第22.4.9話 父娘4.9 -the Past of Ayana-
人気が上昇するにつれて、活動に割く時間も増加の一路をたどる。
KYUTEでの活動が親に露顕するのは極めて当然の帰結であった。
「おい、彩奈。どうも最近、お前はアイドルの真似事に現を抜かしているようだな」
ダンスの練習を終え帰宅して早々、父が低い声で私に叱責の声をあげる。
「そうだけど、真似事って何?私は真剣にやってるんだけど」
厳格な父に歯向かう経験は僅少であったが、この時ばかりはあまりの物言いに苛立ちを覚え、思わず反駁してしまう。
「なんだその態度は。お前に声楽とかを習わせていたのは、こんな下らない自己顕示欲を満たさせるためじゃないんだぞ?お前の今の本分は学業であって、他人に媚びを売ることじゃない」
父の言葉の刃物が私の心に無数の切り傷をつけ、内臓が抉られるような鈍痛が体を駆け巡る。
「ふざけないでよ。勉強は今でも疎かにしていないし、活動は真剣にやってるの。お父さんだって私の気持ちをろくに知らないくせに、何でも決めつけた物言いをしないでよ」
ダイニングテーブルに手を力任せに叩きつけると、父は呆気に取られた様相で私を見つめている。
一方、母もその場にはいるものの、相も変わらず私には無関心なようで、私たちの口論は意にも介さず、ソファで雑誌を読みふけっている。
そんな両親に嫌気がさし、勢いのまま家を飛び出す。
ヒリヒリする手を握りしめながら向かうは叔母である山本加奈の家。
厳格な父、私に無関心な母に嫌気がさしたときは、いつも彼女の家に駆けこんでいた。
あの父の妹とは思えない程に奔放な彼女は、自分が肩の力を抜いて接することが出来る唯一の親戚であった。
彼女の家に駆けこみ経緯を話すと、とうとう彩奈も爆発しちゃったか、と笑いながら私を受け入れてくれる。
「いいわ、とりあえず家には連絡しておくから。気持ちが落ち着くまでウチにいなさいな。なんなら、しばらくこっちに住んでもいいわよ」
彼女の度量の大きさに感謝しつつ、明日以降、自分はどうするべきかをひたすら考えていた。




