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第24話 アルバム制作と再会

ライブや須川のお家騒動、香坂の問題も決着がつき、漸くKYUTEをじっくり腰を据えて育て上げる段取りが整う。

会議室に集まった関係者の面々の表情は、香坂を除いて晴れ晴れとしている。

彼女がいる手前、戸松はどのような表情を作ったところでろくなことにはならないと判断し、口を真一文字に結ぶことに努める。


「アルバムを作ろうと思う」

今後の方針策定のための会議が始まり、田中が開口一番、提案を投げかける。


「まだ3rdシングルを出してそんなに経っていませんが、そんなタイミングでアルバム作っちゃって大丈夫ですか?曲メインじゃなくて、特典商法で攻める感じでしょうか」

音楽プロデューサーの役を拝しているものの、戸松は販売戦略に関しては門外漢である。

田中が意図するところはどこにあるのか、戸松としては気になるところである。

新曲の収録は間違いないだろうが、その曲数がどの程度かで負担も大きく変わってくる。


「いや、KYUTEは音楽性も重視する方向性だ。デビューしてまだ1年と経っていないユニットが阿漕なことをしてイメージを崩すのは避けたい。俺が考えているのは、インディーズ時代の曲をリアレンジしてアルバムに収録するやり方だ。インディーズ時代の古参ファンも大事にしているとアピールしつつ、メジャー寄りのアレンジをすることで新規のファンも取っ付きやすくする感じだな。どう思う?」

田中が新垣たちを見やり、まずは彼女らに意見を求める。

この業界においては、一口にプロデューサーといっても様々なタイプがいる。

メインパフォーマーを駒としか認識せず、意見を全く聞こうとしない者も存在する一方、彼女らを第一に尊重する彼の姿勢は好ましく映る。

「私はいいと思います。あの時歌っていた曲にもやっぱり思い入れはありますし」

新垣が賛同すると、他3人も彼女の言葉に頷く素振りを見せる。

「とまっちゃんはどうだ?あ、無茶な制作スケジュールは組まないようするんで、その点の心配はいらないぞ」

「いいんじゃないでしょうか。ちなみに、権利関係とかはどうなっているんですか?」

戸松の疑問に、田中はしたり顔を見せる。

「モーマンタイだ。そのあたりはデビュー時にしっかり処理してある」

「了解です。制作期間はとにかく余裕を持たせてくれると助かります……。インディーズ時代の曲はノンダイアトニックのメロやコードが多いわ、クセは強いわで……。再編曲はとんでもなく手間がかかるのが今からありありと想像できるんですよ」

田中がハードな納期は設定しないといったものの、念押しで制作期間を十分確保してほしいとのニュアンスを仄めかす。

「オッケーオッケー、相分かった。そうそう、あと一つお願いがあってな」

田中の拝むようなポーズに嫌な予感がしつつ、頷いて先を促す。


「件の曲を作った娘を是非制作に立ち会わせてやってほしいんだ。彼女は現役音大生で、プロの現場を見せることもコミコミで楽曲利用を快諾してくれた節があってな。守秘義務契約や印税関係はこっちの方で片づけておくんで、要所要所で現場を見せてやってほしい」

「その程度でしたら全然問題ありません。私もあんな曲を作ったのがどんな人かは気になっていたので、むしろウェルカムなぐらいです」

蓋を開けてみれば戸松にとっても魅力的な依頼であったため、直ぐに快諾の返事をする。


「そう言ってくれて助かる。見学の段取りは任せちゃっていいか?」

「分かりました」

「それじゃ、連絡先を後で送るんで、よろしく頼むな」

その後、諸々の伝達事項や、プロジェクト全体の工程すり合わせを行い、会議が終了する。


帰宅後、PCを立ち上げメールボックスを開くと、田中から現場見学に向けての調整依頼メールが届いている。


「……は?」

メールを読み進めていく中で、見覚えのある名前を発見し驚愕する。

四方田香苗。

戸松がかつて通っていたピアノ教室の同窓生の名前が、そこには記されていた。


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