第22.4.6話 父娘4.6 -the Past of Ayana-
香坂による迅速な調整に加え、それぞれのスケジュールがかみ合ったことが奏功し、香坂との対面から3時間後には、件の作曲家の卵と相見えることとなった。
落ち合う喫茶店にて、彼女が来るまでの間、暫し雑談に興じる。
「ねぇねぇ、しずくってちーちゃんとどこで知り合ったの?」
臆することなくズケズケと質問をする種田に苦笑いしつつも、興味がある内容ではあるため、諌めることはしない。
「普通に語学の授業で一緒になっただけよ。ペアワークの相手が千里になって、そこから関係が続いている感じね」
香坂が新垣と目を合わせ、その瞳に和らげな灯が浮かぶ。
「そうなのね。だったら、今回こんな話を急に持ち掛けられてびっくりしたんじゃない?千里ちゃんって、こんな風に見えて人のこと振り回すタイプだし」
私の問いに、そうね、と香坂が声なき笑いをあげる。
「確かに、千里といるとホント退屈する暇もないっていうのはその通りよね。そういう彩奈も実際のところ同じなんじゃない?」
微笑を浮かべる香坂はこちらの全てを見透かしているようにも伺え、やはり食えない人だ……と心の中で感想を述べる。
「そうね。特に最近はあの子に振り回されてばっかりよね。私はこの活動も流されるまま始めただけだし。でも、そのおかげで楽しい日々を送れているわ」
香坂へ微笑み返すと、そうね、と呟くものの、会話が続く気配はない。
「そうそう、これから会う作曲家の卵の子のこと詳しく教えてよ。私もさっき教えてもらったばかりだし。ってか、2人に話す前に私に相談する機会あったじゃん」
若干わざとらしくあるが、拗ねたような口調で新垣が香坂を問いただす。
「だって、千里に前もって丁寧に話をして、二人に話をするときに変なフォローされたら断りにくくなっちゃうじゃん。ああいう風に話を展開すれば、ちゃんと作曲家の卵ちゃん……香苗っていうんだけど、フラットに話を聞いてもらえるでしょ。そんなわけだし、私からの事前情報の提供はこれ以上はなし。あとは直接本人にいろいろと聞いてみて」
「うわぁ、確かにそうかもだけど、なんか見透かされているようで悔しいなぁ」
新垣が歯噛みする素振りを見せ、香坂が彼女の肩を小突く。
「とにかく、香苗はかなり個性的で面白い子だけど、あの子なりの音楽への向き合い方や哲学はしっかりと聞いてくれると嬉しいかな」
そう告げた途端、喫茶店のドアベルが鳴り響く。
4人が視線を向けた先では、クラシックロリータに身を包んだ小柄な女性が、オドオドした様相で店内を見回していた。




