第23.2話 決着2 ~ 露見 -Shizuku Side-
惟子との作詞を行った日の夜、3人でささやかな宴会を繰り広げているさなか、トイレへ行くために中座する。
部屋を出た直後、化粧直し用品を持っていきそびれたことに気づき、踵を返すと、閉まり切っていないドアの隙間から戸松と北山の会話が漏れ聞こえてくる。
「で、しずくちゃんとの道ならぬ恋についてはどうするつもりなの?」
(え……?)
北山の言葉は完全に想像の斜め上を行っており、あまりの動揺に心臓が早鐘を打つ。
彼女がどこまで自分たちのことを見抜いているのか、不安と恐怖が渦となって襲い掛かるも、半面、戸松がどのように返答するのかも気になって仕方がない。
やむを得ず扉の傍に耳を寄せ、二人の会話を盗み聞くことにする。
「どうするも何も、上り調子のアイドルとそのプロデューサーですよ。選択肢は一つしかありませんよ」
戸松が力なく笑う。
彼の回答は至極尤もなものであるものの、言いようのないモヤモヤと苛立ちが沸々と湧き上がる。
「プロデューサーって立場である以上、君が決着をつけなきゃ。こんなことを言うのは酷だけど」
北山の言葉も極めて正論ではあるものの、それが却って自分の神経を逆撫でし、酔いもすっかり醒めてしまう。
そして、煩悶しているうちに、さらなる衝撃の事実が北山の口から発せられる。
「ま、もし智久君の中にもまだ彼女への恋心が眠っていて、夜を寂しく思うなら、今度は私が慰めてあげるから。あなたの初めてを奪ってしまった人間として、その程度ならいくらでも付き合ってあげる」
冗談めかした口調ではあるものの、北山の声色は優しく、戸松のことを憎からず思っていることは明らかに見て取れる。
考えたことがないわけではない。
戸松とて成人男性であり、そういった行為とずっと無縁であったわけではないだろう、と。
さりとて、その相手が見知った人であり、且つその事実を盗み聞きとはいえ直接聞いてしまったことで、途端にそれは生々しい現実として降りかかってくる。
(私、とんだピエロじゃない……)
商業で活動するアイドルとなった以上、恋愛がご法度である点は割り切っていた。
それでも、戸松と再会し共に過ごす機会が増えたことで浮ついた気持ちになってしまい、グレーゾーンと言われても仕方のない振る舞いをしていた自覚はある。
しかし、北山から見ればその姿は嘸かし滑稽に映っていたであろう。
もはや、戸松とどのような顔をして向かい合えばいいのか皆目見当もつかない。
二人の会話が一段落したところで扉を開け、たった今戻ってきたように立ち振る舞ったが、そのあとの会話はまるで頭に入ってこなかった。




