第22.4.11話 父娘4.11 -the Past of Ayana-
「協力ってどういうことなん?」
突飛な申し出に、思わず口調が崩れる。
「そのまんまの意味よ。彩奈の現況にいろいろと思うところがあってね。……って、変に勘繰らなくても大丈夫よ。とにかく、一歩引いた立ち位置でありながら味方でもあるって、中々に魅力的なポジションだと思うけど?」
香坂の真意を測りかね彼女の顔をジッと見つめるも、その表情からは何も読み取ることはできない。
「……そうね。私だけで交渉しても冷静に話し合いなんてできそうにないし、協力してくれるとすごく助かるわ」
そう告げると、香坂が穏やかに笑みを浮かべる。
彼女の思考ロジックは自分の想像が及ばないところではあるが、少なくともその表情で自分に不利益をもたらすものではないことは見て取れる。
「そうと決まればなるべく早めに行動しましょうか。お父様は今家にいらっしゃるの?」
「土曜は基本的に家にいると思うわ。……って、まさか今から?」
香坂は不敵な笑みを浮かべる。
「こういうのは引っ張ってもしょうがないでしょ。で、彩奈はどこまで戦う覚悟はあるの?養ってもらっている身だし、大学を辞めさせられないレベルが限度かなとは思うけど。尤も、もっとバチバチに火花を散らすことも出来ると思うけど」
「私が求めるのはしずくの言ったとおりの内容よ。KYUTEでの活動継続と大学の卒業。えぇ、自分でもわかっているわ。私が結局親の脛を齧ることはやめられない甘ちゃんだってことは」
自嘲気味に笑うと、香坂は面白くもない冗談を聞かされたような表情を見せる。
「まぁ、インディーズなんてそんなものでしょ。むしろ、今の段階でアイドル活動一本に注力するとか言われたらドン引きしちゃうわよ」
香坂の軽口に、自身の気持ちもやや軽くなる。
「彩奈の気持ちは分かったわ。とりあえず、彩奈はお父さんに自分の気持ちを正直に伝える感じで攻めていくのがいいかしら。ただし、努めて冷静に。当然言い返されると思うけど私がフォローに回るわ。私、屁理屈勝負だけは負けるつもりはないから安心してて」
淀みなく方向性を示す香坂は頼もしくあるものの、彼女が私のために尽くしてくれる理由が全く思い当たらず、若干不気味にも感ぜられる。
「というわけで、今から私たちは彩奈の家にカチコミに行くから。他のみんなには適当に説明しておいて、香苗」
香坂のおざなりな依頼に、四方田が困り果てた顔で応じる。
「よかったの?四方田さん困ってたみたいだけど」
家への道すがら、四方田を引き合いにしつつ香坂の拙速ぶりに言及すると、彼女は遠くを見つめるような目つきで乾いた笑いを発する。
「さっきも言ったけど、こういうのは時間が経つほど拗れてしまうものなのよ。かの孫子も巧遅拙速を尊んでいるし、勢いって大事だわ」
含みのある言いまわしに、香坂へ返す言葉が思いつかない。
香坂も私の戸惑いを知ってか知らでか、内容へさらに言及することはなかった。




