第22.4.7話 父娘4.7 -the Past of Ayana-
「香苗、こっちよ」
控えめな声量ながら、よく通る声で香坂が入ってきた彼女へと呼びかける。
香坂の声に、安堵したような表情を浮かべながらトテトテと駆け寄ってくる。
「紹介するわ、こちらが四方田香苗。私の家の隣に住んでいる千住音楽大生よ」
四方田が着席するタイミングを見計らい、香坂がアイスブレイクを開始する。
香坂の言葉に合わせ四方田は不安がちに会釈し、3人でミラーリングをするかの如くお辞儀する。
個性的な服を着ているからには、四方田の性格は尖ったものかという先入観があったが、むしろ想像とは真逆の立ち居振る舞いに若干の困惑を抱く。
「で、香苗、こちらにいる3人が以前話したアイドル活動している子たちね。奥から新垣千里さん、種田優美さん、須川彩奈さん。……とりあえず、詳細な自己紹介はそれぞれ自分からしてもらっていい?はい、まずは千里どうぞ」
香坂が新垣へ恭しく手を差し出し、発言を促す。
「分かったわ。初めまして四方田さん。新垣千里っていいます。私たちはしずくも含めた4人とも東樫塚女子大生です。で、ここの3人でアイドル活動をボチボチやっています。よろしくお願いしますね」
以降、それぞれ簡潔に自己紹介をし、いよいよ四方田の順番が訪れる。
「……どうも、四方田香苗です。すみません、初めてお会いする方に話をするのは緊張してしまって……」
か細く掻き消えてしまいそうな声で呟く彼女の背中は丸まっており、個性的な風体とのアンバランスさが際立つ。
「ごめんね。見てのとおり、香苗ってかなりの人見知りなの。とりあえず、さっきチラッと話したとおり、香苗は千住音大に通っていてね。専攻が現代音楽なんだけど、これまた私みたいな素人には難しすぎるジャンルなのよ。香苗、分かりやすく解説をしてもらっていい?」
香坂のあからさまなアシストを受け、四方田がポツポツと説明しはじめるが、自分が熱を入れて学習している分野であるためか、次第に講釈は熱を帯びていく。
滔々と語られること5分、理解できたのは、とにかく前衛的なことにチャレンジする分野であること、そして、凡そアイドルソングのような大衆向けの楽曲とは対極に位置することだけであった。
四方田の方は、好きなことを語ることができ満足したのか、先ほどまでの顫動が嘘であったかのように晴れ晴れとした顔をしている。
「……さて、いい感じに場もあったまってきたところで、本題に入りましょうか」
香坂も頃合いかと判断したのか、曲作りへと話の軸足を移し、空気が一瞬にして引き締まる。
「大きく分けて2つ確認が必要ね。千里たちはどんな曲を作ってほしくて、香苗はそれに対応できるのか。そして出来上がったものに対して千里たちはどれほどの報酬を払うのか」
香坂によってすり合わせるべき課題が明確化され、長い長い打ち合わせがここから始まった。
言い訳して申し訳ございません。
決算期で仕事が忙しすぎて、なかなか筆を進めることができていません……。
来週には一段落すると思いますので、執筆スピードを上げられるかと思います。
過去エピソードで書こうとしているテーマの中核に早くたどり着くよう、とにかく頑張りますので引き続きよろしくお願いいたします!




