表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/79

第22.7話 父娘7

「珍しいな。とまっちゃんがあんな意見を言うなんて」

香坂が去った会議室で、田中が疑問をストレートに戸松へ投げかける。


「あのまま帰したら噛みつかんばかりの勢いだったじゃないですか。まぁ、それはともかくとして、須川さんがかなり感情的である以上、お目付け役をつけた方がいいのは実際そのとおりで。事情も知っている親しい同年代の子が傍にいれば少しは冷静になれるかな、と」

「あっそう。ま、そういうことなら」

田中が期待していたような面白い回答が返ってこなかったためか、彼の声のトーンも通常時のものに戻る。


「なんにせよ、気合入れて話し合いには臨まないとな」

「ですね。まぁ気合を入れるとは言っても、所詮やっていることは単なる内ゲバですけどね」

「おうおう、痛烈だねぇ、とまっちゃん」

二人して苦笑いし、ため息をつく。


田中と別れて戸松が自宅へ戻ると、紗枝がコントロールルームのソファでくつろいでいる。

「ちょっとちょっと、あれからしずくちゃんとどうなのよ」

戸松を視認するや否や、不満げな声色で紗枝が現況を訪ねる。


「あの日の夜に伝えた内容以上の進展はないよ。ってか、それ以外の内容でデカい爆弾を抱えてて、今それどころじゃないんだよ」

「え?何が起きたの」

野次馬根性溢れる紗枝の目が俄然キラキラと輝く。


「大っぴらにできる話でもないから、ここだけにしてね」

守秘義務が戸松の頭をよぎるものの、さんざん情報漏洩をしてきた手前、もはや感覚がマヒしてしまっている。

須川に係るこれまでの経緯と現況を伝えると、うへぇ、と凡そ成人女性にあるまじき声色で呻き声を発する。


「あのユニット、グループ名のわりに全然実態は可愛くないわね。……いや、寧ろ手のかかる子ほど可愛いって言えるのかな?」

「そこまで見越しての命名だったら、サイコーに皮肉に溢れていて、そのセンスの良さに感涙しちゃうね」

戸松が首をすくめると、紗枝はからからと笑う。


「それにしても、しずくちゃんとの決着は着いていないのに、あの子をわざわざ交渉の場へ連れて行くように具申するなんて、彼女も驚いていたんじゃない?」

紗枝がニヤニヤしながら戸松を小衝く。


「どうだろう。まぁ、少なくとも田中さんの方は驚いていたけどね」

「そりゃそうよね。まともに考えたら、メンバーの進退が懸かった大一番の場面に他メンバーを連れ立っていくなんて普通は考えられないわよね。ってか、田中さんもよくOKしたわよね」

「まぁ、結果的に役に立つ情報は得られなかったとはいえ、しずくから話を聞く必要はあったし、現況を知られちゃう以上、あとは話し合いの場にいるかいないかの些細な違いでしかないからね」

戸松の説明に、紗枝が頷く。


「で、トモはしずくちゃんを連れて行ってどうするつもりなの?」

「そこはなんとも。こちらからのアクションがしずくにストップかけられている以上、接触を増やして事態の進展を図る機会を見つけたいってのが正直なところだよ」

「ふーん、なんともまぁ涙ぐましい努力よね。物語みたいに劇的な展開なんていうのは発生しなさそうね」

紗枝がつまらなさそうに大きく息を吐く。


「そもそも、アイドルとそのプロデューサーって関係性自体がフィクションみたいな設定でしょ。尤も、その関係性で劇的な展開が起きたらまずいから、こんな泥臭いことをしている羽目になっているんだけど」

戸松の言葉に、違いない、と紗枝がクツクツと笑う。


「とりあえず、何か面白いことが起こったら教えてよね。まぁ何にせよ、今回のメイントピックは須川さんについてのことだし、しずくちゃんばっかりにかまけてちゃダメよ」

言っていることは正論であるものの、ずいぶんと間の抜けた声に、戸松は脱力せざるを得なかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ