 無邪気で、勝気な笑顔が瑞希を振り返る。

何時からこんな怜羅になってしまったのであろうか? 瑞希は、その理由が知りたい。礼司の事も。そう思い、

「負けるかよ! 待て〜!」

 自らもその森の中から駆け出したのである。


 虹は、壊れたあの天秤の針から伸びていた。それを、見下ろす様に瑞希と怜羅は腰をかがめた。

「何て所から伸びてんだ? どうやって下りるか考えないといけないじゃないか……」

 瑞希は、う〜ん。と考え込むようにして胡坐をかいた。しかし怜羅は、

「あの虹まで一か八か飛び降りて見ましょうよ? やってみないと分からないわ? 下がスポンジのように柔らかければトランポリンみたく跳ねて平気かもよ?」

 前向きに考えているのか、無鉄砲なのか?それが不思議で、瑞希は問い掛けた。

「怜羅お前、本当にどうしたんだ? 性格がまるっきり違うぞ。不気味だ……」

 それに対して、

「不気味だ何て失礼しちゃうわね。これが今の私なの。というより、本来の私というべきかしらね?」

 そう言ってクスクスと笑った。瑞希は頭を抱えるが、怜羅の今の性格が好きなのかもしれない。全く別人を相手にしてるようだけど、目の前に居る怜羅は確かに見た目はそのままだ。でも中身がまるっきり違う。演技でこうなっているとは思えない。というより、誇り高い怜羅がそう易々こんな事が出来るはずもない。

「よし! 俺がお前を抱えて飛び下りてやる。どうなっても文句を言うなよ? さて、神はどちらの味方をされるか見ものだな!」

 そう言うと、怜羅の膝と背中に腕を絡ませるとフッと持ち上げた。

「じゃ〜いくぜ。しっかり掴まってろよな怜羅!」

 瑞希は跳んだ。天秤の針が丁度真ん中になって止まっているその虹の袂へと。

 自然にしている分には風が無いこの空間。怜羅を抱えた瑞希の体は下からの風圧に服を靡かせながら、着地点を見極める。今のところは間違いなく虹の上に落ちている。

「おい、見てみろよ怜羅。この世界を支えているこの天秤。壊れている筈なのに、一寸の傾きもない。何でだろうな?」

 瑞希は、落ちながら抱えている怜羅の顔を見ながら問い掛けた。

「壊れているわけではないのかも知れないわね。ただ、平穏に時を止めているだけなのかも知れない。どちらにも傾かず、そう、悪や善なんて感覚を持ち合わせない世界を保つために……」

 怜羅の言葉を聞いたとき、瑞希は何となく判ったような気がした。怜羅はこの天秤の仕組みなど知らないはずなのだ。だから、あの時言った、『礼司は私の中にいます』という台詞は、本当に怜羅の中に礼司がいるという事なのだと。

 そうなった理由はまるっきり判らない。あの光の中で何が起こり、どうなって礼司が怜羅と融合したかなどという事は怜羅本人から聞くしかない。でも、それを怜羅が話してくれるであろうか? そう思いながらも、下降していく体を調整する。『ポ〜ン』と自らの体がその虹に着くまで瑞希はずっとそのことを考え続けたのである。


「無事、虹まで到着したわね。さて、歩きましょうか……」

 少し弾力のある虹。その上を歩こうと怜羅は脚を踏み出す。オレンジ色の空を背景に黒く長い髪は凄く印象的だった。まるでセピア色の写真でも見ているかのごとく。

「ああ、進もう。そして、歩きながら話そうか? 怜羅、キミの中に礼司が居ると言ったな。それはどういう事なんだ?」

 二人は遥か先まで続く虹の上を歩きながら、話を始めた。

「それはね。話せば長く辛くなるわよ。それでも聴く覚悟はある?」

 怜羅は、瑞希の手を取って絡め取ってそしてそっと寄り添った。

「よっぽどのことなんだな……でも聴かなければならないことなんだとそう感じる。だから話してくれないか?」

 瑞希はその行為を嫌がることなく受け止めると、そっと怜羅の肩に腕を回し抱いた。

「ええ、この虹が消えないことを祈りながら、

神の名の下に私が知っている全てを瑞希。貴方に話します」

 そして、瑞希はこの虹の半分。そう、そこに至るまで自らの事を礼司が知りえたガブリエル様の口から出た全てを一言一句余すことなく怜羅の口から聴いたのである。


「俺は前世にて、悪魔で、怜羅が天使だった。その二人が恋をして神の裁きにより間逆の立場になった。で、怜羅の天使だったときの善意の魂を礼司に委ねて、俺達三人はそれぞれ見習い天使と小悪魔、そして召使天使になった……という事か……」

 瑞希は、話を纏めた。愛の天使ガブリエル様の下働いていたのは、神は俺がどうするかを見届けたかった現われだったとは。

 確かに階層構造(ヒエラルキー)的には色んな役割の天使が様々居るし、それを見習うための見習い天使も数多く居る。その中で、愛という物を学んでいかなければならない立場であった瑞希は、神がその動向を見るには最適なポジションだったであろう。

 実際、瑞希は自らの仕事をきちんとこなしてきたし、人間界で愛というものは何なのか

を見てきた。形はいろいろ有るが、相手を想う気持ちというものは、温かな産物で実際癒しにもなった。

 そして、礼司はその助けをしてくれた大切な召使天使。いや、友達だったと思っている。

 天界で初めに出会ったとき、礼司は薄汚れた天使服を纏い、天使の輪っかさえも持たない細いその体を恥ずかしげも無く自らの前に晒した。瑞希は、その礼司を見て不憫だなとは思わずに、先ずはどう接すれば良いだろう? そう考えて、

「宜しくな!」

 と手を差し伸べた。その時の礼司の顔は、不思議そうな顔をしたが、にっこりと、

「ありがとうございます」

 と、その手を取った。

 礼司はその後、ずっと瑞希自身を支えてくれた。それは安心できる場所を得た。そういう気分にさせてくれる物だった。でも、礼司は自らの心の内を話してくれることは無かった。それをちょっと残念に思っていた。だから、その心の内を知らないまま怜羅と融合してしまった事は今とてつもなく悲しい事に思えてならない。

「礼司は、俺なんかに仕えてくれて本当に幸せだったのか……な?」

 瑞希は、複雑な心境になる。誰かに仕える事の大変さなんて知らない。それも、瑞希自身適当な所があった。いい加減とは違うけれど、そんな天使に仕えて満足だったのであろうか?  あいつの言葉をもっと聴いておけば良かったと思わずにはいられない。

「瑞希。礼司は幸せだったのですよ。だって、私に焼きもちを焼くほどに喧嘩を売ったのですから」

 怜羅は、そう言って、握っているその手を大丈夫ですよと言いたげに握り返した。

「そうか。喧嘩したのかお前たち……だからあんなに態度があの時変だったんだな。怒ってる礼司の顔拝んでおきたかったな」

 瑞希は照れて笑った。

「怜羅は、すぐ怒るところあったから、想像しやすいけど、あいつは能面みたいだったから。でも、笑うと綺麗な顔立ちだったな。うん」

「それって私は綺麗ではないと言いたいのですか? 失礼ね!」

 瑞希が言った言葉を笑って返した。そんな怜羅は、小悪魔としての嫉妬リヴィアタンの下、贅沢と誇りを持って人間に悪意を振りまいていた。幸せになるというそんな事はあってはならないと。

 そんな怜羅が、人間になって少し柔らかくなり、礼司と融合した事でより瑞希の望む人間になった。そんな怜羅を、可愛いとさえ思える。

 でもこの先この虹を渡り終えた先、二人に待ち受けているのは何であろうか?

 神がどう瑞希達二人を導くのであろうか?

 そんな不安を抱えつつも 長々と話していた時間は終わった。あとは、この虹を下れば良いだけ。そう、滑り台を利用した原理で、一気に……

「怜羅、この先に何があろうとも、もう後戻りは出来ないぞ。それでも、俺と共に来るか

?」

 瑞希はゴクンと唾を飲んだ。それは覚悟を決めた行動だった。

「瑞希。貴方と共になら、何処へなりと。私は、何の躊躇いもありませんから、安心して下さいね?」

 そう言って、微笑んだ。それは、二人が辿る道は共に有るとそう言いたげだった。

「ああ、怜羅。共にな」

 そうして、二人は虹の上に座り込むと、前に怜羅、後ろに瑞希を。滑り台状態で一気に虹を蹴った。すると、その虹を滑り落ちていく。摩擦熱さえないそんな虹の上を。


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